恐竜異説
The Dinosaur Heresies

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訳本(左)と原著(右)が対応しています。

恐竜異説

Robert T. Bakker 著
瀬戸口 烈司 (翻訳)

平凡社, 1989/1
ISBN: 4582524044

なぜか、表紙のイラストは、原著と左右が逆です。
The Dinosaur Heresies
アマゾン・ジャパン(日本語)

Robert T. Bakker 著
Kensington Pub Corp, 1996/8
ISBN: 0821756087



 1974年、ハーバード大のベルンハルト・クンメル教授(バーニー)は、バッカーのえり首をつかまえてこう言った。

 「おい、いつまでも反逆児のままでいるわけにはいかんよ。君は本を書くべきなんだ」と。

 だからバーニー、これがその本だ。


                                              ・・・ 冒頭より。

■画期的な本

 1945年ニュージャージー生まれのロバート・バッカーは、エール大学卒業後、ハーバード大で博士号を取得し、この本で、恐竜はノロマな冷血動物ではなくて、活発な温血動物であると著しました。
 恐竜が冷血で下等な爬虫類とされていた当時としては、画期的な本だったのです。

 単なる異端なら忘れ去られていったのでしょうが、やがて温血説を支持する証拠が出てくるに従い、古くて間違った慣習に挑戦し、一石を投じた本として評価されるようになっていったのです。
 
■恐竜冷血説

 バッカー曰く、「19世紀の科学者は、脊椎動物を温血‐冷血に二分し、優劣をつけた」のです。恐竜は、体温調節のできない下等脊椎動物である爬虫類の中に入れられてました。
 だから、バーで酒を飲んでも、"かしこくて活動的な"哺乳類の研究者たちが気勢をあげる一方で、少数派の、大きいだけがとりえの恐竜研究者は、片隅でグチをこぼすだけと、本の中でこぼしています。

■温血説とその検証

 彼は、「はいまわる」を意味するラテン語に由来し、軽蔑の意味を込めた爬虫類(reptile)の中に恐竜が押しこまれていたことと、恐竜なんかより哺乳類のほうが"優れた動物"という当時の考えに少なからぬ疑問を持っていました。

 そして、恐竜の足の研究から、1970年には、恐竜は非常に高度な運動能力を持つ動物である確信していたのです。さらに、1億年以上も繁栄したことから、高い物質代謝率をもっていたと考えるようになっていました。
 問題はその検証です。彼は、捕食者と被捕食者の関係からそれらを検証しました。肉食動物の物質代謝率が高ければ、その数は少ないという仮設をたてて、化石や現生の動物を調べていったのです。
 ハヴァース管をもっていることや体の姿勢などの例もあげています。

■恐竜温血説

 バッカーが最初に恐竜温血説を唱えたように書かれた本がありますが、実は、19世紀の後半になって、恐竜の物質代謝や恐竜が鳥類の祖先にあたるという議論があったのです。バッカーが恐竜温血説を最初に提唱したのではなく、有名にしただけなのです。

 19世紀の恐竜温血説の議論も、ハイルマンが1925年に著した「鳥類の起源」あたりから状況が一変します。鳥と恐竜は共通の祖先から進化したというのです。恐竜は鳥類の祖先からイトコに格下げになったのです。

 やがて、三畳紀の地層から、当時、偽鰐類(きがくるい)とされたオルニトスクス類の化石が見つかったことから、ハイルマンの説が支持されて、教科書も、鳥類の祖先は偽鰐類である、と書きかえられてしまうのです。そして、恐竜が鳥に似た生理機能をもつという考えも失われてしまいました。
 
 しかし、ジョン・オストロムらの研究によって、現在の"正しい"方向に進んでいきます。このあたりも、詳しく書かれています。 
 なお、現在は、オルニトスクス類はワニ類の祖先に位置し、恐竜とは別系統とされています。


 なお、トカゲでも高い体温になったり、体温を下げて冬眠する哺乳類もいるので、「温血−冷血」は誤解を生じやすい言葉です。より正確には、体温調節ができる/できないという意味で、「内温性−外温性」を使います。
 もっとも、温血−冷血という"血液の温度"が問題なのではなく、十分に活動的であったということが重要なのです。当然、それらを維持するためには、高い心肺能力や運動能力に体の構造、それらを維持する代謝能力などが必要になってきます。 恐竜温血説は、血液の温度だけで片付けられる問題ではないのです。


■自作のイラスト

 この本では、恐竜温血説だけでなく、恐竜のからだの構造やその生態などについて、多数の自作のイラストとともに、わかりやすく説明されています。

 映画ジュラシック・パークの顧問役を務めるなど、わかりやすい言葉で、いきいきとしたきの恐竜の姿を伝えているバッカーが書いただけに、専門用語もなく面白く読めます。また、その当時までの研究歴などがきちんと紹介されており、恐竜研究史としても役に立ちそうです。
 翻訳について言えば、ツメバケイをホーアチンなどと訳している部分はありますが、読みやすい日本語です。



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