メキシコにある白亜紀後期の地層で発見された新種の基盤的ハドロサウルス類、Huehuecanauhtlus tiquichensis が記載されています。

 系統的には、Hadrosauridae にもっとも近縁な外群とされています。

 北米大陸の Santonian 期での発見は、ハドロサウルス類がアジアから北米大陸に放散したのは少なくとも、白亜紀前期の Albian  より遅くは無いとして言います。



  1. References:
  2.  
  3. Ramírez-Velasco AA, Benammi M, Prieto-Márquez A, Ortega JA, Hernández-Rivera R (2012) 
  4. Huehuecanauhtlus tiquichensis, a new hadrosauroid dinosaur (Ornithischia: Ornithopoda) from the Santonian (Late Cretaceous) of Michoacán, Mexico. 
  5. Canadian Journal of Earth Sciences 49(2): 379-395.



 白亜紀後期、当時の北極あたりでも恐竜化石が発見されることから、一部の恐竜は、季節的に極地方に渡りをしたのではないかと考えられています。  
 
 今回、極地方と温暖な地方に棲んでいたでエドモントサウルスの骨の構造比較から、季節的移動ではなく、年間を通して生息していたのではないかとする論文が報告されています。  

 論文は、白亜紀後期(約7000万年前)のエドモントサウルスの骨組織を分析したもの。極地方にいたエドモントサウルスは、長い冬の夜を耐えたとされています。  
 
 一方、 温暖な気候に生息していたエドモントサウルスの骨の微細構造から、年間を通して厳しい環境にいたというわけではないとしています。  
 
 これらのことから、極地方にいたエドモントサウルスは、夏だけやってきたといった季節的な移動ではなく、寒い冬も含め1年中極地方に生息していたのではないかとされています。  
 
 そして、極地方のエドモントサウルスの骨に残された越冬シグナルは、白亜紀後期に恐竜がどんな生活をしていたのか、貴重な情報を与えるとされています。
 


  1. References:
  2.  
  3. Chinsamy, A., Thomas, D. B., Tumarkin-Deratzian, A. R. and Fiorillo, A. R. (2012) 
  4. Hadrosaurs Were Perennial Polar Residents. 
  5. The Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology (advance online publication) 
  6. doi: 10.1002/ar.22428



 「Dinosaurs of the Lost Continent(失われた大陸の恐竜)」は、ScientificAmericanの記事です。イラストは、2010年9月に報告された角竜、Kosmoceratops richardsoni (コスモケラトプス)です。 

 最近の発見から、かつて北米にあったララミディア大陸の南と北では、異なる恐竜コミュニティがあったというような話です。いずれ、日経サイエンスでも紹介されるでしょう。   


 白亜紀中期から後期にかけ、海進により、北米大陸は2つの大陸に分断されていました。 西のララミディア(Laramidia)大陸と東のアパラチア(Appalachia)大陸です。 

 1980年代、ララミディアでは、数百年にわたり南と北で個別の恐竜のコミュニティがあったとされていました。しかし、大型動物が地域を棲み分けていたことに、批判もあったようです。

 記事によると、過去10年にわたるユタ州南部における発見から、北と南で異なる恐竜コミュニティがあったとする説が有力になってきているそうです。



 北米とヨーロッパで発見されたジュラ紀後期のティラノサウルス類(tyrannosauroid)の系統についての論文が報告されています。  

 この時期のティラノサウルス類は、初期の基盤的な小型種から、白亜紀後期のT.rex に代表される大型種へと移行する"intermediate tyrannosauroids(中間的なティラノサウロイド)"にあたります。  

 また、英国で発見され、2008年に記載された Stokesosaurus 属の新種、S.. langhami についても言及し、新しい属、Juratyrant を提唱しています。  
 Stokesosaurus 属のホロタイプ S. clevelandi と共有派生形質が異なるようです。

 S. clevelandi の完全な標本や、より多くのこの時期の標本が発見されれば、このあたりの系統関係がより明確になるとされています。

 図は、ティラノサウルス類(tyrannosauroid)の系統関係を示したクラドグラム。  Juratyrant は、Eotyrannus と姉妹群になっています。  


tyrannosauroid.jpg
 




  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte and Roger B.J. Benson (2012) 
  4. The systematics of Late Jurassic tyrannosauroids (Dinosauria: Theropoda) from Europe and North America. 
  5. Acta Palaeontologica Polonica (in press) 
  6. doi:10.4202/app.2011.0141



「恐竜ひな人形」がお目見え

 福井恐竜博物館で、「恐竜ひな人形」が展示されています。3月4日までです。 女雛はフクイサウルス、男雛はフクイラプトルで、十二単と束帯をまとっているそうです。

 日テレに動画があります。



 獣脚類の歯には、前と後に2本のカリナ(carina、鋸歯の連なりからなる列)があります。 

 そのカリナ間の角度を、5つの属のティラノサウルス類(Tyrannosaurid)について測定・解析し、獣脚類の歯列(dentition)の機能や進化に言及した論文が報告されています。  

 要旨だけから詳細は不明ですが、角度の相違は、歯のサイズよりも歯の機能に強く関連するとされています。  

 論文では、Tyrannosaurus、Tarbosaurus、Albertosaurus、Daspletosaurus、Gorgosaurus. について、in situで、デジタイザを利用し、そのカリナ間の角度を測定し、Paleontological Statistics (PAST)で解析しています。  
 この場合の、in situ とは、歯のある元々の場所で、という意味でしょうか。  

 結果として、 ティラノサウルス類の歯のデータセットにおいて、2つのカリナ間の角度は、タクサ間の相違に大いに関与しているとしています。  

 また、その相違は、歯のサイズよりも歯の機能に強く関連するともされています。もっとも今回得られたタクサ間の相違は、系統解析には不十分で、より多くのin situ データが必要とされています。

 


  1. References:
  2.  
  3. Miriam Reichel (2012) 
  4. The variation of angles between anterior and posterior carinae of tyrannosaurid teeth. 
  5. Canadian Journal of Earth Sciences (advance online publication) 
  6. doi: 10.1139/e11-068



"死体爆発"は起こらない

 イクチオサウルスのような大型海生動物は、その死後、腐敗ガスにより、バラバラになる"死体爆発(carcass explosion)"が起こりれが、全身骨格が散逸した状態で発見される理由とされてきました。  
 
 しかし、今回、通常は"死体爆発"は起こり得ないとする論文が報告されています。  

 "死体爆発"は1976年に提唱された説だそうです。  

 イクチオサウルスのような肺呼吸する大型海生動物は、海水よりも比重が小さいため、死後は海面に浮きます。  

 その後、腐敗ガスが内部に充満、爆発する"死後爆発"により、関節がバラバラになってしまい、次第に沈み、発見される化石もバラバラといった仮説です。  

 論文では、多くのイクチオサウルスの化石のタフォノミー(化石生成過程)や堆積環境を調べ、現生のクジラやイルカなどやヒトと比較しています。  
 
 その結果、死後、死体は沈み、浅瀬に打ち上げられない限り、死体爆発により、骨格がバラバラになるようなことはないとしています。

 骨格化石を解釈するときには、死後どういう運命をたどったのかが重要としています。


  1. References:
  2.  
  3. Achim G. Reisdorf, et al., 2012 
  4. Float, explode or sink: postmortem fate of lung-breathing marine vertebrates. 
  5. Palaeobiodiversity and Palaeoenvironments (advance online publication) 
  6. DOI: 10.1007/s12549-011-0067-z



Palaeontology の論文がフリー

 Palaeontology 55(1) の論文がフリーになっています。恐竜がらみは2つあり、いずれも、12月に紹介しています。

 最初は、マダガスカルで発見されたジュラ紀中期の恐竜足跡化石についてで、4kmも続く獣脚類の足跡/マダガスカルで紹介しています。 

 次は、ボン大学の林さんらの、ステゴサウルス類のオステオダーム(皮骨板)についての研究です。こちらは、プレートとスパイクの成長と機能/ステゴサウルス類で紹介しています。



  1. References:
  2.  
  3. ALEXANDER WAGENSOMMER et al., 2012 
  4. New dinosaur tracksites from the Middle Jurassic of Madagascar: ichnotaxonomical, behavioural and palaeoenvironmental implications
  5. Palaeontology 55(1), p. 109-126 
  6. DOI: 10.1111/j.1475-4983.2011.01121.x 
  7.  
  8. SHOJI HAYASHI, KENNETH CARPENTER, MAHITO WATABE, LORRIE A. McWHINNEY 
  9. Ontogenetic histology of Stegosaurus plates and spikes 
  10. Palaeontology, 55(1), p. 145-161 
  11. DOI: 10.1111/j.1475-4983.2011.01122.x



 Gryposaurus latidens のホロタイプと関連する標本の骨学について報告されています。  

 モンタナにある白亜紀初期(early Campanian)の地層(Two Medicine Formation )で発見され、1914年に記載されたハドロサウルス類です。  

 他の2種のグリポサウルス属との系統関係にも言及され、G. latidens は、これらのクレードの姉妹タクソンとされています。


 発見された地層の年代から、最古のハドロサウルス類のひとつとされています。  

 高いアーチ状の鼻孔 をもつGryposaurus 属については現在までに、G.notabilisG. monumentensis も記載されており、合計3種になります。2007年に記載されたG. monumentensis は、全部で歯が800本近くもあるとされています。  

 今回、G. latidens は、前上顎骨の前外側のふちが幅の広い弓状であるなどの点で、他のグリポサウルス属とは異なるとしています。

 系統的には、他の2種のグリポサウルス属からなるクレードの姉妹タクソンであるという仮説が支持されるということです。

 


  1. References:
  2.  
  3. Albert Prieto-Márquez (2012) 
  4. The skull and appendicular skeleton of Gryposaurus latidens, a saurolophine hadrosaurid (Dinosauria: Ornithopoda) from the early Campanian (Cretaceous) of Montana, USA. 
  5. Canadian Journal of Earth Sciences (advance online publication) 
  6. doi: 10.1139/e11-069




ハドロサウルス類の臭覚

 ランベオサウルス類、Amurosaurus riabinini の脳函についての論文が報告され、この種やハドロサウルス類における最も重要な神経生理学的特徴について議論されています。  

 特に、臭覚が発達しており、音声や視覚でコミュニケーションしたという確証は無いとしています。


 12の標本からの22のエンドキャスト(空洞)を調べたもの。  
 
 ハドロサウルス類の臭覚は、求心路遮断 (afferentation、脳に向かう神経系)における重要な役割を果たしていたとされてきました。  
 
 今回、ランベオサウルス類において、鋤鼻(じょび、vomeronasal)の臭覚は、おそらく遠く離れた距離で性的パートナーを探すために強められたとされています。  
 鋤鼻器は、ヤコブソン器官ともいわれ、臭上皮とは別で、フェロモンなどを感知する器官とされています。  

 一方で、ハドロサウルス類が、音声や視覚でコミュニケーションしたという仮説は、確証があるものではないとされています。


  1. References:
  2.  
  3. S. V. Saveliev, V. R. Alifanov and Yu. L. Bolotsky (2012) 
  4. Brain anatomy of Amurosaurus riabinini and some neurobiological peculiarities of duck-billed dinosaurs. 
  5. Paleontological Journal 46(1): 79-91 
  6. DOI: 10.1134/S003103011201011X



カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

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