注目の最新ニュース

 先週末のユタに続いて、モンタナにある白亜紀後期(カンパニアン)の地層(Judith River Formation)で発見されたケラトプシアが記載されています。
 
 眼窩の上にあるツノが、横方向に伸びているのが特徴的です。

 学名は、Spiclypeus shipporum(スピクリペウス・シッポルム)で、属名の意味は、「突起のある盾」。頭頂鱗状部のフリルの端にスパイク状の突起があることから。

 系統的には、カスモサウリネ(カスモサウルス亜科)で、バガケラトプスとコスモケラトプスからなる系統の姉妹群とされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Jordan C. Mallon, Christopher J. Ott, Peter L. Larson, Edward M. Iuliano & David C. Evans (2016) 
  4. Spiclypeus shipporum gen. et sp. nov., a Boldly Audacious New Chasmosaurine Ceratopsid (Dinosauria: Ornithischia) from the Judith River Formation (Upper Cretaceous: Campanian) of Montana, USA. 
  5.   PLoS ONE 11(5): e0154218. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0154218
----------  コメント(0)



ユタの新種ケラトプシア

 ユタ州南部にある白亜紀後期(カンパニアン)の地層(Wahweap Formation)で発見されたケラトプシアが記載されています。 

 学名は、Machairoceratops cronusi (マカイロケラトプス・クロヌシ)で、属名の意味は「曲がった剣を持つ角竜」の意味。フリルの上部には、2つの長くて曲がったツノがあります。

 2種類の系統解析から、いずれも初期に分岐したセントロサウリネ(亜科)とされていますが、ディアブロケラトプス(Diabloceratops )と多分岐とする解析結果も示されています。

 頭頂部の装飾の独特な形態は、基盤的なセントロサウリナエのフリル装飾における進化的多様性を表すものとされています。




  1. References:
  2.  
  3. Eric K. Lund, Patrick M. O'Connor, Mark A. Loewen & Zubair A. Jinnah (2016) 
  4. A New Centrosaurine Ceratopsid, Machairoceratops cronusi gen et sp. nov., from the Upper Sand Member of the Wahweap Formation (Middle Campanian), Southern Utah. 
  5. PLoS ONE 11(5): e0154403. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0154403
----------  コメント(0)



ティタノサウリアは早熟性

 幼い竜脚類の化石は珍しいのですが、今回、Rapetosaurus krausei(ラペトサウルス・クラウセイ)のベビーの新しい標本から、ティタノサウリアの成長戦略について報告されています。

 マダガスカルにある白亜紀後期の地層(Maevarano Formation )で発見されたもの。

 生まれた時は、3-4kgの体重だったとされています。そして、わすが、数週間後に、40kgに達し、腰の高さは35cm になったとされています。

 意外にも、四肢の骨格は、等長性のアイソメトリックな成長とされています。その可動範囲は成体よリ広く、生まれてすぐ、活発に動きまわったようです。

 ナショジオでは、あまり親の世話にはならず、孵化後は自力で生きていたと紹介しています。

 皮質のリモデリング、四肢のアイソメトリー、そして薄く石灰化し肥大した骨幹端軟骨は、活発で早熟性の成長戦略を示しています。 

 巨大な成体になる以前の小さいうちから、重い体を支える準備がしっかりできていたのですね。


 


  1. References:
  2.  
  3. Kristina Curry Rogers, Megan Whitney, Michael D'Emic & Brian Bagley (2016) 
  4. Tiny giant suggests that largest dinosaurs were precocial at birth. 
  5. Science 352(6284): 450-453 
  6. DOI: 10.1126/science.aaf1509
----------  コメント(0)



 ティタノサウリアは60以上もの属が記載され、白亜紀後期のゴンドワナでは、極めて多様で豊富でした。

 最も豊富に見つかっているのがパタゴニアで、今回、竜脚類では最も完全とされる頭部が見つかり、新種記載されています。

 約9500万年前の白亜紀後期(セノマニアンからチューロニアン)の地層(Bajo Barreal Formation)で発見されたもの。

 発見場所にちなみ、Sarmientosaurus musacchioi (サルミエントサウルス・ムサッチオイ)と命名されています。

 完全な頭部が残された、大きな鼻部窓のある幅の広い吻部など、最も原始的形質を保持した(plesiomorphic)ティタノサウリアとされています。

 白亜紀後期早期、南米南部では、異なる頭蓋構造を持つ複数のティタノサウリアが、共存していたことになります。

 系統的には、進化したティタノサウリアであるリソストロティア(Lithostrotia)の基盤的位置づけです。  リソストロティアは、やがてのカンパニアンの時期、パタゴニアで高度に派生します。  

 頭部は、ティタノサウリアとブラキオサウリダエ(科)の密接な関係を示すとされています。  

 骨化した頚椎の腱、含気性の高い頚椎、いつも下向きの鼻といった、他のティタノサウリアでは見られない特徴が確認されています。  

 特に、後の2つの機能は、少なくとも一つの、ほぼ同時にディプロドコイデア(ディプロドクス上科)によって収斂的に取得され、これは、低い位置の植物を食べるために共通に特殊化したと考えられています。  


 


  1. References:
  2.  
  3. Rubén D. F. Martínez, Matthew C. Lamanna, Fernando E. Novas, Ryan C. Ridgely, Gabriel A. Casal, Javier E. Martínez, Javier R. Vita & Lawrence M. Witmer (2016) 
  4. A Basal Lithostrotian Titanosaur (Dinosauria: Sauropoda) with a Complete Skull: Implications for the Evolution and Paleobiology of Titanosauria. 
  5. PLoS ONE 11(4): e0151661. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0151661
----------  コメント(0)



 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といっても、ジュラ紀中期(約1億7000万年前)に現れた基盤的な仲間と、白亜紀後期の大型種では、サイズなどがずいぶん異なります。

 初のベイズ分析:ティラノサウロイデアの系統関係(2016年2月)で紹介していますが、白亜紀後期の大型種と、その兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の、Xiongguanlong (シオングアンロン)の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあるのです。

 今回、その論文と同じ著者であるエジンバラ大のステフェン・ブルサット(Stephen L. Brusatte )らにより、ティラノサウロイデアのギャップを埋める時期の新種が記載されています。Smithsonianmagが紹介しています。

 また、ブルサットは日経サイエンス7月号で、ティラノサウルスの系譜について語っています。

 ウズベキスタン、キジルクム砂漠での、1997年から2006年にかけての発掘調査で、白亜紀後期、チューロニアン(9000万-9200万年前)の地層(ビッセクティ層、Bissekty Formation)から、脳函などが見つかったもの。


 全長は3メートルほどと、現在のウマほどのサイズですが、特に脳函は保存状態がよく、内耳は後期の仲間の特徴を持っており、低周波音が良く聞き取れたとされています。

 この発達した脳と感度の良い聴力が、捕食者として大型に進化した理由の一つと考えられています。低い音が良く聞こえるといいのは、暗闇や茂みでも獲物の足跡を聞くことができたからでしょうか。

 しかし、なぜ耳がいいと大型したのか、アロサウルスなど、他の大型獣脚類ではどうなのか、エサとなる植物食恐竜の大型化が関与していないのか、いろいろと疑問もありますね。


 学名は、Timurlengia euotica(ティムルレンギア・エウオティカ)。意味は、"耳のいいティムール(Timurleng)"。ティムールは、14世紀の中央アジアにあったティムール朝の建国者です。

 図は、脳函だけからの系統関係(Stephen L. Brusatte et al., 2016)。甘粛州で発見されたシオングアンロンより基盤的な位置づけです。

 出現は、ティラノサウロイダエ(科)が分岐する、化石記録の乏しい白亜紀中頃(図のグレーゾーン)です。

 なお、シオングアンロンについては、新種のティラノサウロイデアとオルニトミモサウリア(2009年4月)で紹介しています。



 Timurlengia.jpg 


  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte, Alexander Averianov, Hans-Dieter Sues, Amy Muir, and Ian B. Butler (2016) 
  4. New tyrannosaur from the mid-Cretaceous of Uzbekistan clarifies evolution of giant body sizes and advanced senses in tyrant dinosaurs. 
  5. Proceedings of the National Academy of Sciences (advance online publication) 
  6. doi: 10.1073/pnas.1600140113
----------  コメント(0)



 系統解析に用いる標本は成熟した成体でないと、個体発生(成長変化)による形質変化という誤差を含むことになります。

 しかし、絶滅動物の個体発生段階を決めるのは複雑です。

 今回、鳥類以外の恐竜の年齢を決めるのに利用できるいくつかの方法をレビューし、恐竜の成体の定義としてまとめた論文が報告されています。

 図はズニケラトプスを例に、何を持って成体とするか種々の方法(David W. E. Hone et al., 2016)。さまざまな方法が存在します。


  1. a)社会的シグナル(フリル)の発達程度 
  2. b)骨表面のテクスチャ 
  3. c)サイズ(図は腸骨)、あまりあてにならないようです 
  4. d)生殖成熟度(矢印は成熟した雌にしかない骨髄骨) 
  5. e)神経中枢弓(neurocentral arch)の癒合(矢印は消えてしまった軟骨が癒合した痕) 
  6. f)多種のデータに基づいた成長曲線の漸近線(矢印、最大成長点のこと)
  7.  

  8.  

F2.medium.gif

 今回、これら複数の基準から、成体の恐竜は、次のように定義されています。また、亜成体や幼体、胚も定義されています。


 成体の定義:生殖成熟に加え、骨学および組織学的特徴によって示される、急速な成長の停止に相当するライフステージの到達点に達している動物。

 
 生殖成熟だけでは不十分で、組織的にも、骨格的にも十分に成長しきっている必要があるのです。  

 タクソンの成長曲線を考慮するとなると、ひとつの個体だけの部分的な骨格からの判断は難しそうですね。  

 この定義によると、今まで成体とされた多くの標本は、幼体か亜成体とされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. David W. E. Hone, Andrew A. Farke, Mathew J. Wedel, 2016 
  4. Ontogeny and the fossil record: what, if anything, is an adult dinosaur ? 
  5. Biology Letters, published 17 February 2016. 
  6. DOI: 10.1098/rsbl.2015.0947
----------  コメント(0)



 福井にある白亜紀前期の地層(北谷層)で発見された新種の獣脚類が記載され、Fukuivenator paradoxus(フクイべナートル・パラドクサス)と命名されています。

 The Theropod Database Blog が指骨を修正するコメントを紹介しています。
 
 日本の新種恐竜で紹介していますが、日本では7種めの新種で、福井産の新種としては5種目になります。

 タイプ標本(FPDM-V8461)は、おそらく亜成体とされ、十分には成長しておらず、推定全長は245cm、体重は25.0kgとされています。

 属名は「福井のハンター」の意味。種小名は、原始的な特徴と派生的な特徴を組み合わせて持つことから。

 胃の内容物などの直接的な証拠はないのですが、円錐で鋸歯の無い前上顎歯、対象的な上顎歯、異歯性(heterodonty)、10より多い頚椎数は獣脚類の植物食と一致し、少なくとも雑食性だったとされています。

 図は骨格図(Azumae et al., 2016)。見つかっている部分は、濃い灰色です。 頭部長は234mmとされていますから、スケールバーの長さ(50mm)は間違いかも。
 

Fukuivenator paradoxus.jpg

 CTスキャンで内耳の構造も確認され、その形態は、鳥類と非鳥類型恐竜の中間とされています。  

 系統的には、コエルロサウリアの、基盤的で分岐した位置のマニラプトラとされています。コンプソグナシダエ(Compsognathidae)やオルニトミモサウリアなどど多分岐になっています。  

 しかし、基盤的な位置しながら、より進化したドロマエオサウリダエやパラヴェス(Paraves)と同じ派生的な特徴も持っています。  

 今回の発見は、コエルロサウリアの系統内での、モザイク進化とホモプラシー(独立に進化して同じ形質を獲得した現象)を強調するとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Yoichi Azuma, Xing Xu, Masateru Shibata, Soichiro Kawabe, Kazunori Miyata & Takuya Imai (2016) 
  4. A bizarre theropod from the Early Cretaceous of Japan highlighting mosaic evolution among coelurosaurians. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 20478 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep20478
----------  コメント(0)



 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といえば、ジュラ紀の小型種から、白亜紀後期の大型種まで、1億年にもわたる多様なクレードです。

 今回、その系統関係について再検討した論文が報告されています。

 新たに発見されたタクソンを加えた28種と4種の外群からの366の形質(解剖学的特徴)について、従来の最大節約法の他に、初めてベイズ(Bayesian)分析を行ったもの。

 なお、ナノティラヌス(Nanotyrannus lancensis)については、著者らが、T.rex の幼体で無効名という論文を出していることもあり、データセットには含まれてはいません。

 また、最大節約法は、形質の変化が最も少なくなる関係を求める方法ですが、ベイズ分析は、単系統群の出現頻度である事後確率(posterior probability)が最大となる関係を求めます。

 その結果ですが、最大節約法とベイズ分析を比較すると、2つの結果は非常に類似したコンセンサスツリーとなっています。  幾つかの相違点はありますが、両方のツリーの全体的な構造は同じです。

 今回の結果から、巨大なボディープランは、断片的に進化したことを示し、また、議論されているように、北米大陸西部での、南北で明確な種の区別があるわけではないとされています。

 さらに、おそらく、T.rex はアジアから北米へ移ってきたとしています。 

 図は、ベイズ分析の結果に地質年代をあてはめたもの(Stephen L. Brusatte & Thomas D. Car, 2016)。拡大図はこちら

 分岐点(ノード)の数字は、それぞれのクレードの事後確率(%、単系統群の出現頻度)を示しています。

 最節約法と比較すると、基盤的な位置などで、多分岐が少ないですね。最も基盤的(最古)なのは、単独でグアンロン(Guanlong)です。

 後で述べますが、Xiongguanlong と白亜紀後期の大型種の間には、化石が見つかっていない長いブランクがあります。


 srep20252-f2.jpg

 ベイズ分析は、分子系統学的研究では標準で、より広範な形態学的研究において使用されるようになっているそうです。  

 ティラノサウロイデアの進化や生物地理学的分布を理解するうえで、化石証拠が欠けていることによる3つのバイアスをあげています。  

 そのひとつは、白亜紀後期の大型種のクレードと、そのボティプランの兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の姉妹群、Xiongguanlong の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあることです。  

 2つめは、アジアの大型ティラノサウロイデアの多様性が過小評価されていること。特に、カンパニアンの化石発見が期待されています。  

 そして、3つめは、北米大陸東部(アパラチア)について、ほとんど知られていないことです。



  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte & Thomas D. Carr (2016) 
  4. The phylogeny and evolutionary history of tyrannosauroid dinosaurs. Scientific Reports 6, Article number: 20252 (2016) 
  5. doi:10.1038/srep20252
----------  コメント(0)



 アルゼンチン・メンドーサにある白亜紀後期の地層で発見された巨大なティタノサウリアが記載されています。

 巨大恐竜といえば、かつては、大腿骨などのごく一部の骨から全長や体重を推定し、その大きさを競っていたものです。

 今回、見つかっている上腕骨は1.76メートルと、ティタノサウリアの中でも最大で、史上最大の脊椎動物の一つとされてはいますが、論文中に推定全長の記載はないようです。ニュースでは、25から28メートルとされています。

 むしろ、その大きさを競うというより、特徴的な足(中足骨や指骨)の進化などについて考察されています。

 学名は、Notocolossus gonzalezparejasi (ノトコロッサス・ゴンザレツパレジャシ)で、属名の意味は、ゴンドワナからの巨大恐竜にちなみ、「南のコロッサス(巨人、巨像)」です。ティタノサウリアとしては珍しく、後ろ足先が完全に残されているのが特徴です。

 また、コンパクトな中足骨は、重い体重を支えるためだったのではないかとされています。また、指骨は減少し、8つしかありません。

 図は、発見場所と、発見された部分と全身の骨格図(Bernardo J. González Riga et al., 2016)。 拡大図

 ホロタイプ(UNCUYO-LD 301)は、薄緑色で、関連標本はオレンジ色で示されています。

Notocolossus.jpg



 系統的には、ティタノサウリアの派生的なクレード、リソストロティア(Lithostrotia)で、パタゴニアのティタノサウルス、ドレッドノータス(Dreadnoughtus)と姉妹群とされています。    

 そもそも、南米のリソストリアは巨大で、上腕骨の長さは、ドレッドノータスやフタロンコサウルス(Futalognkosaurus)では上腕骨はそれぞれ1.6メートルと1.56メートルです(一覧表)。

 そのなかでも、ノトコロッサスの上腕骨は1.76メートルと最大です。

 後ろ足は、竜脚類やティタノサウリアの中でもユニークとされています。中足骨は、コンパクトで短く、ほぼ同じ長さで、重い体重を支えるためだったのではないかとされています。  

 派生したティタノサウリアでは、竜脚類の中では 最も指骨の数が減少し、最少になっていくのですが、ノトコロッサスでは、第1指からの指骨の数は、2-2-2-2-0の合計8つです。  

 ちなみに、アパトサウルスでは、2-3-4-2-1の13あります。



  1. References:
  2.  
  3. Bernardo J. González Riga, Matthew C. Lamanna, Leonardo D. Ortiz David, Jorge O. Calvo & Juan P. Coria (2016) 
  4. A gigantic new dinosaur from Argentina and the evolution of the sauropod hind foot. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 19165 
  6. doi:10.1038/srep19165
----------  コメント(0)



系統で異なる恐竜の前肢姿勢

 最近の恐竜の全身骨格、かつての図鑑のような「まな板の鯉」姿勢ではなくて、いきいきとした形で復元されるようになってきました。

 一方、さまざまな恐竜の大きさなどを比較するときには、「まな板の鯉」状態の標準姿勢が参考になります。

 しかし、恐竜が静止している時、肩甲骨ブレードはどのような傾きだったのか、定量的に調べられてはいなかったそうです。

 今回、恐竜が静止している時の肩甲骨ブレードや前肢の向きを調べた論文が報告されています。

 その結果、例えば、半月状の手根骨を持つ獣脚類以外の二足歩行の恐竜では、静止時の肘の向きは直角に近いとされています。

 また、半月状の手根骨を持つ獣脚類では、静止時、肘と手首はフレックスで、手首はほぼ直角で、ヒジは大きく鋭角とされています。

 図は、今回の結果で示された静止時の肩帯と前肢(Phil Senter & James H. Robins, 2015) 。A-Gの恐竜は以下のとおり。肘や手首などの角度が大きく異なっていますね。

  1.  
  2. A. 半月状の手根骨を持たない獣脚類 (Dilophosaurus wetherilli
  3. B. 半月状の手根骨を持つ獣脚類(カウディプテリクスをのぞく、Velociraptor mongoliensis
  4. C. カウディプテリクス(Caudipteryx sp.) 
  5. D. ケラトプシダエ(Styracosaurus albertensis)
  6. E. 基盤的竜脚形類(Plateosaurus engelhardti) 
  7. F. ハドロサウリアではない鳥脚類(Thescelosaurus neglectus
  8. G. ハドロサウリダエ(Parasaurolophus walkeri)


Pectoral girdles and forelimbs.jpg

  1. References:
  2.  
  3. Phil Senter & James H. Robins (2015) 
  4. Resting Orientations of Dinosaur Scapulae and Forelimbs: A Numerical Analysis, with Implications for Reconstructions and Museum Mounts. 
  5. PLoS ONE 10(12): e0144036 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0144036
----------  コメント(0)



 近年はアジアからの発見で、ケラトプシア(角竜)の起源や初期進化も少しずつ判明してきています。プシッタコサウルスの分岐時期や系統的な位置関係も、気になるところです。

 プシッタコサウリダエは、ネオケラトプシア/モザイケラトプス(2015年9月)では、プシッタコサウリダエは、ネオケラトプシアの位置づけで、比較的派生的なクレードと紹介しました。

 しかし、分岐時期とされるジュラ紀後期と、化石が見つかっている白亜紀前期の間には、空白期間があり、特にジュラ紀の地層からの、さらなる発見が必要とされていました。

 今回、中国・ジュンガル盆地にあるジュラ紀後期早期(オックスフォーディアン、約1億6000万年前)の地層(Shishugou Formation)で発見された基盤的ケラトプシアが記載されています。

 その中で、プシッタコサウルスの系統は、ネオケラトプシアではなく、基盤的なケラトプシアの系統で、約1億6000万年前の、ジュラ紀後期になる前には分岐したとされています。


 学名は、Hualianceratops wucaiwanensis (フアリアンケラトプス・ウカイワネンシス)で、頭部骨のほとんどに、織目構造の装飾(textured ornamentation)があることから、属名の意味は、"装飾的な顔"です。

 PLOS Paleoで、Andrew Farke は、いぼいぼ顔(warty face)と紹介しています。もちろん、骨の表面の模様であって、実際の顔ではありませんね。

 全長は1メートルほど、基盤的なケラトプシアだけに、2足歩行だったようです。

 図は、今回示されている分岐図(Fenglu Han et al.,2015)。系統的には、基盤的ケラトプシアの位置づけで、チャオヤンゴサウリダエ(Chaoyangsauridae、科)の系統です。

 チャオヤンゴサウリダエの中で、フアリアンケラトプスは、基盤的なケラトプシアであるインロング(Yinlong downsi ) 、チャオヤングサウルス(Chaoyangsaurus youngi)、シュアンフアケラトプス(Xuanhuaceratops niei )の3種と多系統をなしています。

 また、このチャオヤンゴサウリダエは、プシッタコサウルス属とは姉妹群をなすという新しい仮説を提唱しています 。


Hualianceratops wucaiwanensis.jpg


 今回の結果は、ネオケラトプシアが基盤的な位置で、幾つかの系統に分岐したとされ、下図に示すように、その分岐は、約1億6000万年前の、ジュラ紀後期になる前に始まったとされています。

 プシッタコサウルスやネオケラトプシアの出現が白亜紀前期なことから、ジュラ紀後期前に分岐してから、約1億2500万年前の白亜紀前期まで、化石が見つかっていない長い空白期間が存在します。

 下図で、灰色の線がその系統で、ゴースト系統(ghost lineage)とされています。

 ただ、分岐図に地質年代を当てはめたりすると、多くの場合、こういう空白期間は出てきそうですが。



Ghost lineages.jpg


 フアリアンケラトプスの記載は、主に頭部化石標本 (IVPP V18641) に基づいたもので、Shishugou Formation 上部からは、インロングに続いて、2種目の基盤的ケラトプシアです。  

 プシッタコサウルスと共通した派生的な特徴と、基盤的なケラトプシアであるインロング、チャオヤングサウルス、シュアンフアケラトプスと共通の特徴を持つとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Fenglu Han, Catherine A. Forster, James M. Clark & Xing Xu (2015) 
  4. A New Taxon of Basal Ceratopsian from China and the Early Evolution of Ceratopsia. 
  5. PLoS ONE 10(12): e0143369 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0143369
----------  コメント(0)



 北海道むかわ町にある白亜紀後期(約7200万年前)の地層で発見されたモササウルスが新種記載されています。

 論文はオープンアクセスで、プレスリリースでわかりやすく紹介されています。

 ハリサウリナエ(Halisaurinae、亜科)のPhosphorosaurus 属の新種とされ、P. ponpetelegans (フォスフォロサウルス・ポンペテレガンス)と命名されています。

 日本で4番目の新種のモササウルスとなります。  モササウルスとしては初めて、立体視ができる両眼視の構造が確認されています。
 立体視は、獲物を狙うのに有利なのですが、今回の新種は比較的小型で、遊泳能力も高くなく、別の目的があったようです。

 両眼視は、単眼視に比べ、光の受容体が多く暗視に適した構造であることから、その目的は、夜行性だったのではないかと考えられています。 大型モササウルスが活動していない夜に行動したというわけです。

 夜行性については、中生代海生爬虫類として、初めて示唆されたグループとされています。

 暗視に適した構造というのは、現生のヘビなどからの類推ですが、夜だけではなく、昼でも暗い深い海で役に立った可能性もありますね。


 


  1. References:
  2.  
  3. Takuya Konishi, Michael W. Caldwell, Tomohiro Nishimura, Kazuhiko Sakurai & Kyo Tanoue, 2015 
  4. A new halisaurine mosasaur (Squamata: Halisaurinae) from Japan: the first record in the western Pacific realm and the first documented insights into binocular vision in mosasaurs insights into binocular vision in mosasaurs 
  5. Journal of Systematic Palaeontology, Published online: 07 Dec 2015
  6. DOI:10.1080/14772019.2015.1113447 
----------  コメント(0)



 恐竜はどこまで口を開くことができたのか? 口を開く角度は、その食性に関係していると考えられます。

 今回、3種の獣脚類について、アゴの開口角度について調べた論文が報告されています。T.rex とアロサウルス(Allosaurus fragilis)、そして、テリジノサウリアで、獣脚類ながら植物食のエルリコサウルス( Erlikosaurus andrewsi )です。

 3Dデジタルモデルを使い、頭部にある多くの筋肉の緊張限界などを、現生の鳥類やクロコダイルと比較し、解析したたもの。 ブリストル大にビデオがあります。

 解析結果として2種類のデータが示されています。図は、口を6度開いた時の安静筋肉長から求めた、最適と最大開口角度(Stephan Lautenschlager , 2015)。

 棒グラフは、緊張因子(筋肉長の伸長/弛緩比)。いずれかの筋肉の伸びが、最適か最大緊張限界に達しています。

 今回の解析は筋肉の伸びがメインで、関節強度などは考慮されていないようですが、T.rex やアロサウルスはアゴが外れそうですね。


Gape angles.jpg
 


 結果として、口を3度開いた時の安静筋肉長(muscle resting length)と、6度開いた時の安静筋肉長から、口を開く角度と緊張因子(strain factor、筋肉長の伸長/弛緩比)の関係が示されています。  

 T.rex とアロサウルスについて、いずれかの筋肉が最適緊張限界に達する角度は、いずれも3度の安静筋肉長から求めた値は28.0度、6度からは32.0度と32.5度とされています。  

 また、いずれかの筋肉が最大緊張限界に達する最大角度は、アロサウルスでは 79.0度(3度)及び92.0度(6度)、T.rex では、70.5度(3度)及び80度(6度)とされています。  

 一方、獣脚類ながら植物食のエルリコサウルスの最適角度は、3度の安静筋肉長からは20.5度、6度からは24.0度とされ、最大角度は43.5度(3度)及び49.0度(6度)とされています。  

 これらの相違は、食餌スタイルや食べるものを特殊化したことによる違いとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Stephan Lautenschlager (2015) Estimating cranial musculoskeletal constraints in theropod dinosaurs. 
  4. Royal Society Oepn Science 2: 150495 
  5. DOI: 10.1098/rsos.150495
----------  コメント(0)



 "ラプトル"の名で知られる、ほとんどのドロマエオサウリダエ(Dromaeosauridae、科)は、比較的小型から中型の獣脚類です。

 デイノニコサウリア(Deinonychosauria)の系統であり、鳥類へと進化したアヴィアラエ(Avialae)とは、既にジュラ紀後期に分岐している(分岐図 )のですが、小型化と羽毛は、この系統でも空へとチャレンジしていたようように思えます。

 一方、小数ですが、先祖返りしたような大型種も知られています。「大型」の基準があいまいですが、論文では、4種とあります。推定全長を5メートル超に絞ると、2種ですね。

 今回、ユタ州にある白亜紀後期(マーストリヒチアン)のヘル・クリーク層から、推定全長5.5メートルほどの大型種が発見・記載され、Dakotaraptor steini (ダコタラプトル・ステイニ)と命名されています。

 ヘルクリーク層には、小型のマニラプトラと大型のティラノサウリダエがいたわけですが、ダコタラプトルは、そのギャップを埋めるボディサイズです。

 系統的には、ヘル・クリーク層でもっとありふれたドロマエオサウリダエ、(Dromaeosaurus albertensis)の姉妹群とされ、両者からなる群がユタラプトル(Utahraptor ostrommaysorum )の姉妹群の位置づけです。

 ユタラプトルは、ユタ州にある白亜紀前期(バレミアン、約1億2500万年前)の地層(Cedar Mountain Formation)で発見されており、系統的には近いのですが、時代はずいぶん違います。

 尺骨には、大型種としては初めての羽軸突起(quill knob)があり、前肢に長い羽毛があった証拠とされています。

 しかし、飛べそうにはない大型種であり、ディスプレイか、二次的に飛ばなくなった羽根の名残りとも考えられます。

 また、大腿骨が脛骨より短めで、そのプロポーションから、走るスピードは速く、大きなカギツメなどとあいまって、手ごわいプレデターだったようです。

 図は、ホロタイプ(PBMNH.P.10.113.T)からの復元骨格。右上は見つかっている部分で、その他は、他の近縁種からの推定です。

Dakotaraptor steini.jpg

 論文はカンザス大が発行するオンライン専用のオープンアクセスの雑誌です。  

 論文で示されている4種の大型ドロマエオサウリダエは以下のとおり。推定全長はWikipedia などから。全長1.5メートルのブイトレラプトルは大型といえるのかどうか、微妙です。


  1. Buitreraptor gonzalezorum (ブイトレラプトル、南米、白亜紀後期、全長1.5メートル)
  2. Deinonychus antirrhopus (デイノニクス、北米、白亜紀前期、推定全長3.4メートル)
  3. Achillobator giganticus (アキロバトル、モンゴル、白亜紀後期、全長5から6メートル)
  4. Utahraptor ostrommaysorum (ユタラプトル、北米、白亜紀前期、全長7メートル)
 
 なお、ユタラプトルの種小名、記載論文ではostrommaysi でしたが、複数形に改められています。  

 図は、ドロマエオサウリダエの分岐図(Robert A. DePalma et al., 2015)。5種の大型種は赤線で示しています。 


Dakotaraptor steini-2.jpg

 今回の標本は、2005年に四肢や尾の一部が発見されたもの。歯などは別の場所から見つかっています。同時に、サウロルニトレステス(Saurornitholestes)やアケロラプトル(Acheroraptor)といった他のドロマエオサウレダエの標本も見つかっています。

 尺骨には、大型種としては初めての羽軸突起があります。羽軸突起は、腰にコブのあるカルカロドントサウルス類(2010年9月)で紹介していますが、飛ぶことができる現生鳥類にみられ、次列風切羽が、靭帯により骨に固定されていた時の小さな突起です。  

 大型のドロマエオサウリダエでも、ユタラプトルは大腿骨:脛骨比が1:1で、中足骨は短く、がっしりした骨格あり、獲物を追いかけるプレデターとしての能力は劣っていたようです。  

 一方、ダコタサウルスの大腿骨は脛骨より17%短く、小型種に比べて相対的に中足骨は長めです。よりスピードが出せそうなプロポーションだったわけですね。


 


  1. References:
  2. Robert A. DePalma, David A. Burnham, Larry D. Martin†,Peter L. Larson and Robert T. Bakker (2015) 
  3. The first giant raptor (Theropoda: Dromaeosauridae) from the Hell Creek Formation. 
  4. Paleontological Contributions 14 (16 pp.) PDF 
  5. URI: http://hdl.handle.net/1808/18764
----------  コメント(0)



 現生鳥類では、膝と腹部を結ぶ皮膜(skin web)があります。関節部分で、皮膚をより伸縮させることで、移動性を高めているようです。

 今回、オルニトミムス属でも、非鳥類型恐竜では初めてとなる皮膜が報告されています。復元イラスト等は、修正が必要になりそうですね。アルバータ大が紹介しています。

 鳥類とはやや異なり、大腿骨の中間あたりから腹部にかけての皮膜で、大腿前部皮膜(anterior femoral web)と区別されています。


 また、保存状態の良い羽毛を含む外皮構造も確認されています。現生のダチョウに似ており、体温調節に使ったようです。

 特に、尾に広範囲のダウン状の羽毛(plumaceous feathers)があり、尾に羽毛のあるオルニトミミダエ(科)は初めてとされています。


 図は、復元図(Aaron J. van der Reest et al., 2015 Artwork: Julius Csotonyi )。大腿骨の中間あたりから腹部にかけて、皮膜が描かれています。

 また、体から尾、足の一部に、びっしりと密なダウン状の羽毛があります。なお、頭部や前肢は見つかっておらず、別標本からの推定です。



Ornithomimus.jpg

 2009年に、アルバータにある白亜紀後期の地層(Dinosaur Park Formation)で、部分的に関節した化石標本(UALVP 52531)が見つかったもの。

 種名が不明の、オルニトミムス属の1種(Ornithomimus sp.)とされています。  

 尾の羽毛は、体部よりやや細長いとされています。なお、尾の下側と後足の大腿骨の中央から遠位の半分に羽毛はありません。  

 全体的に、羽毛パターンは、ダチョウ(Struthio camelus)や走鳥類(Palaeognathae)と同様とされ、その機能は体温調節の可能性が高いとされています。  

 また、足の周囲には、体の輪郭も残され、大腿骨の中間あたりから腹部にかけての皮膜(大腿前部皮膜)も確認されています。

 こういう軟組織は、非鳥類型恐竜では初めてとされています。  

 このことから、オルニトミムスの休息時の大腿骨の位置は、たいていの獣脚類よりは、前腹側だったと考えられています。  こういった姿勢は、鳥類への移行段階だったようです。




  1. References:
  2.  
  3. Aaron J. van der Reest, Alexander P. Wolfe & Philip J. Currie (2016) [2015] 
  4. A densely feathered ornithomimid (Dinosauria: Theropoda) from the Upper Cretaceous Dinosaur Park Formation, Alberta, Canada 
  5. Cretaceous Research 58: 108-117 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.10.004
----------  コメント(0)



 猛暑だと熱中症が増えたりしますが、一般に、内温性動物では、代謝で体温を上げることは容易でも、下げる能力は劣るのです。

 体温を気温より下げることは難しいため、体温を維持するためには、体温は気温より高めに設定しておく必要があります。
 
 なかでも鳥類の体温は36-43℃と哺乳類より高めです。これは、空を飛ぶ大きなエネルギーを得るため、普段から代謝を高めているのだそうです。

 つまり、体温から、内温性か外温性か、またはその中間段階なのか、その動物の代謝形態がある程度わかったりするのです。

 では、鳥類の祖先にあたる羽毛恐竜の体温はどれくらいだったのでしょうか。

 今回、オヴィラプトロサウリダエ(オヴィラプトル科) など、白亜紀後期の2種類の恐竜の卵殻化石から、メスの排卵期の体温を推定した論文が報告されています。

 卵殻は、体内深部にある卵管下部で産生されるため、中核の体温を反映しており、獣脚類の直接的な体温測定は初めてとされています。

 その結果、オヴィラプトロサウリダエの体温は意外と低く、現生鳥類に見られるような内温性はなかったとされています。

 一方、Basoendothermy(基底内温性)や中温性(mesothermy) といった、内温機能が備わった中間型の形態だった可能性が示唆されています。

 常に豊富なエサを必要とする現生鳥類型の内温性は、環境によっては必ずしも優れたシステムではなく、高めの体温を維持する内温性は、飛行に関与した系統のみで進化したのかもしれませんね。


 図は、体重(X軸)と体温(Y実)の関係(Robert A et al., 2015)。 ピンクは現生鳥類で、赤は現生哺乳類、緑は外温性動物(当然、体温には幅があります)。

 ■で示されたのが、今回の測定結果です。オヴィラプトロサウリダエ(赤の■)は、外温性動物の位置ですね。


body_temp.jpg

 恐竜が内温性 (温血)か外温性 (冷血)か、は古くからのテーマです。もちろん、興味があるのは温度ではなくて、その行動や生態です。  

 より進化した鳥類が内温性であることから、どのあたりで進化したのかは気になるところです。  

 最近では、内温性と外温性と2分するのではなく、その中間の形態も提唱されてきています。 中間とはいっても、自らの代謝で熱を発生させる内温機能は備わっていたのです。

 例えば、Basoendothermy は、体温が35℃未満の内温性として定義され、中温性は代謝で体温を上げるのですが、内温性のように明確な体温は設定されていない形態です。 

 中温性については、恐竜は中間的な成長速度/内温性と外温性を併用か(2014年6月)で紹介しています。    
 
 今回の論文は、恐竜と現生鳥類や爬虫類の卵殻に含まれる炭酸カルシウムの炭素同位体(C13)と酸素同位体(O18)比率から推定したもの。  

 低い温度だと重い同位体は凝集しやすく、高い温度だとランダムになり、凝集の比率から温度がわかるのです。      

 その結果、図に示したように、アルゼンチンにある約8000万年前のティタノサウリダエ(科)の体温は、37.6±1.9℃と推定されています。 

 これは、大型の内温性動物と同程度です。ただ、これは、巨大さゆえの慣性恒温性(Gigantothermy)を反映している可能性もあります。  

 竜脚類の体温は人間並み(2011年6月)で、歯のエナメル質の同位体比から推定した体温、36-38℃に似てますね。 図では▲で示されています。 

 一方、モンゴルにある7500-7100万年前のオヴィラプトロサウリダエの体温は、31.9±2.9℃と推定されています。  

 この体温で内温性だとすると、30℃を超えるような季節は、体温を下げるほうが大変です。  

 よって、現生鳥類のような体温制御機構はなかったとされていますが、周囲の環境の温度は、26.3℃とされ、卵殻のほうが高いことから、ある程度の体温調節はできたとされています。  

 ただし、鳥類ほどではないにしろ、その中間的な、自分の代謝で体温を上げることができた内温性だったのか、日光浴なので調節できた外温性なのかは不明です。  

 今回調べた2種が内温性又は外温性とする強力な証拠はないとされています。  

 非鳥類型恐竜に、ある程度の体温調整機能はあるものの、全てが現生鳥類のような高めの体温(36-43℃)だったわけではないと考えられています。  




  1. References:
  2.  
  3. Robert A. Eagle, Marcus Enriquez, Gerald Grellet-Tinner, Alberto Pérez-Huerta, David Hu, Thomas Tütken, Shaena Montanari, Sean J. Loyd, Pedro Ramirez, Aradhna K. Tripati, Matthew J. Kohn, Thure E. Cerling, Luis M. Chiappe & John M. Eiler (2015) 
  4. Isotopic ordering in eggshells reflects body temperatures and suggests differing thermophysiology in two Cretaceous dinosaurs.
  5.   Nature Communications 6, Article number: 8296 doi: 10.1038/ncomms9296
----------  コメント(0)



 ディプロドクスの頚椎は15で、ジラファティタンは13などと、軽率に言ってはいけない。よく知られた竜脚類でさえ、正確な頚椎の数は知られていないのだ・・・。

 ほとんどの竜脚類の頚椎は不完全で、しかも、その形状は変形しているとする論文を、ブリストル大のテイラー(Michael P. Taylor)が報告しています。

 オープンアクセスで、いくつかの竜脚類について具体的に説明しています。

 完全な恐竜化石が見つかること自体、珍しいのですが、特に、竜脚類の首に関しては、完全な化石が見つかるのは極めて稀なのですね。

 例えば、ディプロドクス (Diplodocus carnegii)の頚椎の数はおそらく15ですが、完全な化石が見つかっているわけではなく、未発見があるとすれば増え、11番目の頚椎が間違っていれば少なくなるとされています。 

  図は、Diplodocus carnegii のホロタイプ(CM 84、Michael P. Taylor, 2015)。頚椎は15 として示されています。


Diplodocus carnegii.jpg


 また、ジラファティタン(Giraffatitan brancai)の頚椎の数はおそらく13で、増減の可能性も示唆されています。

 今のところ、全ての頚椎が見つかっている竜脚類は、以下のわずか5属、6種にすぎません。ということは、その他の属の竜脚類の復元は、似たような仲間からの類推なんですね。

 また、数がそろっていても、それぞれの頚椎は不完全なものも多く、形状が完全に残されているわけではありません。


  1.  
  2. Apatosaurus louisae :最後の3つの頚椎は不完全 
  3. Camarasaurus lentus (CM 11338):幼体 
  4. Mamenchisaurus hochuanensis (CCG V 20401):中央付近の頚椎は半分ほどと不完全
  5. Mamenchisaurus youngi :脊椎は18 
  6. Shunosaurus lii (IVPP V.9065 他):複数の標本有 
  7. Spinophorosaurus nigerensis :首は完全


 竜脚類の首が不完全な理由として、2つ示されています。  

 ひとつは、化石としての保存が不完全なこと。巨大サイズが故に、全てが素早く土砂におおわれたりして化石化することは稀なのです。  

 例えば竜脚類で最大長の首は、スーパーサウルスの推定15メートルですが、長さ1.4メートルの頚椎がひとつ見つかっているだけです。  

 もうひとつは、含気性構造のため、軽くてゆがみやすいというのがその理由です。同じ頚椎ながら、縦横比などが異なる化石が紹介されています。  

不完全で壊れた化石に基いているので、 竜脚類の首の姿勢や柔軟性についての仮説は、もっと軽く考えていいとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Michael P. Taylor (2015) Almost all known sauropod necks are incomplete and distorted. 
  4. PeerJ PrePrints 3:e1767
  5. https://dx.doi.org/10.7287/peerj.preprints.1418v1
----------  コメント(0)



 かつては、白亜紀前期のプシッタコサウリダエ(Psittacosauridae、科) は、ケラトプシア(角竜類)とされていました。

 白亜紀のネオケラトプシア(新角竜類)ほどは派生的ではなく、ジュラ紀の基盤的ケラトプシアであるインロング(Yinlong)やチャオヤングサウリダエ(Chaoyangsauridae)と、ネオケラトプシアの中間的な位置でした。

 しかし、近年では、アジアからやってきた北米最古の角竜(2014年12月)の系統図で紹介しているように、プシッタコサウルスは、ネオケラトプシア内の基盤的位置とされています。

 今回、この仮説をサポートするような新種が記載されています。

 河南省にある白亜紀後期の地層(Xiaguan Formation)で発見された基盤的ネオケラトプシアです。

 学名は、Mosaiceratops azumai(モザイケラトプス・アズマイ)で、属名の意味は、「モザイク状のケラトプシア(角竜)」。種小名は、福井恐竜博の東さんに献名しています。

 歯がない前上顎骨などはプシッタコサウリダエに似ており、基盤的ケラトプシアやプシッタコサウリダエ、基盤的ケオケラトプシアの特徴を、モザイク状に合わせ持つことから命名されています。

 プシッタコサウルスやモザイケラトプスが前上顎骨歯を持たず、これらの子孫にあたる基盤的ネオケラトプシアで再出現していることは、一度失われた特徴が、環境に適応して、再進化したと考えられます。 
  
 プシッタコサウリダエに似ているだけに、その系統的な位置についても言及されています。





Mosaiceratops azumai.jpg

 
  1.  今回、プシッタコサウリダエはカオヤングサウリダエより派生的とされ 、プシッタコサウリダエは、ケラトプシアの最も基盤的なグループではなくて、比較的派生的なクレードとされています。  

     今回示された系統図(Wenjie Zheng et al., 2015)では、2種のプシッタコサウルスは、ネオケラトプシアに位置づけられています。  
     しかし、図からもわかるように、ジュラ紀と白亜紀前期の間には化石が見つかっていない空白期間があり、さらなる発見が必要とされています。




  1. References:
  2.  
  3. Wenjie Zheng, Xingsheng Jin & Xing Xu (2015) 
  4. A psittacosaurid-like basal neoceratopsian from the Upper Cretaceous of central China and its implications for basal ceratopsian evolution. 
  5. Scientific Reports 5, Article number: 14190 
  6. doi:10.1038/srep14190
----------  コメント(0)



 真冬には一日中太陽が昇らず、逆に、真夏には太陽が沈まない北極圏からでも、恐竜化石の発見は珍しくはありません。

 アラスカ北部、最も高緯度の恐竜化石産地/アラスカ(2015年1月)で紹介しているプリンス・クリーク層(Prince Creek Formation)からは、これまでに、13種類以上の恐竜化石が見つかっており、そのうち、後に示すように、3つのタクソンが新種として記載されています。 

 マーストリヒチアン(約6900万年前)の地層で、極地方としては世界で最も多数の化石を産出する場所です。

 そこでは、エドモントサウルス属(Edmontosaurus sp.)の幼体が多数見つかっており、渡りをしなかったエドモントサウルス(2013年9月)で紹介しているように、極寒の冬でも渡りをしなかったようです。

 今回、そのプリンス・クリーク層で発見されたハドロサウリダエ(科)のエドモントサウリニ (亜科)の新種が記載されています。YouTube で発掘の様子ななどが紹介されています。

 4種目となる恐竜の学名は、Ugrunaaluk kuukpikensis で、発音は、"oo-GREW-nah-luk"で、日本語では、ウーグルナールク・クークピケンシスとします。

 体長は9メートルほど、近縁とされるエドモントサウルスとは異なり、眼窩後部ポケットを欠く比較的狭い後眼窩骨の頬骨突起を持つといった特徴があります。

 アラスカという極寒の環境で暮らしていたからでしょうか、同じララミディアでも、地域性があったようです。


 アラスカからの新種は、2006年に記載されたパキケファロサウリダエの Alaskacephale gangloffi(アラスカケファレ・ガングロフィ)と、セントロサウリネ(centrosaurine)の Pachyrhinosaurus perotorum (パキリノサウルス・ペロトラム、2012)、ティラノサウリネの anuqsaurus hoglundi (ナヌクサウルス・ホグルンディ、2014)です。  

 今回の新種の属名は、アラスカの原住民のイヌピアック(Iñupiaq)語で、"ancient grazer(太古のグレイザー)"の意味。同じ植物食でも、グレイザー(粗食選択)はブラウザー(良質選択)と異なり、食べられるものを無差別に刈り取って食べるタイプです。  

 骨格的に未成熟な標本からの記載ですが、他のハドロサウリダエの成長パターンを考慮して、解析されています。  

 系統解析からは、既に報告されているエドモントサウルス属の、 Edmontosaurus annectens (エドモントサウルス・アネクテンス)と E. regalis (エドモントサウルス・レガリス)からなるクレードの姉妹群とされています。    

 ウーグルナールクは、他のエドモントサウルスに見られる幼体の特徴は示さないとされています。 しかし、詳しくは、 E. annectensE. regalis の幼体など、さらなる標本の発見が必要とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Hirotsugu Mori, Patrick S. Druckenmiller, and Gregory M. Erickson (2015) 
  4. A new Arctic hadrosaurid from the Prince Creek Formation (lower Maastrichtian) of northern Alaska 
  5. Acta Palaeontologica Polonica (in press) 
  6. doi:http://dx.doi.org/10.4202/app.00152.2015
----------  コメント(0)



 恐竜はどんな色をしていたのか、古色(palaeo-colours)は再現できるのか、これは最も興味のあるテーマの一つです。

 初めての恐竜の全身の体色の再現としては、初の体全体の色の再現(2010年2月)で、Anchiornis huxleyi (アンキオルニス・ハックスレイ)の全身の羽毛の色について紹介しています。

 メラニンを作り出すメラノソーム化石の分布パターンから推定したものです。なお、アンキオルニスは、始祖鳥より古い時代の羽毛恐竜で、パラベス(Paraves)の系統ですが鳥類ではありません。

 一方、メラノソームとする化石は、細菌由来だとする説もあります。このあたり、メラノソームか微生物か/羽毛化石の微小体(2014年3月)で紹介しています。

 そもそも、メラニンやメラノソームは総称であり、いったい何が見つかっているのか、色素(有機物)や微小器官(タンパク質)そのものなのか、その痕跡(化石)なのか、はっきりしておくことが必要です。

 今回、アンキオルニスの新しい標本の羽毛化石から、確実なメラニン(ユーメラニン)そのものと、メラノソーム(ユーメラノソーム)の印象化石が見つかったとする報告があります。

 ほぼ細胞レベルでのイメージニングと化学分析であり、羽毛化石に、メラノソーム(ユーメラノソーム)とその中にあるメラニン(ユーメラニン)が保存されている確実な証拠だとされています。

 図は、ユーメラニンの赤外吸収スペクトルの比較(Lindgren, J. et al., 2015)。

 トサカ(forecrown)の羽毛のユーメラニンは、天然のユーメラニンに類似しており、色素の有機構造自体が残されていたことになります。 ただし、ポリマーなのか、吸収スペクトルはブロードで、細かい吸収からなる特徴がはっきり出ているわけではありませんね。

 もっとも、爬虫類と恐竜の皮膚の色(2014年1月)で紹介しているように、たとえ色素が残っていたとしても、実際の体色は複数の色素の組み合わせによって微妙に変化します。なので、最終的な体の色は、まだまだアートの世界ですね。

 今回見つかったのは、ユーメラニンとそれを作り出すユーメラノソームなので、アンキオルニスは黒褐色系の色を呈していたようですね。
 なお、鳥類からのユーメラニンは、甘粛鳥化石から、ユーメラニンそのものの証拠(2011年10月)で紹介しています。



IR_Anchiornis.jpg

 羽毛の色には、メラニンやカロチノイドなどが関与します。  

 メラニンは、動植物の体内で生成される色素(化学物質)の一種です。

 メラニンには、主に、黒褐色系のユーメラニン(eumelanin、真性メラニン)と、橙赤色系のフェオメラニン(pheomelanin、亜メラニン)があり、それぞれのメラニンを作り出す細胞内器官であるメラノソームは、ユーメラノソーム(eumelanosome)、フェオメラノソーム(pheomelanosome)です。  

 今回は、遼寧省にあるジュラ紀中期から後期にかけての地層(Tiaojishan Formation)で発見された新しい標本(YFGP-T5199)に残された14枚の羽毛化石を調べたもの。  

 電顕や飛行時間型質量分析(TOF-SIM)、顕微赤外分光などによる解析を行っています。  

 その結果、メラニン色素の一種で、黒色系のユーメラニン(真性メラニン)を見出し、そのサイズや形状、分布などは、細菌細胞とは異なり、微生物の分裂を示す連続的な鎖状態を示していないとされています。  

 また、ユーメラノソームは、棒状の微小体の印象型として残り、こちらは、ユーメララノソームそのものではなくて、残遺物化石(remnant)です。  

 さらに、羽毛ケラチンに類似した繊維状構造も観察されています。  ケラチンのタンパク質成分は検出されていませんが、ユーメラニンと、ミネラルの置換によるリン酸カルシウムからなる繊維状の微細組織が見出されています。  

 なお、今回のメラノソームは、細長い形状が特徴的とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Lindgren, J. et al., 2015 
  4. Molecular composition and ultrastructure of Jurassic paravian feathers. 
  5. Sci. Rep. 5, 13520; 
  6. doi: 10.1038/srep13520
----------  コメント(0)



カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

2016年6月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

アーカイブ


カテゴリ  ▼(広げる)▲(たたむ)