恐竜や鳥類の気嚢が話題になりますが、実は、私たちヒトにも似たような含気性構造があります。We are all air-heads(cosmos) で、Mathew Wedel が紹介しています。
"長い間、鳥類にある空気で満たされた含気性の骨構造は、体を軽くするためと思われてきたが、その進化の起源は、恐竜にあるらしい"、とあります。
ここで混同してはいけないのは、頭部にある空洞と、頭部よりうしろにある空洞(PSP)です。
ヒトの頭部にある含気性構造
ヒトにある含気性構造は、副鼻腔(sinuses)です。鼻の周りの頭蓋骨にはいくつもの空洞があるのです。しかし、副鼻腔のはっきりした機能はわかっていないそうです。
副鼻腔という頭部にある含気性構造は、哺乳類にもあるわけですが、恐竜で問題になるのは、頭部にある含気性構造ではなくて、PSP なのです。
問題は、頭部ではなくて、頭部より後ろのPSP
PSPといえば、プレイステーションポータブル・・・ではなくて、古生物の世界では、頭蓋より後ろ、脊椎や尾椎にある含気性骨格構造(Postcranial skeletal pneumaticity 、PSP)のこと。
PSPは、頭部にある含気性骨格構造と違って、呼吸システムに深くかかわっているのです。
そのPSPですが、長い恐竜の歴史のどのあたりで進化したのか、竜脚形類なのか、獣脚類や現生鳥類につながるシステムなのか、などいろいろと疑問があります。
竜脚形類にPSP
ADAM M. YATES らが、5つのタクサの基盤的竜脚形類について比較した論文を報告しています。新しい標本を解析し、含気性構造の起源、竜脚形類から竜脚類の変遷について探っています。
ドイツにある三畳紀後期の地層で発見された Plateosaurus engelhardti と、南アフリカの三畳紀後期-ジュラ紀前期のエリオット層で発見された Eucnemesaurus fortis, Aardonyx celestae, Antetonitrus ingenipes とまだ未命名のタクサです。
竜脚形類の骨の位一部から、含気性のfossae(フォッサ、骨にある窪みや空洞)やsubfossae (fossaの中にあるfossae )が確認されています。
図のAは、Plateosaurus engelhardti の頚椎(左から、C9、C10)と胴椎(D1)。スケールは、20センチ。
右のBは拡大で、スケールは5センチ。頚椎(C10)表面の含気性のfossae(pneumatic fossa 、pf ) と、内部ラミナ(internal lamina 、il)を示しています。 多くの人が見ていたと思いますが、こういう小さな窪みに、よく気づきますね。
哺乳類は横隔膜で肺を伸縮できますが、鳥類には横隔膜が無く、肺は比較的小さくて、その伸縮はできません。代わりに気嚢が伸縮し、効率的にガス交換を行います。
鳥類に見られるような、気嚢によって換気される伸縮しない肺(rigid non-compliant lungs)は、恐竜が誕生する前の、主竜類や恐竜形類で進化していたことを示唆しています。
下図は、竜脚形類の系統関係と、脊椎(尾椎は省略)で、黒い部分は、含気性のfossae 又は invasive infradiapophyseal subfossae です。
パンティドラコにはありますが、テコドントサウルスにはありません。また、プラテオサウルスは、1種のみに確認され他では見つかっていないそうです。竜脚類になると、黒い部分が増えてきます。
- References:
Yates, A.M., Wedel, M.J., and Bonnan, M.F. 2011.- The early evolution of postcranial skeletal pneumaticity in sauropodomorph dinosaurs.
- Acta Palaeontologica Polonica in press available online 07 Mar 2011
- doi: 10.4202/app.2010.0075