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 白亜紀末の鳥類以外の恐竜は、その多様性が減少しているところに隕石がトドメをさして絶滅したという説と、白亜紀末でも豊富で多様であり、絶滅は突然だったという説に二分されています。

 このあたり、白亜期後期の恐竜の多様性(2013年3月)などで紹介しています。

 今回、初めて、ベイズ分析を用いて、種の分化や絶滅について統計的にモデル解析した論文が報告されています。

 その結果、恐竜全体で、大量絶滅の数千年前から長期的な衰退傾向が見出されたとされています。IFL Scienceに図がありますが、種分化はジュラ紀中頃がピークのようです。


 3つの恐竜サブクレード(鳥盤類、竜脚形類、および獣脚類)で、種の形成速度が鈍化し、大量絶滅の前には、絶滅速度が上回ったとされています。獣脚類に比べて竜脚類の衰退傾向が速かったようです。  

 唯一の例外は、形態的に特殊化した植物食のハドロサウルス形類と、ケラトプシダエ(ケラトプス科)で、これらの仲間は、白亜紀後期にかけて、急速に多様化しました。  

 効率的に植物を処理できることが優位に働いたようですが、これらの絶滅は突然だったのでしょう。  

 結局、恐竜全体としては、新種を生み出す種分化の能力に衰えが見え、絶滅に対して脆弱になり、最終的に壊滅的なイベントから回復できなかったとされています。    

 なお、大型鳥盤類の多様性と異質性の減少/白亜紀後期の北米大陸(2014年8月)で紹介した論文では、ケラトプシダエとハドロサウロイデアの異質性は減少しています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Manabu Sakamoto, Michael J. Benton, and Chris Venditti (2016) 
  4. Dinosaurs in decline tens of millions of years before their final extinction. 
  5. Proceedings of the National Academy of Sciences (advance online publication) 
  6. doi:10.1073/pnas.1521478113
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 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といっても、ジュラ紀中期(約1億7000万年前)に現れた基盤的な仲間と、白亜紀後期の大型種では、サイズなどがずいぶん異なります。

 初のベイズ分析:ティラノサウロイデアの系統関係(2016年2月)で紹介していますが、白亜紀後期の大型種と、その兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の、Xiongguanlong (シオングアンロン)の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあるのです。

 今回、その論文と同じ著者であるエジンバラ大のステフェン・ブルサット(Stephen L. Brusatte )らにより、ティラノサウロイデアのギャップを埋める時期の新種が記載されています。Smithsonianmagが紹介しています。

 また、ブルサットは日経サイエンス7月号で、ティラノサウルスの系譜について語っています。

 ウズベキスタン、キジルクム砂漠での、1997年から2006年にかけての発掘調査で、白亜紀後期、チューロニアン(9000万-9200万年前)の地層(ビッセクティ層、Bissekty Formation)から、脳函などが見つかったもの。


 全長は3メートルほどと、現在のウマほどのサイズですが、特に脳函は保存状態がよく、内耳は後期の仲間の特徴を持っており、低周波音が良く聞き取れたとされています。

 この発達した脳と感度の良い聴力が、捕食者として大型に進化した理由の一つと考えられています。低い音が良く聞こえるといいのは、暗闇や茂みでも獲物の足跡を聞くことができたからでしょうか。

 しかし、なぜ耳がいいと大型したのか、アロサウルスなど、他の大型獣脚類ではどうなのか、エサとなる植物食恐竜の大型化が関与していないのか、いろいろと疑問もありますね。


 学名は、Timurlengia euotica(ティムルレンギア・エウオティカ)。意味は、"耳のいいティムール(Timurleng)"。ティムールは、14世紀の中央アジアにあったティムール朝の建国者です。

 図は、脳函だけからの系統関係(Stephen L. Brusatte et al., 2016)。甘粛州で発見されたシオングアンロンより基盤的な位置づけです。

 出現は、ティラノサウロイダエ(科)が分岐する、化石記録の乏しい白亜紀中頃(図のグレーゾーン)です。

 なお、シオングアンロンについては、新種のティラノサウロイデアとオルニトミモサウリア(2009年4月)で紹介しています。



 Timurlengia.jpg 


  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte, Alexander Averianov, Hans-Dieter Sues, Amy Muir, and Ian B. Butler (2016) 
  4. New tyrannosaur from the mid-Cretaceous of Uzbekistan clarifies evolution of giant body sizes and advanced senses in tyrant dinosaurs. 
  5. Proceedings of the National Academy of Sciences (advance online publication) 
  6. doi: 10.1073/pnas.1600140113
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 最古の恐竜化石産地のレビュー(2013年5月)や恐竜の起源(2014年6月)で、最初に恐竜が誕生したのは、三畳紀後期(カーニアン)のパンゲア大陸と紹介しました。   

 また、恐竜の出現は、以前考えられていたよりは緩やかで、三畳紀後期に恐竜が世界的に分布するようになったのは、地球規模の気候変動の後ではないかとされていました。

 今回、正確な放射性同位体年代測定により、恐竜の祖先にあたる恐竜形類の化石が含まれる地層年代は、以前考えられていたよりも、500万年から1000万年は新しく、カ?ニアン初期(三畳紀後期早期)とする論文が報告されています。

 ユタ大は、2億3600万年から2億3400万年前と伝えています。

 最初の恐竜化石が2億3100万年前の地層で見つかっていることから、祖先の恐竜形類から恐竜が出現したのは、500万年たらずと以外に早く、かつていわれていたように、生態系の組成の根本的な変化と関連していたわけではないとされています。


 恐竜は2億年以上にわたって生態系の主要な構成要素でした。恐竜やその祖先の恐竜形類の出現には、幾つかのシナリオがありますが、正確な地質年代測定はなかったそうです。  

 今回、アルゼンチンにある(Chañares Formation)について、高精度の熱イオン化質量分析法(CA-TIMS)を用い、凝灰岩に含まれるジルコン中のU-Pb比により年代測定を行ったもの。    


 そこは、まさに最初の恐竜の祖先である初期の恐竜形類の典型的な集合体化石が見つかっている場所です。  

 その結果、以前考えられていたよりも500万から1000万年は新しい、カ?ニアン初期(三畳紀後期早期)とわかったとしています。  ちなみに、カーニアンは、2億3700万年前から2億2700万年前の1000万年の間です。  

 さらに、古生態学的データと組み合わせることで、恐竜の祖先と最初の恐竜の集合体の間には、ほとんど組成の違いがなく、500万年未満という短い間に、恐竜は進化したと考えられています。   

 最初の恐竜は、かつていわれていたように、生態系の組成の根本的な変化と関連して、進化したわけではないとされています。    

 そして、登場後、三畳紀からジュラ紀の境界あたりにかけて徐々に、高緯度陸域生態系を支配していったとされています。



  1. References:
  2.  
  3. C. Marsicano et al. 2015 
  4. The precise temporal calibration of dinosaur origins. 
  5. Proceedings of the National Academy of Sciences. Published online December 7, 2015. 
  6. doi: 10.1073/pnas.1512541112.
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 三畳紀後期といえば、恐竜が台頭し始めた黎明期です。 

 この時代の恐竜を語るには、大きな未解決の問題がありました。

 なぜか、低緯度地域では恐竜がまれで、種類も少なかったということです。

 今回、当時パンゲア大陸の赤道付近だった北米西部の恐竜産出地層のデータを解析し、当時の古環境を復元し、その理由を説明した論文が報告されています。  

 図は、三畳紀後期のパンゲア大陸と恐竜の分布図(Jessica H. Whiteside et al., 2015)。 

 黒い恐竜は通常みられた恐竜のクレードで、灰色はまれなクレードです。確かに、赤道付近での恐竜はまれですね。
 
 パンゲア大陸は、およそ3億年前ごろに形成され、2億年前頃に分裂を開始します。

 赤道付近には広大な大陸が広がっていながら、図に示すように、低緯度地域には、コエロフィシスのような小型獣脚類がいた程度で、ノリアン中期以降になっても、高緯度では既に支配的だった竜脚形類は、低緯度にはいなかったのです。

 これは、三畳紀後期(期間は3570万年)をとおして、最初の恐竜が誕生してから3000万年、高緯度地域で恐竜が豊富になってからも、1000万から1500万年は続いたとされています。

 今回の研究から、三畳紀後期の熱帯地域では、雨季や干ばつ、山火事など、極端な気候変動が続いたとされています。

 そのため、竜脚形類など、大量の植物を必要とする高代謝の恐竜は、劇的に変化する環境に適応できなかったというのです。 

 恐竜が繁栄したのは、直立歩行といった、既に祖先が獲得していた外見的な理由というより、高代謝といった内面的な理由なんでしょうが、代謝効率の高さが、かえってアダになったようです。

 環境が激変した時には、代謝率を下げて、じっと耐えている方が生き延びられそうですね。その点では、恒温動物は不利なのかもしれません。



Pangea_map.jpg


 最初期の確実な恐竜化石は、三畳紀後期(カーニアン)、パンゲア大陸の南西部からです。このあたり、恐竜の起源(2014年6月)で、総説を紹介しています。  

 今回の研究は、中生代初期の陸域生態系における気候と関連する、恐竜を含む広範な脊椎動物化石記録を含む動物相の変化についての、初めてのマルチプロキシな研究とされています。 多くの指標を解析して、精密に当時の古環境を復元したということなのでしょう。  

 分析したのは、花粉や山火事、有機炭素同位体、そして大気中の二酸化炭素分圧です。  

 その結果、二酸化炭素分圧が増加し、山火事が広がっていた環境であり、同位体比(δ13Corg)と花粉化石の生態系には、大規模で頻繁で、しかも綿密に関連した変動が見られたとされています。  

 このような、三畳紀後期までの極端に変動する気候条件下でも、偽鰐類(pseudosuchia)なら存続することができたとされています。  

 しかし、大型で成長が速く、より多くの食料を必要とした高代謝(tachymetabolic)だった植物食の恐竜は、不安定な環境には適応できなかったとされています。


  1. References:
  2.  
  3. Jessica H. Whiteside, Sofie Lindström, Randall B. Irmis, Ian J. Glasspool, Morgan F. Schaller, Maria Dunlavey, Sterling J. Nesbitt, Nathan D. Smith, and Alan H. Turner (2015) 
  4. Extreme ecosystem instability suppressed tropical dinosaur dominance for 30 million years. 
  5. PNAS (advance online publication) 
  6. doi:10.1073/pnas.1505252112
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カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

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