Scientific Reportsの最新ニュース

 恐竜の性別を判定する方法発見(2005年6月)で紹介していますが、恐竜の雌雄を骨髄骨(medullary bone)で識別する方法が知られています。

 骨髄骨は、鳥類のメスが産卵時にだけ持つ骨で、卵殻を作るため必要な大量のカルシウムを、ヒドロキシアパタイトとして一時貯蔵する組織です。

 この有無で、妊娠したメスか、それとも、オスか妊娠していないメスかがわかります。

 一方、鳥類で見つかった一部の骨疾患が骨髄骨に似ているため、今回、骨髄骨検出の精度を向上させた論文が報告されています。

 骨髄骨に特有のケラタン硫酸(Keratan sulfate)に注目したもの。化学的、そしてケラタン硫酸に特異的な抗体反応を利用して、免疫学的にも検出しています。

 その結果、T.rex の標本(MOR 1125)やダチョウなどで、骨髄骨が検出され、現生鳥類と非鳥類型恐竜において、骨髄骨が進化的に共通の祖先を持つ相同性が確認されたとされています。

 なお、翼竜の幼体と成体の両方の下顎で骨髄骨が見られ、性別の識別には使えないとの報告があります。  

 しかし、骨髄骨は長骨に存在するものであり、翼竜での論文については、否定しています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Mary Higby Schweitzer, Wenxia Zheng, Lindsay Zanno, Sarah Werning & Toshie Sugiyama (2016) 
  4. Chemistry supports the identification of gender-specific reproductive tissue in Tyrannosaurus rex. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 23099 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep23099
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 小型獣脚類が泳いだ跡/雲南省(2015年9月)などで紹介しているように、恐竜の泳いだ跡とされる報告はいくつかあります。

 前足だけの、指の先で水底を引っ掻いた痕だけが残された足跡です。

 しかし、それらは、アンダートラックであったり、深く沈んだ前足だけが残されだけと、足跡がつけられた時の条件にもよります。

 今回、竜脚類の後ろ足の爪痕だけが残された足跡化石が報告されています。しかし、それらは歩行跡で、泳いだ時につけられた引っ掻いた跡ではないとされています。

 今回の足跡からは、竜脚類が泳いだとする証拠は得られていないのですが、これは、竜脚類が泳がなかったというわけではないとされています。

 
 中国北部・甘粛省にある白亜紀後期の地層(Hekou Group )で発見されたもの。  

 柔らかい地面を歩いた時の足跡で、水中を浮遊した時や泳いだ時につけられた足跡ではないとされています。  軟らかい泥シルトの上を歩いたため、その爪の先が深く入り、跡として残されたとしています。  

 別の竜脚類の足跡も残されているのですが、それらは前後の足跡が残されており、より前の地面が硬かった時に残されたものとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Lida Xing, Daqing Li, Peter L. Falkingham, Martin G. Lockley, Michael J. Benton, Hendrik Klein, Jianping Zhang, Hao Ran, W. Scott Persons IV & Hui Dai (2016) 
  4. Digit-only sauropod pes trackways from China - evidence of swimming or a preservational phenomenon? 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 21138 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep21138
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 福井にある白亜紀前期の地層(北谷層)で発見された新種の獣脚類が記載され、Fukuivenator paradoxus(フクイべナートル・パラドクサス)と命名されています。

 The Theropod Database Blog が指骨を修正するコメントを紹介しています。
 
 日本の新種恐竜で紹介していますが、日本では7種めの新種で、福井産の新種としては5種目になります。

 タイプ標本(FPDM-V8461)は、おそらく亜成体とされ、十分には成長しておらず、推定全長は245cm、体重は25.0kgとされています。

 属名は「福井のハンター」の意味。種小名は、原始的な特徴と派生的な特徴を組み合わせて持つことから。

 胃の内容物などの直接的な証拠はないのですが、円錐で鋸歯の無い前上顎歯、対象的な上顎歯、異歯性(heterodonty)、10より多い頚椎数は獣脚類の植物食と一致し、少なくとも雑食性だったとされています。

 図は骨格図(Azumae et al., 2016)。見つかっている部分は、濃い灰色です。 頭部長は234mmとされていますから、スケールバーの長さ(50mm)は間違いかも。
 

Fukuivenator paradoxus.jpg

 CTスキャンで内耳の構造も確認され、その形態は、鳥類と非鳥類型恐竜の中間とされています。  

 系統的には、コエルロサウリアの、基盤的で分岐した位置のマニラプトラとされています。コンプソグナシダエ(Compsognathidae)やオルニトミモサウリアなどど多分岐になっています。  

 しかし、基盤的な位置しながら、より進化したドロマエオサウリダエやパラヴェス(Paraves)と同じ派生的な特徴も持っています。  

 今回の発見は、コエルロサウリアの系統内での、モザイク進化とホモプラシー(独立に進化して同じ形質を獲得した現象)を強調するとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Yoichi Azuma, Xing Xu, Masateru Shibata, Soichiro Kawabe, Kazunori Miyata & Takuya Imai (2016) 
  4. A bizarre theropod from the Early Cretaceous of Japan highlighting mosaic evolution among coelurosaurians. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 20478 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep20478
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 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といえば、ジュラ紀の小型種から、白亜紀後期の大型種まで、1億年にもわたる多様なクレードです。

 今回、その系統関係について再検討した論文が報告されています。

 新たに発見されたタクソンを加えた28種と4種の外群からの366の形質(解剖学的特徴)について、従来の最大節約法の他に、初めてベイズ(Bayesian)分析を行ったもの。

 なお、ナノティラヌス(Nanotyrannus lancensis)については、著者らが、T.rex の幼体で無効名という論文を出していることもあり、データセットには含まれてはいません。

 また、最大節約法は、形質の変化が最も少なくなる関係を求める方法ですが、ベイズ分析は、単系統群の出現頻度である事後確率(posterior probability)が最大となる関係を求めます。

 その結果ですが、最大節約法とベイズ分析を比較すると、2つの結果は非常に類似したコンセンサスツリーとなっています。  幾つかの相違点はありますが、両方のツリーの全体的な構造は同じです。

 今回の結果から、巨大なボディープランは、断片的に進化したことを示し、また、議論されているように、北米大陸西部での、南北で明確な種の区別があるわけではないとされています。

 さらに、おそらく、T.rex はアジアから北米へ移ってきたとしています。 

 図は、ベイズ分析の結果に地質年代をあてはめたもの(Stephen L. Brusatte & Thomas D. Car, 2016)。拡大図はこちら

 分岐点(ノード)の数字は、それぞれのクレードの事後確率(%、単系統群の出現頻度)を示しています。

 最節約法と比較すると、基盤的な位置などで、多分岐が少ないですね。最も基盤的(最古)なのは、単独でグアンロン(Guanlong)です。

 後で述べますが、Xiongguanlong と白亜紀後期の大型種の間には、化石が見つかっていない長いブランクがあります。


 srep20252-f2.jpg

 ベイズ分析は、分子系統学的研究では標準で、より広範な形態学的研究において使用されるようになっているそうです。  

 ティラノサウロイデアの進化や生物地理学的分布を理解するうえで、化石証拠が欠けていることによる3つのバイアスをあげています。  

 そのひとつは、白亜紀後期の大型種のクレードと、そのボティプランの兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の姉妹群、Xiongguanlong の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあることです。  

 2つめは、アジアの大型ティラノサウロイデアの多様性が過小評価されていること。特に、カンパニアンの化石発見が期待されています。  

 そして、3つめは、北米大陸東部(アパラチア)について、ほとんど知られていないことです。



  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte & Thomas D. Carr (2016) 
  4. The phylogeny and evolutionary history of tyrannosauroid dinosaurs. Scientific Reports 6, Article number: 20252 (2016) 
  5. doi:10.1038/srep20252
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 足が長いほうが速く走れるというのは、単純な法則です。

 足の長さといっても、現生動物では、大腿骨の長さはほとんど関係がなく、膝から下の下肢が長い動物は速く走れるとされています。 

 そして、獣脚類の場合、図に示すように、小型で体重が軽いほど、下肢は長くなります(W. Scott Persons IV, et al., 2016 )。

 図で、Aは遠縁のタクサ、Bは近縁、Cは同一タクサでの成長段階の違いです。いずれもも右の小型のほうが、下肢が長めです。



srep19828-f1.jpg

 しかし、今回紹介する獣脚類の走行性に関する論文では、 これは体重によるアロメトリック(allometric、非比例)な影響であって、必ずしも、走行性が高いわけではないと、報告されています。

 そこで、アロメトリックな効果を排除するため、体重を考慮した指数が用いられています。

 今回の指標では、同じ下肢のプロポーションなら、体重が重いほど、走行性は高くなります。

 そのせいもあるのか、比較的小型の獣脚類の走行性能は低く、ティラノサウリロイデア(上科)のような大型獣脚類では、高くなっています。 

  アルバータ大は、T.rex はライオンで、ナノティラヌスはチーター、と紹介しています。しかし、実際の速度にはボディサイズがからむので、最高速度そのものを示しているわけではありません。


 53種の獣脚類について、実際の下肢長と、大腿骨(体重)から予測される下肢長との比率を調べたもの。成長に伴う変化についても考察されています。 

 その結果、初期の獣脚類は遅く、獣脚類は、時間をかけて、走ることに適応していったとされています。

 一方、進化したティラノサウロイデアは速く、また、T.rex とナノティラヌスの比較では、走行性の適応に大きな差があり、ナノティラヌスの種としての有効性と、T.rex とは異なる生態系に住んでいたことが示唆されています。


 獣脚類の四肢のプロポーションに関しては、体重のアロメトリックな効果が問題となります。  体重増に伴い、場所によって、プロポーションの異なる成長が見られるのです。

 このアロメトリックな影響と走行適応圧は競合し、四肢の形態に反対の影響を与えるのです。   

 例えば、走行性の進化圧を受けている系統であっても、同時に、体重増加と走行性圧を超えるアロメトリックな選択圧を受けていれば、四肢プロポーションには変化がみられないか、下肢の割合 はあえて小さくなります。  

 逆に、体重が減少する系統では、下肢の割合が大きくなりますが、それは、走行性志向の選択圧ではなくて、単にアロメトリックな圧から開放されただけなのです。

 
 そこで、今回は、走行性の指標として、走行性肢比率(CLP、Cursorial-limb-proportion)スコアを算出しています。  

 CLP = (真の下肢長/予測下肢長 - 1) ×100 で、真の下肢長と、大腿骨(体重)から予測された下肢長の百分率比の差です。 

 大腿骨(体重)から予測された下肢長( l )は、 l = 4.178 × f ^ 0.8371 で示されます。f  は、大腿骨長です。一般的に、大腿骨の長さは体重と相関するため、体重の指標として用いられています。

 また、 f ^ 0.8371 なので、同じ下肢長/大腿骨比の場合、大きくなるほど、CLPスコアは大きくなります。
 
 具体的に、下の表に示すように、同じプロポーションの小型種と大型種で、走行性をシミュレーションしてみました。

 小型種、大型種で、プロポーション(大腿骨長/下肢長(実際)の比率)は同じですが、走行性は大型種が高くなります。



 
 
小型種
大型種
大腿骨長
20.0
100.0
下肢長(実際)
50.0
250.0
下肢長(計算)
51.3
197.3
走行性
-2.5
26.7
 

 
 また、以下に論文で計算されたCLPスコアの一部を示します。T.rex の場合、その体重より予測された下肢長より実際は 11.5%長く、スコアが高いほど、速く走ることに適応していたというのです。

 


  1. CLP スコア:
  2.  
  3. Sinornithoides youngi:40.6 
  4. Nanotyrannus:35.8,32.7(2つの標本から) 
  5. Sinosauropteryx prima:17.8 
  6. Tarbosaurus baatar:14.2 
  7. T.rex:11.5 
  8. Troodon formosus:7.6 
  9. Deinonychus antirrhopus:-2.2 
  10. Allosaurus fragilis:-7.9 
  11. Velociraptor mongoliensis:-13.2 
  12. Sinornithosaurus millenii:-20.4
 


 同じ獣脚類種の中では、複数の標本や成長段階によらず、CLPスコアは一貫性のあるものとされています。 

  初期の獣脚類のCLPスコアは低く、コエルロサウリアであるティラノサウロイデアやコンプソグナシダエ(科)になると、高いとされています。    

 デイノニコサウリアの系統では、トロオドンチダエは比較的高く、ヴェロキラプトルやデイノニクスを含む多くのドロマエオサウリアのスコアは低いとされています。  

 これは、全てのドロマエオサウリアが、特に走行性に適していたわけではないとされています。  

 興味深いのは、成長に伴うCLPスコアの変化です。ティラノサウロイデアの中でも、アルバートサウルスやゴルゴサウルスでは、幼体のCLPスコアは成体のスコアの範囲内とされています。  

 一方、ナノティラヌスのスコアは、T.rexの範囲外です。よって、ナノティラヌスの長く伸びた足は、T.rex の幼体というわけではなく、両種は形態的に異なるとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. W. Scott Persons IV & Philip J. Currie (2016) 
  4. An approach to scoring cursorial limb proportions in carnivorous dinosaurs and an attempt to account for allometry. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 19828 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep19828
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 遼寧省にある白亜紀前期の熱河生物相からは、さまざまな鳥類の化石が見つかっています。

 今回、アプチアンの九仏堂層(Jiufotang Formation)で発見された基盤的鳥類が記載され、Chongmingia zhengi (チョングミンギア・チェンギ)と命名されています。

 チョングミンギアの叉骨は固く、その結果として、飛行にはより大きな力が必要だったとされています。

 一方、長い前肢と、上腕骨にある大きな三角筋稜(deltopectoral crest)からすると、十分な力を発揮できたと考えられています。

 三角筋稜は、肩の筋肉を上腕の骨に固定するための突起です。

 チョングミンギアには、モザイク状のユニークな特徴の組み合わせが見られることから、鳥類が力強い飛行を試みた初期進化の段階では、さまざまな進化上の実験が試されたことを示すとされています。

 胃石も見つかっており、基盤的鳥類では、植物食が一般的だったとされています。

 ただし、この時代、翼竜や、鳥類を捕食する非鳥類型獣脚類との競争に直面しており、植物食の鳥類の生態的な競争力は弱かったと考えられています。

 系統関係については、基盤的アヴィアラエ(Avialae) の位置づけですが、2つの異なるデータマトリックスを使っての解析から、異なる位置が示されています。

 図は、系統関係(Min Wang et al., 2016) 。

 コエルロサウリアのデータマトリックスを使うと、鳥胸類(Ornithothoraces)の姉妹群の基盤的なアヴィアラエ( Avialae)とされ (p2)、中生代の鳥類のデータマトリックスを使うと、始祖鳥を除いて、最も基盤的なアヴィアラエとされています(p1) 。




 srep19700-f7.jpg




  1. References:
  2.  
  3. Min Wang, Xiaoli Wang, Yan Wang & Zhonghe Zhou (2016) 
  4. A new basal bird from China with implications for morphological diversity in early birds. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 19700 (2016) むdoi:10.1038/srep19700
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T.rex が長寿な3つの理由

 T.rex は、現生鳥類や爬虫類の平均寿命より長生きとされ、その生存率などの解析から、長寿の理由について考察した論文が報告されています。 

 そこでは、18歳で性的に成熟し繁殖可能となり、最大寿命は28歳とされています。

 死亡率のパターンは、18世紀のヒトに似ているのですが、それは偶然で、その長寿戦略は、ヒトとは異なり、鳥類に似ているとされています。 

 T.rex が長生きなのは、遅い性的成熟、大型ボティサイズ、速い成長によるものではないかとされています。 

  図は、生存率(Byung Mook Weo, 2016) 。横軸は、最大年齢を1とした相対年齢(Reduced age)で、縦軸は生まれた時を1とした生存率の対数です。

 生まれてすぐの生存率が低いため、平均寿命(50%生存率)は極めて短く、また、最大の28歳まで生き延びるのも1%ほどと極めてわずかです。

srep19554-f1.jpg

 次の図は死亡率。T.rex の死亡率は、相対年齢比0.2(実年齢5-6歳)あたりが最も低く、そこから増加しています。

 このパターンは、18世紀のヒト(Sweden cohort)と似ています。ただし、この一致は数学的な偶然の一致とされています。



srep19554-f3.jpg
 
 
 T.rex が長寿だったのは、遅い性的成熟、大型ボティサイズ、速い成長によるものではないかとされています。

 T.rex は、18歳で性的に成熟し、28歳の最大寿命からすると、相対年齢比は0.6の頃です。最大寿命になる前の、相対年齢比 0.6-1のあたりで老化するとされています。  

 遅めの性成熟は、ダチョウや猛禽類といった大型鳥類に似ているとされています。  

 また、相対成長スケーリングの法則(allometric scaling law )より、大型ほど長寿命とされています。平均鳥類の平均寿命(15.6年)より長生きなのは、大型ボディサイズのためと考えられています。  

 さらに、速い成長は、幼い時に捕食されるのを避けるメリットがあったとされています。
 


  1. References:
  2.  
  3. Byung Mook Weon (2016) Tyrannosaurs as long-lived species. 
  4. Scientific Reports 6, Article number: 19554 (2016) doi:10.1038/srep19554
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 アルゼンチン・メンドーサにある白亜紀後期の地層で発見された巨大なティタノサウリアが記載されています。

 巨大恐竜といえば、かつては、大腿骨などのごく一部の骨から全長や体重を推定し、その大きさを競っていたものです。

 今回、見つかっている上腕骨は1.76メートルと、ティタノサウリアの中でも最大で、史上最大の脊椎動物の一つとされてはいますが、論文中に推定全長の記載はないようです。ニュースでは、25から28メートルとされています。

 むしろ、その大きさを競うというより、特徴的な足(中足骨や指骨)の進化などについて考察されています。

 学名は、Notocolossus gonzalezparejasi (ノトコロッサス・ゴンザレツパレジャシ)で、属名の意味は、ゴンドワナからの巨大恐竜にちなみ、「南のコロッサス(巨人、巨像)」です。ティタノサウリアとしては珍しく、後ろ足先が完全に残されているのが特徴です。

 また、コンパクトな中足骨は、重い体重を支えるためだったのではないかとされています。また、指骨は減少し、8つしかありません。

 図は、発見場所と、発見された部分と全身の骨格図(Bernardo J. González Riga et al., 2016)。 拡大図

 ホロタイプ(UNCUYO-LD 301)は、薄緑色で、関連標本はオレンジ色で示されています。

Notocolossus.jpg



 系統的には、ティタノサウリアの派生的なクレード、リソストロティア(Lithostrotia)で、パタゴニアのティタノサウルス、ドレッドノータス(Dreadnoughtus)と姉妹群とされています。    

 そもそも、南米のリソストリアは巨大で、上腕骨の長さは、ドレッドノータスやフタロンコサウルス(Futalognkosaurus)では上腕骨はそれぞれ1.6メートルと1.56メートルです(一覧表)。

 そのなかでも、ノトコロッサスの上腕骨は1.76メートルと最大です。

 後ろ足は、竜脚類やティタノサウリアの中でもユニークとされています。中足骨は、コンパクトで短く、ほぼ同じ長さで、重い体重を支えるためだったのではないかとされています。  

 派生したティタノサウリアでは、竜脚類の中では 最も指骨の数が減少し、最少になっていくのですが、ノトコロッサスでは、第1指からの指骨の数は、2-2-2-2-0の合計8つです。  

 ちなみに、アパトサウルスでは、2-3-4-2-1の13あります。



  1. References:
  2.  
  3. Bernardo J. González Riga, Matthew C. Lamanna, Leonardo D. Ortiz David, Jorge O. Calvo & Juan P. Coria (2016) 
  4. A gigantic new dinosaur from Argentina and the evolution of the sauropod hind foot. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 19165 
  6. doi:10.1038/srep19165
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大型獣脚類が求愛した痕

 獣脚類と鳥類とは類似しているとされていますが、骨格はともかく、その行動については、不確かな部分があります。

 今回、ロックレイらが、大型獣脚類による地面を引っ掻いた痕について報告しています。

 広い範囲に広がっており、地上に巣を作る現生鳥類にみられる巣引っ掻きディスプレイ(nest scrape display)と一致するとされています。

 このことから、大型恐竜が繁殖期に求愛行動のディスプレイとして引っ掻いた、ディスプレイ場所(display arenas)又は集団求愛場(leks)の証拠とされています。

 これらの痕は、大型恐竜の生痕化石としては、未知のカテゴリーとされていますが、直径2メートルにも及ぶ大きな擦り痕は、コロラド州にある白亜紀のサイトで豊富に見つかるそうです。

 一部の痕は、Ostendichnus bilobatusとして、命名されています。属名の"Ostend "は、ラテン語のディスプレイの意味。

 なお、単なる穴掘り、テリトリー争いや水やエサを求めて引っ掻いたりする場合などが考えられますが、サイズや深さ、分布から、それらとは異なると考察されています。




  1. References:
  2.  
  3. Martin G. Lockley, Richard T. McCrea, Lisa G. Buckley, Jong Deock Lim, Neffra A. Matthews, Brent H. Breithaupt, Karen J. Houck, Gerard D. Gierliński, Dawid Surmik, Kyung Soo Kim, Lida Xing, Dal Yong Kong, Ken Cart, Jason Martin & Glade Hadden (2016) 
  4. Theropod courtship: large scale physical evidence of display arenas and avian-like scrape ceremony behaviour by Cretaceous dinosaurs. 
  5. Sci. Rep. 6, 18952 
  6. doi: 10.1038/srep18952 (2016).
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 かつては、白亜紀前期のプシッタコサウリダエ(Psittacosauridae、科) は、ケラトプシア(角竜類)とされていました。

 白亜紀のネオケラトプシア(新角竜類)ほどは派生的ではなく、ジュラ紀の基盤的ケラトプシアであるインロング(Yinlong)やチャオヤングサウリダエ(Chaoyangsauridae)と、ネオケラトプシアの中間的な位置でした。

 しかし、近年では、アジアからやってきた北米最古の角竜(2014年12月)の系統図で紹介しているように、プシッタコサウルスは、ネオケラトプシア内の基盤的位置とされています。

 今回、この仮説をサポートするような新種が記載されています。

 河南省にある白亜紀後期の地層(Xiaguan Formation)で発見された基盤的ネオケラトプシアです。

 学名は、Mosaiceratops azumai(モザイケラトプス・アズマイ)で、属名の意味は、「モザイク状のケラトプシア(角竜)」。種小名は、福井恐竜博の東さんに献名しています。

 歯がない前上顎骨などはプシッタコサウリダエに似ており、基盤的ケラトプシアやプシッタコサウリダエ、基盤的ケオケラトプシアの特徴を、モザイク状に合わせ持つことから命名されています。

 プシッタコサウルスやモザイケラトプスが前上顎骨歯を持たず、これらの子孫にあたる基盤的ネオケラトプシアで再出現していることは、一度失われた特徴が、環境に適応して、再進化したと考えられます。 
  
 プシッタコサウリダエに似ているだけに、その系統的な位置についても言及されています。





Mosaiceratops azumai.jpg

 
  1.  今回、プシッタコサウリダエはカオヤングサウリダエより派生的とされ 、プシッタコサウリダエは、ケラトプシアの最も基盤的なグループではなくて、比較的派生的なクレードとされています。  

     今回示された系統図(Wenjie Zheng et al., 2015)では、2種のプシッタコサウルスは、ネオケラトプシアに位置づけられています。  
     しかし、図からもわかるように、ジュラ紀と白亜紀前期の間には化石が見つかっていない空白期間があり、さらなる発見が必要とされています。




  1. References:
  2.  
  3. Wenjie Zheng, Xingsheng Jin & Xing Xu (2015) 
  4. A psittacosaurid-like basal neoceratopsian from the Upper Cretaceous of central China and its implications for basal ceratopsian evolution. 
  5. Scientific Reports 5, Article number: 14190 
  6. doi:10.1038/srep14190
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 恐竜はどんな色をしていたのか、古色(palaeo-colours)は再現できるのか、これは最も興味のあるテーマの一つです。

 初めての恐竜の全身の体色の再現としては、初の体全体の色の再現(2010年2月)で、Anchiornis huxleyi (アンキオルニス・ハックスレイ)の全身の羽毛の色について紹介しています。

 メラニンを作り出すメラノソーム化石の分布パターンから推定したものです。なお、アンキオルニスは、始祖鳥より古い時代の羽毛恐竜で、パラベス(Paraves)の系統ですが鳥類ではありません。

 一方、メラノソームとする化石は、細菌由来だとする説もあります。このあたり、メラノソームか微生物か/羽毛化石の微小体(2014年3月)で紹介しています。

 そもそも、メラニンやメラノソームは総称であり、いったい何が見つかっているのか、色素(有機物)や微小器官(タンパク質)そのものなのか、その痕跡(化石)なのか、はっきりしておくことが必要です。

 今回、アンキオルニスの新しい標本の羽毛化石から、確実なメラニン(ユーメラニン)そのものと、メラノソーム(ユーメラノソーム)の印象化石が見つかったとする報告があります。

 ほぼ細胞レベルでのイメージニングと化学分析であり、羽毛化石に、メラノソーム(ユーメラノソーム)とその中にあるメラニン(ユーメラニン)が保存されている確実な証拠だとされています。

 図は、ユーメラニンの赤外吸収スペクトルの比較(Lindgren, J. et al., 2015)。

 トサカ(forecrown)の羽毛のユーメラニンは、天然のユーメラニンに類似しており、色素の有機構造自体が残されていたことになります。 ただし、ポリマーなのか、吸収スペクトルはブロードで、細かい吸収からなる特徴がはっきり出ているわけではありませんね。

 もっとも、爬虫類と恐竜の皮膚の色(2014年1月)で紹介しているように、たとえ色素が残っていたとしても、実際の体色は複数の色素の組み合わせによって微妙に変化します。なので、最終的な体の色は、まだまだアートの世界ですね。

 今回見つかったのは、ユーメラニンとそれを作り出すユーメラノソームなので、アンキオルニスは黒褐色系の色を呈していたようですね。
 なお、鳥類からのユーメラニンは、甘粛鳥化石から、ユーメラニンそのものの証拠(2011年10月)で紹介しています。



IR_Anchiornis.jpg

 羽毛の色には、メラニンやカロチノイドなどが関与します。  

 メラニンは、動植物の体内で生成される色素(化学物質)の一種です。

 メラニンには、主に、黒褐色系のユーメラニン(eumelanin、真性メラニン)と、橙赤色系のフェオメラニン(pheomelanin、亜メラニン)があり、それぞれのメラニンを作り出す細胞内器官であるメラノソームは、ユーメラノソーム(eumelanosome)、フェオメラノソーム(pheomelanosome)です。  

 今回は、遼寧省にあるジュラ紀中期から後期にかけての地層(Tiaojishan Formation)で発見された新しい標本(YFGP-T5199)に残された14枚の羽毛化石を調べたもの。  

 電顕や飛行時間型質量分析(TOF-SIM)、顕微赤外分光などによる解析を行っています。  

 その結果、メラニン色素の一種で、黒色系のユーメラニン(真性メラニン)を見出し、そのサイズや形状、分布などは、細菌細胞とは異なり、微生物の分裂を示す連続的な鎖状態を示していないとされています。  

 また、ユーメラノソームは、棒状の微小体の印象型として残り、こちらは、ユーメララノソームそのものではなくて、残遺物化石(remnant)です。  

 さらに、羽毛ケラチンに類似した繊維状構造も観察されています。  ケラチンのタンパク質成分は検出されていませんが、ユーメラニンと、ミネラルの置換によるリン酸カルシウムからなる繊維状の微細組織が見出されています。  

 なお、今回のメラノソームは、細長い形状が特徴的とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Lindgren, J. et al., 2015 
  4. Molecular composition and ultrastructure of Jurassic paravian feathers. 
  5. Sci. Rep. 5, 13520; 
  6. doi: 10.1038/srep13520
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 中国南部、江西省にある白亜紀後期の南雄層(Nanxiong Formation)は、世界で最も多様なオヴィラプトロサウリアの化石を産出します。

 今回、6属めとなる新種が記載され、Huanansaurus ganzhouensis(フアナンサウルス・ガンジョウエンシス)と命名されています。北大(pdf)が紹介しています。

 オヴィラプトロサウリアのうち、派生的な系統は、オヴィラプトリダエ(Oviraptoridae、オヴィラプトル科)と、カエナグナシダエ(Caenagnathidae、カエナグナトゥス科)の2系統に大別されますが、この層のオヴィラプトロサウリアは、全てオヴィラプトリダエです。

 論文では、全部で19属のオヴィラプトリダエが紹介されていますが、そのうち、6属が南雄層産になります。

 この地域に、これだけ多様なオヴィラプトロサウリアがいたことから、肉食と植物食、 5種類のオヴィラプトロサウリアが共存/江西省南雄層(2013年11月)で紹介したように、植物食系や肉食系と、その食性を変化させることで、それぞれのニッチェ(生態的地位)を占めていたと考えられています。


 系統的には、オヴィラプトリナエ(Oviraptorinae、亜科)で、モンゴルのシチパチ(Citipati osmolskae)に近縁で、姉妹群とされています。南雄層のオヴィラプトリダエは、3つのクレードからなります。

 それは、基盤的オヴィラプトリダエの Nankangia jiangxiensis、オヴィラプトリナエ(Oviraptorinae、亜科)として、今回の Huanansaurus ganzhouensisBanji long、そして、インゲニイナエ(Ingeniinae、亜科)の Shixinggia oblitaJiangxisaurus ganzhouensisGanzhousaurus nankangensis です。




  1. References:
  2.  
  3. Junchang Lü, Hanyong Pu, Yoshitsugu Kobayashi, Li Xu, Huali Chang, Yuhua Shang, Di Liu, Yuong-Nam Lee, Martin Kundrát & Caizhi Shen (2015) 
  4. A New Oviraptorid Dinosaur (Dinosauria: Oviraptorosauria) from the Late Cretaceous of Southern China and Its Paleobiogeographical Implications. 
  5. Scientific Reports 5, Article number: 11490 
  6. doi:10.1038/srep11490
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