ティラノサウロイデアの最新ニュース

ナノティラヌスはT.rex の幼体

 ナノティラヌス (Nanotyrannus lancensis) は、新種なのか、T.rex の幼体なのか、議論が続いてます。

 今年1月には、歯骨表面に残された溝(groove) から、ナノティラヌス属は有効とする論文が報告されています。

 このあたり、ナノティラヌスは有効属?(2016年1月)で紹介しましたが、たったひとつの特徴だけから、タクソンの定義や系統関係に言及するのは問題がありそうとも。

 今回、その論文に対して意義を唱える論文が報告されています。

 溝は、ティラノサウロイデア(ティラノサウルス上科)で幅広く見られる特徴であり、深くて鋭い形から浅いものまで、個体の成熟度によって変化することが示されています。

 結果として、歯骨溝の有無は、ナノティラヌス"の有効性を明らかにするものではなく、ナノティラヌスはT.rex の幼体だとしています。


 

  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte, Thomas D. Carr, Thomas E. Williamson, Thomas R. Holtz Jr., David W.E. Hone, Scott A. Williams (2016) 
  4. Dentary groove morphology does not distinguish 'Nanotyrannus' as a valid taxon of tyrannosauroid dinosaur. Comment on: "Distribution of the dentary groove of theropod dinosaurs: Implications for theropod phylogeny and the validity of the genus Nanotyrannus Bakker et al., 1988" 
  5. Cretaceous Research (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2016.02.007
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 恐竜の性別を判定する方法発見(2005年6月)で紹介していますが、恐竜の雌雄を骨髄骨(medullary bone)で識別する方法が知られています。

 骨髄骨は、鳥類のメスが産卵時にだけ持つ骨で、卵殻を作るため必要な大量のカルシウムを、ヒドロキシアパタイトとして一時貯蔵する組織です。

 この有無で、妊娠したメスか、それとも、オスか妊娠していないメスかがわかります。

 一方、鳥類で見つかった一部の骨疾患が骨髄骨に似ているため、今回、骨髄骨検出の精度を向上させた論文が報告されています。

 骨髄骨に特有のケラタン硫酸(Keratan sulfate)に注目したもの。化学的、そしてケラタン硫酸に特異的な抗体反応を利用して、免疫学的にも検出しています。

 その結果、T.rex の標本(MOR 1125)やダチョウなどで、骨髄骨が検出され、現生鳥類と非鳥類型恐竜において、骨髄骨が進化的に共通の祖先を持つ相同性が確認されたとされています。

 なお、翼竜の幼体と成体の両方の下顎で骨髄骨が見られ、性別の識別には使えないとの報告があります。  

 しかし、骨髄骨は長骨に存在するものであり、翼竜での論文については、否定しています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Mary Higby Schweitzer, Wenxia Zheng, Lindsay Zanno, Sarah Werning & Toshie Sugiyama (2016) 
  4. Chemistry supports the identification of gender-specific reproductive tissue in Tyrannosaurus rex. 
  5. Scientific Reports 6, Article number: 23099 (2016) 
  6. doi:10.1038/srep23099
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 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といっても、ジュラ紀中期(約1億7000万年前)に現れた基盤的な仲間と、白亜紀後期の大型種では、サイズなどがずいぶん異なります。

 初のベイズ分析:ティラノサウロイデアの系統関係(2016年2月)で紹介していますが、白亜紀後期の大型種と、その兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の、Xiongguanlong (シオングアンロン)の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあるのです。

 今回、その論文と同じ著者であるエジンバラ大のステフェン・ブルサット(Stephen L. Brusatte )らにより、ティラノサウロイデアのギャップを埋める時期の新種が記載されています。Smithsonianmagが紹介しています。

 また、ブルサットは日経サイエンス7月号で、ティラノサウルスの系譜について語っています。

 ウズベキスタン、キジルクム砂漠での、1997年から2006年にかけての発掘調査で、白亜紀後期、チューロニアン(9000万-9200万年前)の地層(ビッセクティ層、Bissekty Formation)から、脳函などが見つかったもの。


 全長は3メートルほどと、現在のウマほどのサイズですが、特に脳函は保存状態がよく、内耳は後期の仲間の特徴を持っており、低周波音が良く聞き取れたとされています。

 この発達した脳と感度の良い聴力が、捕食者として大型に進化した理由の一つと考えられています。低い音が良く聞こえるといいのは、暗闇や茂みでも獲物の足跡を聞くことができたからでしょうか。

 しかし、なぜ耳がいいと大型したのか、アロサウルスなど、他の大型獣脚類ではどうなのか、エサとなる植物食恐竜の大型化が関与していないのか、いろいろと疑問もありますね。


 学名は、Timurlengia euotica(ティムルレンギア・エウオティカ)。意味は、"耳のいいティムール(Timurleng)"。ティムールは、14世紀の中央アジアにあったティムール朝の建国者です。

 図は、脳函だけからの系統関係(Stephen L. Brusatte et al., 2016)。甘粛州で発見されたシオングアンロンより基盤的な位置づけです。

 出現は、ティラノサウロイダエ(科)が分岐する、化石記録の乏しい白亜紀中頃(図のグレーゾーン)です。

 なお、シオングアンロンについては、新種のティラノサウロイデアとオルニトミモサウリア(2009年4月)で紹介しています。



 Timurlengia.jpg 


  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte, Alexander Averianov, Hans-Dieter Sues, Amy Muir, and Ian B. Butler (2016) 
  4. New tyrannosaur from the mid-Cretaceous of Uzbekistan clarifies evolution of giant body sizes and advanced senses in tyrant dinosaurs. 
  5. Proceedings of the National Academy of Sciences (advance online publication) 
  6. doi: 10.1073/pnas.1600140113
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 ティラノサウロイデア(いわゆるティラノサウルス上科)といえば、ジュラ紀の小型種から、白亜紀後期の大型種まで、1億年にもわたる多様なクレードです。

 今回、その系統関係について再検討した論文が報告されています。

 新たに発見されたタクソンを加えた28種と4種の外群からの366の形質(解剖学的特徴)について、従来の最大節約法の他に、初めてベイズ(Bayesian)分析を行ったもの。

 なお、ナノティラヌス(Nanotyrannus lancensis)については、著者らが、T.rex の幼体で無効名という論文を出していることもあり、データセットには含まれてはいません。

 また、最大節約法は、形質の変化が最も少なくなる関係を求める方法ですが、ベイズ分析は、単系統群の出現頻度である事後確率(posterior probability)が最大となる関係を求めます。

 その結果ですが、最大節約法とベイズ分析を比較すると、2つの結果は非常に類似したコンセンサスツリーとなっています。  幾つかの相違点はありますが、両方のツリーの全体的な構造は同じです。

 今回の結果から、巨大なボディープランは、断片的に進化したことを示し、また、議論されているように、北米大陸西部での、南北で明確な種の区別があるわけではないとされています。

 さらに、おそらく、T.rex はアジアから北米へ移ってきたとしています。 

 図は、ベイズ分析の結果に地質年代をあてはめたもの(Stephen L. Brusatte & Thomas D. Car, 2016)。拡大図はこちら

 分岐点(ノード)の数字は、それぞれのクレードの事後確率(%、単系統群の出現頻度)を示しています。

 最節約法と比較すると、基盤的な位置などで、多分岐が少ないですね。最も基盤的(最古)なのは、単独でグアンロン(Guanlong)です。

 後で述べますが、Xiongguanlong と白亜紀後期の大型種の間には、化石が見つかっていない長いブランクがあります。


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 ベイズ分析は、分子系統学的研究では標準で、より広範な形態学的研究において使用されるようになっているそうです。  

 ティラノサウロイデアの進化や生物地理学的分布を理解するうえで、化石証拠が欠けていることによる3つのバイアスをあげています。  

 そのひとつは、白亜紀後期の大型種のクレードと、そのボティプランの兆しが最初に出現した白亜紀前期晩期の姉妹群、Xiongguanlong の間には、少なくとも2000万年、おそらく4500万年のギャップがあることです。  

 2つめは、アジアの大型ティラノサウロイデアの多様性が過小評価されていること。特に、カンパニアンの化石発見が期待されています。  

 そして、3つめは、北米大陸東部(アパラチア)について、ほとんど知られていないことです。



  1. References:
  2.  
  3. Stephen L. Brusatte & Thomas D. Carr (2016) 
  4. The phylogeny and evolutionary history of tyrannosauroid dinosaurs. Scientific Reports 6, Article number: 20252 (2016) 
  5. doi:10.1038/srep20252
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T.rex が長寿な3つの理由

 T.rex は、現生鳥類や爬虫類の平均寿命より長生きとされ、その生存率などの解析から、長寿の理由について考察した論文が報告されています。 

 そこでは、18歳で性的に成熟し繁殖可能となり、最大寿命は28歳とされています。

 死亡率のパターンは、18世紀のヒトに似ているのですが、それは偶然で、その長寿戦略は、ヒトとは異なり、鳥類に似ているとされています。 

 T.rex が長生きなのは、遅い性的成熟、大型ボティサイズ、速い成長によるものではないかとされています。 

  図は、生存率(Byung Mook Weo, 2016) 。横軸は、最大年齢を1とした相対年齢(Reduced age)で、縦軸は生まれた時を1とした生存率の対数です。

 生まれてすぐの生存率が低いため、平均寿命(50%生存率)は極めて短く、また、最大の28歳まで生き延びるのも1%ほどと極めてわずかです。

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 次の図は死亡率。T.rex の死亡率は、相対年齢比0.2(実年齢5-6歳)あたりが最も低く、そこから増加しています。

 このパターンは、18世紀のヒト(Sweden cohort)と似ています。ただし、この一致は数学的な偶然の一致とされています。



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 T.rex が長寿だったのは、遅い性的成熟、大型ボティサイズ、速い成長によるものではないかとされています。

 T.rex は、18歳で性的に成熟し、28歳の最大寿命からすると、相対年齢比は0.6の頃です。最大寿命になる前の、相対年齢比 0.6-1のあたりで老化するとされています。  

 遅めの性成熟は、ダチョウや猛禽類といった大型鳥類に似ているとされています。  

 また、相対成長スケーリングの法則(allometric scaling law )より、大型ほど長寿命とされています。平均鳥類の平均寿命(15.6年)より長生きなのは、大型ボディサイズのためと考えられています。  

 さらに、速い成長は、幼い時に捕食されるのを避けるメリットがあったとされています。
 


  1. References:
  2.  
  3. Byung Mook Weon (2016) Tyrannosaurs as long-lived species. 
  4. Scientific Reports 6, Article number: 19554 (2016) doi:10.1038/srep19554
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ナノティラヌスは有効属?

 ナノティラヌスは T.rex の幼体/まだ続く議論(2015年3月)などで紹介していますが、ナノティラヌス (Nanotyrannus lancensis) は、新種なのか、T.rex の幼体なのか、議論が続いてきました。

 今回、獣脚類の歯骨表面に残された溝(groove) という形態的特徴の系統的分布について解析し、ナノティラヌス属は有効とする論文が報告されています。 

 The Theropod Database Blogでも、写真など共にいろいろと指摘されていますが、たったひとつの特徴だけから、タクソンの定義や系統関係に言及するのは問題がありそうです。


 歯骨の横の表面にある空孔を含む溝を調べたもの。獣脚類に独特な特徴で、92の獣脚類タクサのうち、48タクサにあり、44にみられないとされています。  

 この特徴の分布について、獣脚類の系統関係と比較したところ、ティラノラプトラ(Tyrannoraptora)より前では、80%に溝がある一方、獣脚類の基盤的なクレードでは、6つのみにしか見られないとしています。  

 ティラノサウロイデア(上科)の中では、ドリプトサウルスとアルバートサウリナエに溝が見られるとしています。  

 ナノティラヌス(Nanotyrannus lancensis )は、ティラノサウリナエながら溝があります。結局、ナノティラヌス属は、アルバートサウリナエ(Albertosaurinae)として有効な属というのです。  

 ほとんどホロタイプだけの解析であり、タクソン内のバラツキも気になるところです。


 


  1. References:
  2.  
  3. Joshua D. Schmerge & Bruce M. Rothschild (2016) 
  4. Distribution of the dentary groove of theropod dinosaurs: Implications for theropod phylogeny and the validity of the genus Nanotyrannus Bakker et al., 1988. 
  5. Cretaceous Research 61: 26-33
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.12.016;

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 白亜紀後期(カンパニアン-マーストリヒチアン)、北半球の大型獣脚類といえば、ティラノサウリダエ(科)でした。

 その骨格化石は豊富に見つかっていますが、足跡が残されるような環境を好まなかったのか、足跡化石は限定的です。

 群れて歩いた/初めてのティラノサウリダエの連続歩行跡(2014年7月)では、カナダにある白亜紀後期の地層で発見されたティラノサウリダエ(科)としては初めての連続歩行跡を紹介しました。

 ここで推定される歩行速度は、時速、6.40 km から8.50 km とされていました。

 今回、ワイオミングにある白亜紀後期(マーストリヒチアン)の地層(Lance Formation)で発見されたティラノサウリダエの連続歩行跡について報告され、その歩行速度は、時速4.5-8kmとされています。 phys.orgが紹介しています。

 以前は、ティラノサウリダエの歩行速度は、他の大型獣脚類よりかなり遅かったと推測されていたそうですが、今回の結果から、歩くのが遅いわけではないとされています。

 砂岩の表面に連続した3つの足跡が残されており、サイズなどから、足跡の主は、T.rex の亜成体かナノティラヌスとされています。    


 


  1. References:
  2.  
  3. Sean D. Smith, W. Scott Persons IV & Lida Xing (2016) 
  4. A tyrannosaur trackway at Glenrock, Lance Formation (Maastrichtian), Wyoming. 
  5. Cretaceous Research 61: 1-4 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.12.020
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 ティラノサウルス・レックス(T.rex)は、恐竜の世界だけでなく、生物の世界でもアイコン的な、偉大な存在です。

 有名すぎるので、ちょっとマニアになると、あえて避けたりするのですが、実は、まだまだ知られていないことが多いのです。

 The Tyrannosaur Chronicles: The Biology of the Tyrant Dinosaurs(Bloomsbury Publishing PLC )は、そんなティラサウルス(ティラノサウロイデア)全般について解説した書。

 来年、2016年の4月の発売予定です。

 日本では、カバーや内容など、秘密にする傾向にあるようですが、米国では、発売予告が早いのですね。

 著者のDavid Honeのブログ(Archosaur Musings)で紹介されています。 ここのカバーは、基盤的なティラノサウロイデアのグアンロンのようです。

 最新の研究成果をふまえ、進化や系統、解剖学や生理学、力学的な話から、生態や行動にまで及ぶ内容のようです。



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 長崎半島にある白亜紀後期(約8100万年前、カンパニアン前期)の三ツ瀬層で、ティラノサウリダエ(ティラノサウルス科)とされる脱落歯化石が発見され、福井県立恐竜博物館が紹介しています。

 マスコミのニュースは消えるのが早いので、リンクは避けますが、プレスリリースがしっかりしていたのでしょう、あいまいな"ティラノサウルス類"という表現はなくなりましたね。

 もちろん、「・・・の特徴を持つのが、・・・だ」というように、その特徴からクレードやタクソンが決まるわけではないので、正確には、ティラノサウリダエ(科)の特徴を持つ歯の化石、ですね。その他の骨格が見つかると、別系統となる可能性もあります。

 2点あり、保存良好な1点は、先端から歯根部までの高さが82mmで、水平断面がふくらみのある楕円形であり、大きさや形状はティラノサウリダエ(科)の特徴に一致するとされています。

 今まで国内で見つかっているティラノサウロイデア(上科)の歯は、比較的小型種の歯とされ、前上顎骨の歯が多かったのですが、これは、左下顎の歯とされています。

 なお、三ツ瀬層には、サントニアン後期からカンパニアン前期の地層があり、今回と同じカンパニアン前期の三ツ瀬層からは、よろい竜の歯の化石/長崎の三ツ瀬層(2014年7月)も見つかっています。

 また、初めての獣脚類の歯/長崎(2013年7月)で紹介していますが、少し古い約8400万年前(サントニアン後期)の地層からも、獣脚類の歯の化石が見つかっています。


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 日本語では、複数の恐竜のクレードをまとめて、・・・類と言ったりしますが、中でも、"ティラノサウルス類"というのは、実に曖昧な表現です。

 広い意味で、ティラノサウロイデア(Tyrannosauroidea、いわゆるティラノサウルス上科)をさすのでしょうが、ティラノサウルス・レックス(T.rex)しか知らない人は、T.rex に近い恐竜と思ったりします。

 しかし、初期のティラノサウロイデアと、T.rex のような白亜紀末の派生的なティラノサウリニ(Tyrannosaurini、ティラノサウルス族)とは、全く別物といったほうがいいくらい異なります。


 ティラノサウロイデアの起源は、ジュラ紀中期(約1億6500万年前)とされ、巨大化したのは、白亜紀末に絶滅するまでの最後の2000万年ほどなのです。

 このあたりは、LETTERS FROM GONDWANA、ゴンドワナからの手紙)というブログで、ティラノサウロイデアの仲間たちとともに紹介されています。

 このブログでは、基盤的ティラノサウロイデアであるプロケラトサウリダエ(Proceratosauridae、科)のいくつかの種を紹介しています。  この仲間、ヒトよりも小さく、非常に細長い鼻先、そして、頭にはトサカがあったのです。  

 なお、プロケラトサウリダエについては、最古のティラノサウロイデアだった・・・プロケラトサウルス(2009年11月)で紹介しています。  

 ブログでも紹介されている Kileskus artistotocus は、シベリアにあるジュラ紀中期の地層で発見されており、ロシア初のティラノサウロイデア(2010年4月)で紹介しています。なお、ここでは、プロケラトサウリダエについて再定義されています。
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 T.rex の共食いの証拠(2010年10月)で紹介していますが、大型肉食恐竜の共食いについての報告は、何例かあります。

 今回、カナダ・アルバータ州にある白亜紀後期の地層(Dinosaur Park Formation)で発見されたティラノサウリナエ(亜科)、ダスプレトサウルス(Daspletosaurus)で見つかった噛み痕について報告されています。

 先のT.rex の例は、死んだ後に食いついたのか戦いの結果なのか不明だったのですが、今回は生前と死後の2つの痕が残されています。


 全長6メートルほどの亜成体化石で、頭部や下顎には多数の治癒した証拠が残る傷が残され、種の内部で争ったのではないかとされています。  

 また、下アゴに残された死後の損傷は、死体が食べられたことを示し、他の標本の状況から、単純に腐食が食べられたというより、共食い的なスカベンジとされています。  

 これは、ティラノサウリダエの共食いの新たな証拠とされています。



  1. References:
  2.  
  3. D.W.E. Hone & D. Tanke (2015) 
  4. Pre- and postmortem tyrannosaurid bite marks on the remains of Daspletosaurus (Tyrannosaurinae: Theropoda) from Dinosaur Provincial Park, Alberta, Canada. 
  5. PeerJ 3:e885 
  6. doi: https://dx.doi.org/10.7717/peerj.885
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 以前、メガラプトル(Megaraptor namunhuaiquii) は、ティラノサウロイデアとする報告がありました。

 メガラプトルはティラノサウロイデアか(2014年6月)で紹介しましたが、アルゼンチンにある白亜紀後期の地層で発見されたメガラプトルの幼体標本からの報告です。

 今回、それに反論する論文が報告されています。

 最初の論文では、メガラプトラの標本に、多くのコエルロサウリアの形質が示されているのですが、それらは、問題のある形質に基いているとされています。

 また、その標本は、ティラノサウロイデアではない特徴を持っているとされています。よって、メガラプトラをティラノサウロイデアとする証拠としては弱いとされています。




  1. References:
  2.  
  3. Chan-gyu Yun (2015) 
  4. Comments on the juvenile Megaraptor specimen and systematic positions of megaraptoran theropods. 
  5. PeerJ PrePrints 3:e1051 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.7287/peerj.preprints.851v1
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 小型で華奢な獣脚類、ナノティラヌス (Nanotyrannus lancensis) は、新種なのか、T.rex の幼体なのか、議論が続いてきました。

 ナノティラヌスは有効な属(2011年4月)などで紹介しています。  最近では、2013年のSVP年会で、ピーター・ラーソンが、有効な属として発表しています。
 
 今回、ナノティラヌスは、T.rex の幼体であり、ジュニアシノニムとする論文が報告されています。

 ラーソンの発表に対するコメントで、提案された全ての骨学的な特徴は、成長に伴う個体発生的な、そして、個体差によるものとしています。



  1. References:
  2.  
  3. Chan-gyu Yun (2015) 
  4. Evidence points out that "Nanotyrannus" is a juvenile Tyrannosaurus rex
  5. PeerJ PrePrints 3:e1052 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.7287/peerj.preprints.852v1 
  7.  
  8. Larson P (2013) 
  9. The validity of Nanotyrannus Lancensis (Theropoda, Lancian - Upper Maastrichtian of North America 
  10. Society of Vertebrate Paleontology: 73rd annual meeting, Abstracts with Programs, p. 159.(pdf)
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 前上顎骨歯の断面がD型などの特徴から、メガラプトル(Megaraptor namunhuaiquii ) は、ティラノサウロイデア(tyrannosauroidea)ではないかとする論文が報告されています。

 なぜ今まではっきりしなかったかというと、幼体の一部ながら、今回初めて、頭部の詳しい解析がなされたため。

 メガラプトルの系統的な位置づけについては、アロサウロイデア(アロサウルス類)のメンバーなど、色々と議論がされてきました。

 最近では、フクイラプトルは、コエルロサウリア(2013年7月)で紹介したように、コエルロサウリアとする報告があります。

 単なる分類の話ではなくて、系統の話。ティラノサウロイデアがどのようなトレンドで進化したのか、興味深いところですね。

 
 論文は、アルゼンチンにある白亜紀後期の地層(Portezuelo Formation)で発見されたメガラプトルの幼体標本について、解析したもの。  

 頭部の形態はコエルロサウリアに類似し、メガラプトラは、コエルロサウリアのメンバーとされています。  

 また、 前の論文でも指摘されているように、いくつかの特徴が似ていることから、おそらく、ティラノサウロイデア(tyrannosauroidea)ではないかとされています。

 もっとも、幼体化石の一部のためか、断定はされていませんね。


  1. References:
  2.  
  3. Juan D. Porfiri, Fernando E. Novas, Jorge O. Calvo, Federico L. Agnolín, Martín D. Ezcurra & Ignacio A. Cerda (2014) 
  4. Juvenile specimen of Megaraptor (Dinosauria, Theropoda) sheds light about tyrannosauroid radiation. 
  5. Cretaceous Research 51: 35-55 
  6. DOI: 10.1016/j.cretres.2014.04.007
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 北米南部、テキサス西部にもティラノサウルスがいたのではないかという憶測があります。

 それは、ビッグ?ベンド国立公園にある白亜紀後期の地層( Javelina Formation)から、ティラノサウルス類らしき上顎が見つかっていることからです。

  最近、 その地層から、非常に大きな尾椎前部が見つかり、ティラノサウリダエ(Tyrannosauridae)に間違いなく、おそらく、成体のティラノサウルスのものではないかとされています。

  層序的に、ティラノサウルスとしては、最も初期の記録の一つとされています。

  もしそうであれば、ティラノサウルスは、白亜紀末の同時期に、北米大陸の南北両方の異なった動物相に存在していたのではないかとされています。





  1. References:
  2.  
  3. Steven L. Wick (2014) 
  4. New evidence for the possible occurrence of Tyrannosaurus in West Texas, and discussion of Maastrichtian tyrannosaurid dinosaurs from Big Bend National Park. 
  5. Cretaceous Research 50: 52-58 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.cretres.2014.03.010
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 ピノキオ・レックスの愛称で呼ばれる吻部が長い新種のティラノサウリダエ(ティラノサウルス科)が、中国南部江西省にある白亜紀後期の地層で発見・記載されています。 多くのニュースでは、約6600万年前とありますから、絶滅直前ですね。

 吻部は通常より約35%ほど長く、Qianzhousaurus sinensis と命名されています。

 吻部の長いティラノサウリダエは、すでにモンゴルで2種類発見されています。アリオラムス属の、 Alioramus remotus と、A. altai で、今回、これらとともに新しいクレードが提唱されています。

 しかし、いずれも成体が見つかっておらず、その特徴が種特有のものか、詳細は不明でした。

 今回の標本は、ほぼ成体であり、長い吻部は幼体時の過渡的な特徴ではなく、これらのクレードの特徴と考えられています。

 T.rex のように強い力で噛むことはできなかったようで、鋭い歯を持つことから、小型獣脚類のような採食行動をしていたのかもしれませんね。


 鼻先から尾を含めて、約9メートルと、2つのアリオラムスの2倍ほどの大きさとされています。  

 系統的には、2つのアリオラムスとともに、ロンギロストリネ(longirostrine)というクレードを提唱しています。このクレードは、白亜紀後期にアジアに広く分布していたと考えられています。


  1. References:
  2.  
  3. Junchang Lü, Laiping Yi, Stephen L. Brusatte, Ling Yang, Hua Li & Liu Chen, 2014 
  4. A new clade of Asian Late Cretaceous long-snouted tyrannosaurids 
  5. Nature Communications 5, Article number: 3788 
  6. doi:10.1038/ncomms4788
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北米最南端のT.rex 化石

 メキシコにある白亜紀後期の地層( Lomas Coloradas Formation)で発見されたティラノサウルス類の歯の化石が報告されています。

 6本の歯の化石で、形態的にティラノサウリダエ(Tyrannosauridae)のものとされ、そのうち、4本は、T.rex の歯とされ、残り2本は、幼体の歯のようです。

 遊離した歯の化石ですが、T.rex の化石としては、北米大陸では最も南からの発見とされています。




  1. References:
  2.  
  3. Claudia Inés Serrano-Brañas, Esperanza Torres-Rodríguea, Paola Carolina Reyes Luna, Ixchel González & Carlos González-León (2014) 
  4. Tyrannosaurid teeth from the Lomas Coloradas Formation, Cabullona Group (Upper Cretaceous) Sonora, México. 
  5. Cretaceous Research 49: 163-171 
  6. http://dx.doi.org/10.1016/j.cretres.2014.02.018
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 白亜紀当時、比較的温暖だったとはいえ、冬は白夜の極地方、そこに棲んでたティラノサウリネ(tyrannosaurine、ティラノサウルス亜科)は、比較的小型だったようですね。

 今回、アラスカにある白亜紀後期(マーストリヒチアン、7000-6900万年前)の地層(Prince Creek Formation)で発見されたティラノサウリネが記載されています。論文はオープンアクセスです。

 Nature News では、トロオドンは極地方で逆に大型化したのに・・・と紹介しています。

 学名は、Nanuqsaurus hoglundi (ナヌクサウルス・ホグルンディ)で、属名の"Nanoq"は、先住民の言葉から、"ホッキョクグマ(polar bear )"の意味です。  

 部分的な化石しか見つかっていないこともあり、2つの系統解析結果が示されています。

 いずれも派生的なティラノサウリネで、そのひとつでは、タルボサウルス+ティラノサウルスからなるクレードの姉妹群とされています。

 図は、系統関係に時間軸を当てはめたもの(Anthony R. Fiorillo & Ronald S. Tykoski ,2014)。 赤字が、ナヌクサウルスです。

 ティラノサウロイデアは、小型種の Xiongguanlong baimoensis (シオングアンロン)がアルビアン末(1億年前)で途絶えたのち、カンパニアン後期(8200万以降)になると、派生的なグループとなり、一気に多様性が増していますね。


  
Tyranno.jpg

 エドモントサウルスは1年中極地方にいた(2012年2月)で紹介していますが、渡りをせずとも、エサとなる恐竜はいたようですが、冬は闇という厳しい環境だったためか、頭部の長さは、60ー70センチ、推定全長は約7メートルと比較的小型です。




  1. References:
  2.  
  3. Anthony R. Fiorillo & Ronald S. Tykoski (2014) 
  4. A Diminutive New Tyrannosaur from the Top of the World. 
  5. PLoS ONE 9(3): e91287. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0091287
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 空洞が多い獣脚類の頭部は、含気性(pneumaticity)といわれ、軽くするだけでなく、そこには、呼吸器系の気嚢が関与していたとされています。

 特に、ティラノサウルス類では含気性が高く、今回、保存状態の良いティラノサウルス類の Alioramus altai (アリオラムス・アルタイ)について、CTスキャンで解析した論文が報告されています。

 頭部化石の解析から、獣脚類の頭部の含気性の進化についてレビューしているのですが、ほとんどの獣脚類が、上顎と涙骨が含気性という基本構造を持っていたとされています。

 そして、頭部の他の骨を含気性にすることで、この基本構造を変更していたことがわかるとしています。


 論文は、アメリカ自然史博物館紀要からは、オープンアクセスです。    

 Alioramus altai(アリオラムス・アルタイ)については、ティラノサウルス類、アリオラムスの骨学(2012年3月)で紹介しています。モンゴルにある白亜紀後期の地層で発見され、亜成体ではないかとされています。  

 ティラノサウルス類(Tyrannosauridae、科)は、外翼状骨や方形骨など、他の獣脚類に比べて非常に含気性とされています。  

 そして、ティラノサウルス類(Tyrannosauroidea、上科)は、頬骨や鼻のくぼみといった多くの空洞を保持するようにみえ、それはコエルロサウルス類には原始的ですが、より鳥類に近いタクサでは失われるか、派生的形質として修正されたと考えられています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Maria Eugenia Leone Gold, Stephen L. Brusatte and Mark A. Norell (2013) 
  4. The Cranial Pneumatic Sinuses of the Tyrannosaurid Alioramus (Dinosauria: Theropoda) and the Evolution of Cranial Pneumaticity in Theropod Dinosaurs. 
  5. American Museum Novitates Number 3790 : 1-46 (AMNH Novitates
  6. doi: http://dx.doi.org/10.1206/3790.1
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世界最小の T.rex 化石発見

 モンタナにある白亜紀後期の地層で、世界最小の T.rex の化石が見つかったそうです。Missoulian が伝えています。

 頭部は75%程が残り、大腿骨が1メートルほどで、"Baby Bob"の愛称で呼ばれています。

 T.rex の成長やハンティングに適していたか、ナノティラヌスとの違いなどがわかると期待されています。
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