マニラプトル類の最新ニュース

 デイノケイルス(Deinocheirus mirificus)の腹肋骨(gastralia)から、タルボサウルスがかんだ痕が見つかったと報告されています。
 
 デイノケイルスは、モンゴルにある白亜紀後期のネメグト層で発見され、2.4メートルもある大きな腕の骨だけが見つかっているオルニトミモサウルス類です。

 今回、ホロタイプが発掘された場所からの断片的な化石を調べ、噛んだ痕(平行な条痕とみぞ)を見つけたもの。 

 鋸歯痕は幅広いU字型で、直径0.5mmほど。当時、このような痕をつけたのは、タルボサウルスではないかとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Bell, Currie & Lee (2012) 
  4. Tyrannosaur feeding traces on Deinocheirus (Theropoda:?Ornithomimosauria) remains from the Nemegt Formation (Late Cretaceous), Mongolia. 
  5. Cretaceous Research, Available online 25 April 2012
  6. doi:10.1016/j.cretres.2012.03.018



イシャノサウルス再解析

 遼寧省にある白亜紀前期の地層で発見された小型羽毛恐竜、Yixianosaurus longimanus(イシャノサウルス・ロンギマヌス)について、再解析した論文が報告されています。
 
 種小名が示すように、長い手を持っているのが特徴です。 初めての系統的では、基盤的マニラプトル類とされ、アルヴァレスサウルス類などともに多分岐しています。 

 また、大きな正羽(contour feather、羽軸のある羽毛)の存在は、羽毛の起源が以前考えられていたよりも早いとされています。 さらに、がっしりして大きな前肢は、他の小型獣脚類とは別の機能を持ち、それらとはニッチを棲み分けていたようです。
 


  1. References:
  2.  
  3. T. Alexander Dececchi, Hans C. E. Larsson & David W. E. Hone (2012) 
  4. Yixianosaurus longimanus (Theropoda: Dinosauria) and its bearing on the evolution of Maniraptora and ecology of the Jehol fauna. 
  5. Vertebrata PalAsiatica 50(2):111-139



ボナパルテニクスの卵化石

 昨年12月に、新種のアルヴァレスサウルス/アルゼンチンで紹介したBonapartenykus ultimus (ボナパルテニクス・ウルチムス)について、特に卵化石がニュースになっています。 

  ウプサラ大プレスリリースが紹介しています。 MSNBCに化石の映像があります。  

 復元イラストでは、複数の卵が描かれていますが、見つかったのは2個。アルヴァレスサウルス類の骨格付近からは初めての発見で、その卵殻は既存種にはない構造とされています。

 パタゴニアにある白亜紀後期(約7000万年前)の地層から発見されたアルヴァレスサウルス類(Alvarezsauridae)で、系統的にはパタゴニクス(Patagonykus)に近く、新たに Patagonykinae というクレードが提唱されています。   

 アルヴァレスサウルス類は、最も謎の多い恐竜とされ、ボナパルテニクスは、体長2.6mで、中でも最大級とされています。  

 直径7センチほどの2つの卵が関節した脛骨付近から見つかっており、アルヴァレスサウルス類の骨格付近からは初めての発見とされています。  
 
 表面には小さなコブがあり、また卵殻の微細構造は、既存のどのカテゴリーにも属さず、Arraigadoolithidae という卵化石につけられる新しいタクソン名を提唱しています。  

 電顕で観察した結果、卵殻には穴が開いており、現生鳥類と同じように、孵化の最終段階において菌類のコンタミ(汚染)に悩まされていたようです。 これは、恐竜の卵に菌類がコンタミした初めての証拠とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Federico L. Agnolin et al., 2012 
  4. New alvarezsaurid (Dinosauria, Theropoda) from uppermost Cretaceous of north-western Patagonia with associated eggs Cretaceous Research, 35, June 2012, Pages 33-56 
  5. doi:10.1016/j.cretres.2011.11.014



 モンゴルにある白亜紀後期のネメグト盆地で発見された、Nemegtomaia barsboldi (ネメグトマイア・バルスボルディ)の新しい2つの標本が報告されています。  

 ネメグトマイアは、2004年に記載されたオヴィラプトル類で、属名は、"ネメグトの良い母"の意味です。  

 今回の標本を含めた系統解析から、ネメグトマイアは、インゲニア類(Ingeniinae)とされ、 Heyuannia の姉妹群とされています。  

 オヴィラプトル類の中では、前肢が短く、またその第1指が太く長く、ツメは強力です。一方、第2、3指は短めといった特徴があります。前肢は卵を守るために使ったようです。  



 図は、ネメグトマイアの骨格図。グレイの部分が見つかっている部分です。

 頭部などが見つかっているホロタイプと、今回発見された2つの標本からの両足などをまとめています。



ネメグ.jpg

  1.  最初は、バルウンゴヨット層(Baruungoyot Formation 、Campanian-Maastrichtian) 上部で発見された標本です。  

     卵化石の上に、その親と思われる成体化石があり、巣の化石ととも発見された4番目のオヴィラプトル属とされ、また、インゲニア類(Ingeniinae )では初めてとされています。  

     2番目は、数km離れたネメグト層の基底層で発見されたより小型の標本です。  

     オヴィラプトル類は、白亜紀後期の中国やモンゴルの、乾燥から半乾燥環境で発見される最もありふれた恐竜とされています。  

     今回は、乾燥し風の強い環境のバルウンゴヨット層と、より湿度が高い河川環境のネメグト層の両方で発見されており、営巣地は河川の近くだったようです。  



  2. References:
  3.  
  4. Fanti, F., Currie, P.J. & Badamgarav, D. 2012
  5. New Specimens of Nemegtomaia from the Baruungoyot and Nemegt Formations (Late Cretaceous) of Mongolia. 
  6. PLoS ONE 7(2): e31330 
  7. doi:10.1371/journal.pone.0031330




リンヘニクスの後足

 中国、内モンゴルで発見された白亜紀後期の地層で発見されたアルヴァレスサウルス類の後足化石について報告されています。  ただ、論文の写真、ぼやけてますね。 

 同じ場所で発見されたこともあり、 昨年1月に記載された小型のparvicursorine類、Linhenykus monodactylus の足ではないかとされています。

 ほぼ完全な関節した左足で、派生的アルヴァレスサウルス類としては最初の足の化石とされ、このグループの足の指の進化などの知見が得られるとしています。 

 第3中足骨の前方表面には、傍矢状の出っ張り(parasagittal flange)があり、走行時の安定性に寄与したのではないかとする仮説が提唱されています。

 なお、Linhenykus monodactylus については、 初めての1本指/アルヴァレスサウルスの指の進化で、昨年1月に紹介しました。


  1. References:
  2.  
  3. David W.E. Hone, Jonah N. Choiniere. Qingwei Tan, and Xing Xu (2012) 
  4. An articulated pes from a small parvicursorine alvarezsauroid (Dinosauria: Theropoda) from Inner Mongolia, China. 
  5. Acta Palaeontologica Polonica (in press) 
  6. doi:10.4202/app.2011.0127



 アルゼンチン北部にある白亜紀後期( Campanian-Maastrichtian ですから晩期) の地層で発見されたアルヴァレスサウルスが記載されています。

 正式記載は来年ですが、Bonapartenykus ultimus (ボナパルテニクス・ウルチムス)と命名されています。

 系統的には、パタゴニクス(Patagonykus)に近く、新たに Patagonykinae というクレードが提唱されています。 1本指の、鳥に近い恐竜なんでしょう。

 

 また、骨格付近で卵化石や多数の卵殻が見つかっています。

 その卵化石には、新たな学名、Arraigadoolithus patagoniensis と、新タクソン Arraigadoolithidae が提唱されています。

 要旨には、微細構造が特徴的な卵殻で、菌類のコンタミもあるようなことが書いてあります。

 

  1. References:
  2.  
  3. Federico L. Agnolin, Jaime E. Powell, Fernando E. Novas & Martin Kundrát (2011 [2012])
  4. New alvarezsaurid (Dinosauria, Theropoda) from uppermost Cretaceous of north-western Patagonia with associated eggs.
  5. Cretaceous Research (advance online publication)
  6. doi:10.1016/j.cretres.2011.11.014



 内モンゴルにある白亜紀後期の地層で発見されたアルヴァレスサウルス、Linhenykus monodactylus (リンヘニクス・モノダクティルス)の詳細な骨学について報告されています。

 記載論文には無い、骨化石の各パーツを複数の角度から撮影した詳しい写真があります。アルヴァレスサウルス類の生物地理学的な分布についても考察されています。

 

 Linhenykusは、初めての1本指/アルヴァレスサウルスの指の進化で紹介した、タイトルどおり、初めての機能指が1本の非鳥類型獣脚類です。

 今回、最近発見されたタクソンを含めて解析した結果、アルヴァレスサウルス類が北南米やアジアに分布していたことの説明として、以前示されたような、純粋な分断分布(vicariance)や分散(dispersal)で説明された生物地理学的な仮説は支持されないとしています。

 かわりに、分断分布や分散、地域的な絶滅が混ざり合った、同所性(sympatric)イベントが支配的役割を果たしたと示唆されています。

 純粋な分断分布のような地理的隔離がない状況で、他の要因がからみあって生殖隔離がおこり、種が分岐したということでしょう。

 

 

  1. References:
  2.  
  3. Xing Xu, Paul Upchurch, et al., 2011
  4. Osteology of the alvarezsauroid Linhenykus monodactylus from the Upper Cretaceous Wulansuhai Formation of Inner Mongolia, China, and comments on alvarezsauroid biogeography 
  5. Acta Palaeontologica Polonica in press, available online 13 Dec 2011
  6. doi:10.4202/app.2011.0083



 オヴィラプトルなどのオヴィラプトロサウルス類は、フラメンコダンサーのように尾羽を振っていたとする発表が、ラスベガスで開催されているSVP年会で報告されています。

 LiveScience が紹介しています。

 

 オヴィラプトロサウルス類は、原始的派生的にかかわらず、尾端骨(pygostyles)の先には、扇のような尾羽(tail-tip feather-fans)が広がっていたとされています。

 他の獣脚類に比べて尾椎がコンパクトになりフレキシブルで、3次元的に筋肉をデジタル復元した結果、尾が短いにもかかわらず、尾の筋肉(M. caudofemoralis)は維持されているそうです。

 尾羽を扇のように広げて振ることで、ディスプレイに利用したのではないかとされています。

 

  1. References:
  2.  
  3. SHAKE YOUR TAIL FEATHERS: THE FLAMBOYANT, ATHLETIC, AND POSSIBLY FLIRTATIOUS CAUDAL MORPHOLOGY OF OVIRAPTOROSAURS. PERSONS,
  4. Walter, University of Alberta, Edmonton, AB, Canada; CURRIE, Philip, University of Alberta, Edmonton, AB, Canada; NORELL, Mark, American Museum of Natural History, New York, NY, USA
  5. SVP Abstracts 2011



 アルヴァレスサウルス類の祖先が樹上性だったのではないかとする論文が報告されています。

 モンゴルで発見されたアルヴァレスサウルス類(Parvicursoridae)、Ceratonykus oculatus (ケラトニクス・オクラツス)の脳函の解析から、視力や聴力に優れていたことがわかったもの。

 ただ、視力や聴力が優れていると、なぜ樹上性になるのかについては、要旨だけから詳細は不明です。

 

 なお、Ceratonykus oculatus  は、モンゴルにある白亜紀後期の地層(Baruungoyot Formation)で、下図に示した頭部などの化石が発見され、今回の論文の筆頭著者(V. R. Alifanov)とバルスボルトにより、2009年に記載されました。

 この論文では、アルヴァレスサウルス類を獣脚類とすることに疑問を示していますが、派生形質の特徴によるもので、分岐学的な分析によるものではありません。

 

 下の図は、発見された化石と復元イメージ。眼窩が大きくて、種小名が表すように、目が大きかったようです。スケールが2センチですから、ずいぶん小さく、鳥類との関連が強かったとする説もあります。

 他のアルヴァレスサウルス類と比較して、大たい骨が短いなどの特徴があります。

 

Ceratonykus_oculatus.jpg 

  1. References:
  2.   
  3. V. R. Alifanov and S. V. Saveliev, 2011
  4. Brain structure and neurobiology of Alvarezsaurians (Dinosauria), exemplified by Ceratonykus oculatus(Parvicursoridae) from the Late Cretaceous of Mongolia
  5. Paleontological Journal 45(2): 183-190
  6. DOI: 10.1134/S0031030111020031
  7.   
  8. V. R. Alifanov and Barsbold, 2009.
  9. Ceratonykus oculatus gen. et sp. nov., a new dinosaur (?Theropoda, Alvarezsauria) from the Late Cretaceous of Mongolia. 
    Paleontological Journal (English edition). 43(1), 94-106 
  10. DOI: 10.1134/S0031030109010109



 JVP 誌の最新号に、獣脚類の脳函についての報告が2報あります。

 

 最初は、パタゴニアにある白亜紀後期のアベリサウルス類、カルノタウルス(Carnotaurus sastrei )の脳函について。

 アベリサウルス類の脳函についてはほとんど知られていないので、このクレードの複雑な構造の多様性を知るには重要としています。

 図は、目の上にあるツノが特徴的な頭部骨格化石。スケールは10センチ。 

 

Carnotaurus_sastrei.jpg

 

 次は、ユタ州にあるCedar Mountain Formation(白亜紀前期)で発見されたテリジノサウルス類、ファルカリウス(Falcarius utahensis)の脳函について。

 CTスキャン結果によると、ほとんど鳥のような、三半規管(semicircular canals)と長い蝸牛殻(かぎゅうかく、cochlea)がある完全な内耳構造を持ち、幅広い周波数識別能力(frequency discrimination)があったことを示すとしています。

 

  References:

  1. Ariana Paulina Carabajal, 2011
  2. The braincase anatomy of Carnotaurus sastrei (Theropoda: Abelisauridae) from the Upper Cretaceous of Patagonia
  3. JVP, 31(2), p. 378 - 386, 2011
  4. DOI:10.1080/02724634.2011.550354
  5. David K. Smith; Lindsay E. Zanno; R. Kent Sanders; Donald D. Deblieux; James I. Kirkland, 2011
  6. New information on the braincase of the North American therizinosaurian (Theropoda, Maniraptora) Falcarius utahensis
  7. JVP, 31(2), p. 387 - 404, 2011
  8. DOI:10.1080/02724634.2011.549442  

 




カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

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