竜脚形類の最新ニュース

 基盤的な竜脚形類である Mussaurus patagonicus(ムッササウルス)の幼体化石の骨組織学的研究から、幼児期の成長について解析した論文が報告されています。

 パタゴニアにある三畳紀後期の地層で発見された標本で、成長線がないことから、1歳未満の個体とされています。

 皮質骨において、織り込まれた繊維のような骨基質(woven-fibred bone matrix)が優位で、これは、急速な成長を示していると考えられています。

 アフリカで発見されている同じ基盤的竜脚形類の Massospondylus carinatus(マッソスポンディルス)と比べると、成長速度は早かったとされています。
 
 

  1. References:
  2.  
  3. Ignacio Alejandro, Cerda Diego Pola & Anusuya Chinsamy (2013) 
  4. Osteohistological insight into the early stages of growth in Mussaurus patagonicus (Dinosauria, Sauropodomorpha). 
  5. Historical Biology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/08912963.2012.763119



尾に病気痕/竜脚形類

 南アフリカで発見された基盤的竜脚形類の尾に、病気の痕が見つかったとする報告があります。

 ジュラ紀前期のエリオット層上部で、発見されたもので、 外傷により切断されたのではないかとされています。
 
 

  1. References:
  2.  
  3. Richard J. Butler, Adam M. Yates, Oliver W. M. Rauhut & Christian Foth (2013) 
  4. A pathological tail in a basal sauropodomorph dinosaur from South Africa: evidence of traumatic amputation? 
  5. Journal of Vertebrate Paleontology 33(1): 224-228 
  6. DOI:10.1080/02724634.2012.710691



 竜脚類の胸部の骨の形態や機能、進化的な意味に関する論文が報告されています。

 かつて鎖骨(clavicle)とされていた骨は間鎖骨(interclavicle)ではないかとされ、竜脚形類における最初の間鎖骨の確実な証拠としています。

 間鎖骨とは、鎖骨の間にある骨で、胸部を強く安定化します。そのおかげで、細長い首が進化し、細長くなった尾を防御のための武器として使うことができたようです。

 鎖骨の融合により形成されたとされる鳥類の叉骨(furcula)とのホモロジー(相同性)な関係についても考察されています。

 
 竜脚類においては、鎖骨や腹肋(gastralia)、胸骨肋骨(sternal rib)は独特の形状をしており、様々な解釈ができるため、それらの骨の同定には議論の余地があるそうです。 

 論文では、ワイオミングで発見されたディプロドクス類の胸の部分について解析し、形態的に5つのタイプが識別可能としています。  

 また、いろいろな証拠から、従来、竜脚類の鎖骨として解釈されていた骨は間鎖骨で、竜脚形類における最初の間鎖骨の確実な証拠の報告ではないかとしています。  

 そして、竜脚類における間鎖骨の存在は、機能的にも、系統的にも意義があるとしています。 

 機能的な点としては、胸郭の安定化で、そのおかげで、細長い頸部や尾椎体が進化し、尾を防御のための武器として使うことができたようです。  

 レバッキサウルスやティタノサウルス形類で間鎖骨が消失しているのは、より幅広くなった肋骨や、ワイドゲーシタイプに歩行スタイルが進化したためとしています。 

 鳥類の叉骨と竜脚類の間鎖骨のホモロジー(相同性)な関係は、叉骨(furcula)が鎖骨(clavicle)の融合により形成されたという従来からの説に対し、等しく最大節約的(parsimonious)であることがわかるとしています。  

 共通の祖先に由来する両者のそれぞれの特徴は、同程度に、最短の進化の途を歩んだということでしょうか。



  1. References:
  2.  
  3. Emanuel Tschopp & Octávio Mateus (2012) 
  4. Clavicles, interclavicles, gastralia, and sternal ribs in sauropod dinosaurs: new reports from Diplodocidae and their morphological, functional and evolutionary implications. 
  5. Journal of Anatomy (advance online publication) 
  6. DOI: 10.1111/joa.12012



 アルゼンチンで発見された三畳紀後期の基盤的竜脚形類、Coloradisaurus brevis (コロラディサウルス・ブレヴィス)の頭部より後方の解剖学的特徴について報告されています。

 1978年に、ほぼ完全な頭部化石から記載された恐竜で、今回は、脊椎や肩帯などの新しい標本を解析したもの。

 その特徴は、中国のジュラ紀前期の地層で発見されているルーフェンゴサウルスに類似しているとされています。 

 また、系統的には、コロラディスサウルスとルーフェンゴサウルスは、マッソスポンディルス類(Massospondylidae)に含まれるとしています。

 


  1. References:
  2.  
  3. Cecilia Apaldetti, Diego Pol & Adam Yates (2012) 
  4. The postcranial anatomy of Coloradisaurus brevis (Dinosauria: Sauropodomorpha) from the late Triassic of Argentina and its phylogenetic implications. 
  5. Palaeontology (advance online publication) 
  6. DOI: 10.1111/j.1475-4983.2012.01198.x



 ブラジル南部にある三畳紀後期の地層(Caturrita Formation)で発見された恐竜化石について報告されています。

 単離した仙骨、関節した左恥骨と坐骨、単離した右坐骨の3つの化石が見つかっているそうです。 竜脚形類ではないかとされ、典型的な"古竜脚類"より原始的とされています。

 

  1. References:
  2.  
  3. Jonathas Souza Bittencourt, Átila Augusto Stock da Rosa, Cesar Leandro Schultz & Max Cardoso Langer (2012) 
  4. Dinosaur remains from the 'Botucaraí Hill' (Caturrita Formation), Late Triassic of south Brazil, and their stratigraphic context. 
  5. Historical Biology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/08912963.2012.694881



竜脚類ミーティング/ボン

 最近の情報交換は、ウェブ(ブログ)やメールから、ツイッターやフェイスブックに移ってきています。

 恐竜関係も同じです。今一番ホットな話題は、9日から11日までドイツのボンで開催されている竜脚類に関する国際ミーティングでしょう。

 「Biology of the Sauropod Dinosaurs: The Evolution of Gigantism」(German Research Foundation's Research Unit 533)ですが、ネットには情報はありません。

 ツイッターでいろいろとツイートされています(ハッシュタグ:#SauroBonn)。

 35個の卵化石が残されたマッソスポンデュルスの巣など、右側のカラムでも一部リツイートしています。




 ブラジルにある三畳紀後期(2億3000万-2億2800万年前)の地層で発見された竜盤類が記載されています。

 ただし、タイトルでは、"ステム竜脚形類(stem-Sauropodomorpha)"とされていますが、この表現は誤用です。"stem-"という接頭辞に続く"Sauropodomorpha "はクラウングループではありません。

 このあたり、A Three-Pound Monkey Brain で指摘されています。 

 

 頭部などが見つかっており、系統解析からは"ステム竜脚形類"となるそうです。竜脚形類の外群になるとのことで、いくつかの竜脚形類の特徴が無いそうです。

 学名は、Pampadromaeus barberenai (パンパドロメウス・バーベレナイ)で、"平原のランナー"の意味。発見された場所が、草の生えた平原(plane)にちなんでいます。

 ただ、論文タイトルにも要旨にも新種名がありません。新種記載の場合は、いずれかで示したほうがいいと思いますね。

 

 図は発見されている化石と、復元イラスト。推定体長は1.2メートルと小型です。

 長い足と短い前肢、2足歩行で復元されています。属名のように、足が速かったのかもしれません。

 歯の形状から、まだ十分に植物を噛めるほどではなく、雑食性だったとされています。

 

pampadromaeus.jpg 

 

  1. References:
  2.  
  3. Sergio F. et al., 2011
  4. New stem-sauropodomorph (Dinosauria, Saurischia) from the Triassic of Brazil.
  5. Naturwissenschaften (advance online publication)
  6. DOI: 10.1007/s00114-011-0858-0



 南アメリカにあるジュラ紀初期(約億9000万年前)の地層で発見された竜脚形類が記載され、Arcusaurus pereirabdalorum と命名されています。

 属名の由来は、"歩くサウルス"ではなくて、"Rainbow Reptile"。

 民主化後の初代大統領、ネルソン・マンデラ氏が就任した時、南アフリカを希望あふれる国にしようと、「Rainbow Nation(虹の国)」と呼んだことにちなんでいます。 

 著者の一人、Matthew F. Bonnan のブログ、Jurassic Journeysy で紹介されています。

 

 以下の図は、Arcusaurus pereirabdalorum の頭部。スケールは5センチですから、全長は15センチほど。

 

 

Arcusaurus_pereirabdalorum_skull.jpg   下は、系統関係。

  系統的には、プラテオサウルス類の外群で、 Efraasia と他の全ての派生する竜脚形類の姉妹群とされています。

 Efraasia はドイツにある三畳紀(Norian、約2億1000万年前)の地層から見つかっており、 上部 Elliot Formation (ジュラ紀初期)で発見されたアルクサウルスとは、2000万年ほどのギャップがあります。

 この年代のギャップと、アルクサウルスにはプラテオサウルス類の特徴もあることから、系統的な位置を疑問視する意見もあります。

 

 

Clad_Arcusaurus.jpg   

 

  1. References:
  2.    
  3. Adam M. Yates; Matthew F. Bonnan; Johann Neveling
  4. A new basal sauropodomorph dinosaur from the Early Jurassic of South Africa
  5. JVP, 31(3), Pages 610 - 625
  6. DOI: 10.1080/02724634.2011.560626



 以前もお知らせしましたが、16日からアメリカ自然史博物館で、恐竜展、"The World's Largest Dinosaurs" が開催されています。 

 大きなマメンチサウルスが展示のメインのようですが、そのような竜脚類がどのように大きくなったのか、同博物館のHow Did Sauropods Get So Big? で紹介されています。

 簡単にまとめると、長い首で動き回らず効率的とか、噛まずに丸呑みしたため頭が小さくて済んだとか、小さな卵をたくさん産んだためとか、温血で、鳥類の気嚢に似た肺のシステムを持っていたことなどを理由にあげています。

 なお、過去にニュースで紹介しましたが、ボン大学の Martin Sander らが竜脚類の巨大化についての論文を何報か発表しています。

 似たようなタイトルでずいぶんありますね。上に出てきた話は、ほとんど論文として報告されています。

  1. 竜脚類が巨大化した理由:2010/5/15
  2. 恐竜の心肺機能:2009/7/28
  3. 竜脚類はなぜ巨大化したのか?:2009/3/22
  4. 気嚢システムと巨大化:2009/3/5
  5. 竜脚類が巨大化したわけ:2008/10/12  

 

 Martin Sander は、アメリカ自然史博物館の展示にも参画しており、2004年からの竜脚類の研究の成果をまとめて出版しています。

 Biology of the Sauropod Dinosaurs で、日本語にすれば「竜脚類の生物学」で、22日発売予定です。

 副題の、"Understanding the Life of Giants "にあるように、特に、その巨体化(gigantism)にスポットを当てています。

 

 下は、カバーイメージ。個人的な好みでいうと、デジタルイメージは、なんとなく内容の信頼性が落ちるような気がします。できれば、実物の、手書き風のスケッチがよかったですね。

 

Biology_of_the_Sauropod_Dinosaurs.jpg

 

  編集者はドイツのチーム。ボン大学の、Nicole Klein と Carole T. Gee 、先の Martin Sander 、そして研究の資金援助した German Research Foundation の Kristian Remes です。

 多くの専門家か執筆していますが、編集チームがボン大学系だからでしようか、世界中の竜脚類の専門家を集めた、というわけではありません。

 

 インディアナ大出版局に簡単な説明と、Google プレビューがあります。

 栄養や生理、骨格にボディプラン、成長という観点から、巨大竜脚類の生物学についての最新知識を与える、といった例によって抽象的な表現です。

 以下の目次のほうが具体的内容がわかりやすいですね。

   

  1. List of Contributors
  2. Preface
  3. List of Institutional Abbreviations
  4.   
  5. Introduction
    1. Sauropod Biology and the Evolution of Gigantism: What Do We Know? / Marcus Clauss
  6.  
  7. Part 1. Nutrition
  8. 2. Sauropod Feeding and Digestive Physiology / Jürgen Hummel and Marcus Clauss
  9. 3. Dietary Options for the Sauropod Dinosaurs from an Integrated Botanical and Paleobotanical Perspective / Carole T. Gee
  10. 4. The Diet of Sauropod Dinosaurs: Implications of Carbon Isotope Analysis on Teeth, Bones, and Plants / Thomas Tütken
  11.  
  12. Part 2. Physiology
  13. 5. Structure and Function of the Sauropod Respiratory System / Steven F. Perry, Thomas Breuer, and Nadine Pajor
  14. 6. Reconstructing Body Volume and Surface Area of Dinosaurs Using Laser Scanning and Photogrammetry / Stefan Stoinski, Tim Suthau, and Hanns-Christian Gunga
  15. 7. Body Mass Estimation, Thermoregulation, and Cardiovascular Physiology of Large Sauropods / Bergita Ganse, Alexander Stahn, Stefan Stoinski, Tim Suthau, and Hanns-Christian Gunga
  16.  
  17. Part 3. Construction
  18. 8. How to Get Big in the Mesozoic: The Evolution of the Sauropodomorph Body Plan / Oliver W. M. Rauhut, Regina Fechner, Kristian Remes, and Katrin Reis
  19. 9. Characterization of Sauropod Bone Structure / Maïtena Dumont, Anke Pyzalla, Aleksander Kostka, and Andras Borbély
  20. 10. Finite Element Analyses and Virtual Syntheses of Biological Structures and Their Application to Sauropod Skulls / Ulrich Witzel, Julia Mannhardt, Rainer Goessling, Pascal de Micheli, and Holger Preuschoft
  21. 11. Walking with the Shoulder of Giants: Biomechanical Conditions in the Tetrapod Shoulder Girdle as a Basis for Sauropod Shoulder Reconstruction / Bianca Hohn
  22. 12. Why So Huge? Biomechanical Reasons for the Acquisition of Large Size in Sauropod and Theropod Dinosaurs / Holger Preuschoft, Bianca Hohn, Stefan Stoinski, and Ulrich Witzel
  23. 13. Plateosaurus in 3D: How CAD Models and Kinetic-Dynamic Modeling Bring an Extinct Animal to Life / Heinrich Mallison
  24. 14. Rearing Giants: Kinetic-Dynamic Modeling of Sauropod Bipedal and Tripodal Poses / Heinrich Mallison
  25. 15. Neck Posture in Sauropods / Andreas Christian and Gordon Dzemski
  26.  
  27. Part 4. Growth
  28. 16. The Life Cycle of Sauropod Dinosaurs / Eva-Maria Griebeler and Jan Werner
  29. 17. Sauropod Bone Histology and Its Implications for Sauropod Biology / P. Martin Sander, Nicole Klein, Koen Stein, and Oliver Wings
  30.  
  31. Part 5. Epilogue
  32. 18. Skeletal Reconstruction of Brachiosaurus brancai in the Museum für Naturkunde, Berlin: Summarizing 70 Years of Sauropod Research / Kristian Remes, David M. Unwin, Nicole Klein, Wolf-Dieter Heinrich, and Oliver Hampe

    Appendix: Compilation of Published Body Mass Data for a Variety of Basal Sauropodomorphs and Sauropods
    Index

 

 

    1. Biology_of_the_Sauropod_Dinosaurs_m.jpg
    2. 書名:Biology of the Sauropod Dinosaurs
    3. 出版社:Indiana Univ Press
    4. 発売日:2011年4月22日
    5. ISBN-10:0253355087
    6. ISBN-13:978-0253355089
    7. 価格:5,258円




       竜脚類の頭部化石が発見されることはまれで、頭部が見つかっていない竜脚類の全身骨格を組み立てる時に、似た仲間の頭部をつけたりする場合があります。

       しかし、近縁の種でも頭部が骨なっていたり、逆に、かけ離れた系統で似たような頭部が見つかったりして、混乱が生じます。

       今回、ブラジルにある白亜紀初期の地層から、ティタノサウルス類としては最も完全な頭部化石が発見され、国際研究チームが新種として記載しています。

       その頭部の長く突き出たような吻部は、一見、系統的にはかけ離れたジュラ紀のアパトサウルスに似ています。また、竜脚類の鼻腔は頭の一番上あたりにあるのですが、その鼻の穴が目の辺りまでへこんでいるのです。

       化石は、2008年に白亜紀初期(Aptian、1億2500万年?1億1200万年前)の地層(Quirico Formation)で発見されました。ティタノサウルス類の化石を多く産出する南米大陸ですが、南米からのティタノサウルス類としては、初めての頭部とされています。

       筆頭著者が所属するサンパウロ動物博物館(Museum of Zoology of Sao Paulo University)では、頭部の98%が見つかっているとあります。

       学名は、Tapuiasaurus macedoi で、属名は内陸部のインディアン"Tapuia" にちなんでいます。系統的には、進化したティタノサウルス類(advanced titanosaurian )のネメグトサウリダエ(Nemegtosauridae)に位置し、ラペットサウルスの姉妹群とされています。
       
       ラペットサウルスやネメグトサウルスは、よりも3000万年も近く後の地層から見つかっており、進化したティタノサウルス類の頭部に特徴的な、狭い歯冠、細長い吻部、退縮した鼻腔と前腹方向に傾斜した方形骨という特徴は、意外と早く、白亜紀前期に獲得されたようです。

       

       下は、頭部化石とイラスト。スケールバーは10センチです。 幅の狭い前上顎骨歯のついた細長い吻部、前方に傾斜した方形骨、眼窩レベルまでへっこんだ外部鼻腔が特徴的です。


      Tapuiasaurus_macedoi.jpg

       


       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

        次は、ネオサウロポーダ(Neosauropoda)の、キャリブレーション(時間較正)した系統関係(Calibrated phylogeny)です。時間の概念が無いクラドグラムに、タクソンが最初に出現した時間(地層の年代)を当てはめたもの。右から3番目の頭蓋骨のイラストが、Tapuiasaurus macedoi  です。 

       phylogeny_Neosauropoda.jpg

      1. References:
      2. A Complete Skull of an Early Cretaceous Sauropod and the Evolution of Advanced Titanosaurians.
      3. Zaher H, Pol D, Carvalho AB, Nascimento PM, Riccomini C, Larson P, et al.
        PLoS ONE 6(2): e16663. 2011



      カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
       

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