ジュラ紀後期の最新ニュース

エラフロサウルス再評価

 タンザニアで見つかったElaphrosaurus bambergi(エラフロサウルス・バンベルギ) といえば、新しい時代まで生きのびたコエルロサウリアと考えられたこともあった獣脚類です。

 オルニトミモサウリアとされた時もありましたが、最近では基盤的なケラトサウルスとされていました。ジュラ紀後期の地層で発見され、1920年に記載されています。

 今回、再評価された論文が報告されています。

 非常に細長くくびれた頚椎、強く変形した前肢のある拡張した肩帯、比較的小さな腸骨など、アベリサウロイデア(上科)のノアサウリダエ(Noasauridae、科)と共通する特徴が多いことが確認されています。

 新種か、アベリサウロイデア/ブラジル(2016年2月)で紹介していますが、アベリサウロイデアは、比較的小型のノアサウリダエと大型のアベリサウリダエの2つのクレードに大別されます。

 エラフロサウルスの推定全長は6メートルほどです。  そして今回、ノアサウリダエを2分するサブクレード、エラフロサウリナエ(Elaphrosaurinae、エラフォサウルス亜科)が提唱されています。



  1. References:
  2.  
  3. Oliver W. M. Rauhut and Matthew T. Carrano (2016) 
  4. The theropod dinosaur Elaphrosaurus bambergi Janensch, 1920, from the Late Jurassic of Tendaguru, Tanzania. 
  5. Zoological Journal of the Linnean Society (advance online publication) 
  6. DOI: 10.1111/zoj.12425
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 非常に保存状態の良い竜脚類のの幼体化石から、竜脚類では初めてとなる、尾背側の含気性 構造が報告されています。

 ユタ州にあるジュラ紀後期のモリソン層で発見されたもので、バロサウルスとされ、サイズは、成体の3分の1ほどしかないそうです。

 背側椎骨の含気性は、連続的に変化しており、1-4と8-9の椎骨の椎体が、大きな含気性フォッサ(骨にある窪みや空洞)で区切られているに対し、5-7の椎骨ではこれらのスペースは、浅いくぼみで占められています。

 これは竜脚類では初めてとなる尾と背側の含気性空間を示し、別々の気囊が、脊椎の前方および後方を含気化していたと考えられています。

 また、非鳥類型恐竜と鳥類で見られるパターンと一致し、竜脚類には鳥類様の肺があったさらなる証拠とされています。

 なお、竜脚類の含気性構造(2012年6月)では、ティタノサウリアでみられた、脊柱から尾にかけての含気性構造を、竜脚形類にあるPSP、気嚢は恐竜より前から進化か(2011年3月)では、基盤的竜脚形類(プラテオサウルスなど)での例を紹介しています。



  1. References:
  2.  
  3. Keegan M. Melstrom, Michael D. D'emic, Daniel Chure & Jeffrey A. Wilson (2016) 
  4. A juvenile sauropod dinosaur from the Late Jurassic of Utah, U.S.A., presents further evidence of an avian style air-sac system. 
  5. Journal of Vertebrate Paleontology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/02724634.2016.1111898
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 1年ほど前ですが、ブロントサウルス復活のニュースが話題になりました。 ブロントサウルス復活/ディプロドシダエの新たな系統解析(2015年4月)で紹介しています。

 その中で、断片的な標本である Diplodocus longus が疑問名となり、ディプロドクス属のホロタイプが、D. carnegii に変更されると紹介しました。 

 今回、ファーストオーサーのEmanuel Tschopp により、改めて、ディプロドクスのホロタイプを D. longus から、 D.carnegii とする報告があります。

 どちらも、ジュラ紀後期のモリソン層から発見されていますが、 D. carnegii のホロタイプは保存状態もよく、ほとんどが関節しています。

 今回のタイプ標本変更により、ディプロドクスの属名や、ディプロドコイデア(diplodocoidea)のクレード名は維持されるとされています。 ブロントサウルスが復活しただけでなく、ディプロドクスも生き延びたのですね。



  1. References:
  2.  
  3. Case 3700 
  4. Diplodocus Marsh, 1878 (Dinosauria, Sauropoda): proposed designation of D. carnegii Hatcher, 1901 as the type species. 
  5. Emanuel Tschopp and Octávio Mateus (2016) 
  6. Bulletin of Zoological Nomenclature 73(1): 17-24
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 ステゴサウルスの中でも、Stegosaurus stenopsは、1884年に記載された最も有名な恐竜の一つです。

 また、米国のジュラ紀後期の地層(モリソン層)で発見された (Stegosaurus longispinusは、1914年に記載されています。 

 今回、そのStegosaurus longispinus とされていた古い標本について、新たな属が提案され、Alcovasaurus longispinus と命名されています。

 ユタ大は、ステゴサウルスより、25%短い尾に、2倍の長さのスパイクと、紹介しています。 短い尾なので降ることはできず、長いスパイクは理にかなっているとされています。




  1. References:
  2.  
  3. Galton, Peter M. & Carpenter, Kenneth (2016) 
  4. The plated dinosaur Stegosaurus longispinus Gilmore, 1914 (Dinosauria: Ornithischia; Upper Jurassic, western USA), type species of Alcovasaurus n. gen. 
  5. Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie - Abhandlungen 279(2): 185-208 
  6. DOI: http: // dx.doi.org/10.1127/njgpa/2016/0551
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 Yinlong downsi(インロング)といえば、中国・新彊にあるジュラ紀後期の地層(Shishugou Formation)で発見された最古のケラトプシアです。

 系統関係は、プシッタコサウリダエは、ネオケラトプシア/モザイケラトプス(2015年9月)で紹介しています。

 今回、ホロタイプと、3つの頭部などの他の標本から、頭部と下アゴについて詳細に記載されています。

 他の基盤的なケラトプシアとの比較から、この報告では、チャオヤンゴサウリダエ(Chaoyangsauridae、科)に属するとされています。

 モザイク状に、原始的と派生的な特徴を合わせ持つことは、初期のケラトプシアではよくあることです。

 今回も、プシッタコサウルスや他のネオケラトプシアが持つ派生的な特徴も共有しており、初期のケラトプシアの形質の進化は複雑とされています。

 なお、小さな標本に、犬歯状の前上顎骨歯が存在しているのですが、これは性的二形か個体差としています。




  1. References:
  2.  
  3. Feng-Lu Han, Catherine A. Forster, James M. Clark & Xing Xu (2015) 
  4. Cranial anatomy of Yinlong downsi (Ornithischia: Ceratopsia) from the Upper Jurassic Shishugou Formation of Xinjiang, China. 
  5. Journal of Vertebrate Paleontology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/02724634.2015.1029579
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 ブロントサウルス復活/ディプロドシダエの新たな系統解析(2015年4月)でも紹介しているように、モリソン層では、アパトサウルスは豊富に見つかっています。  

 一方、そのひとつ、ユタ州のクリーブランド・ロイド採石場からはアロサウルスなどは見つかっていますが、アパトサウルスは未発見だったようで、今回、初となる化石が報告されています。

 ディプロドシダエ(科)の中でも、他の大陸では、このクレードが見つかっていないとことから、ジュラ紀後期に、このグループは北米で繁栄し、はっきりはしませんが、ここが起源ではないかとされています。

 


  1. References:
  2.  
  3. John R. Foster & Joseph E. Peterson (2015) 
  4. First report of Apatosaurus (Diplodocidae: Apatosaurinae) from the Cleveland-Lloyd Quarry in the Upper Jurassic Morrison Formation of Utah: abundance, distribution, paleoecology, and taphonomy of an endemic North American sauropod clade. 
  5. Palaeoworld (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.palwor.2015.11.006
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 近年はアジアからの発見で、ケラトプシア(角竜)の起源や初期進化も少しずつ判明してきています。プシッタコサウルスの分岐時期や系統的な位置関係も、気になるところです。

 プシッタコサウリダエは、ネオケラトプシア/モザイケラトプス(2015年9月)では、プシッタコサウリダエは、ネオケラトプシアの位置づけで、比較的派生的なクレードと紹介しました。

 しかし、分岐時期とされるジュラ紀後期と、化石が見つかっている白亜紀前期の間には、空白期間があり、特にジュラ紀の地層からの、さらなる発見が必要とされていました。

 今回、中国・ジュンガル盆地にあるジュラ紀後期早期(オックスフォーディアン、約1億6000万年前)の地層(Shishugou Formation)で発見された基盤的ケラトプシアが記載されています。

 その中で、プシッタコサウルスの系統は、ネオケラトプシアではなく、基盤的なケラトプシアの系統で、約1億6000万年前の、ジュラ紀後期になる前には分岐したとされています。


 学名は、Hualianceratops wucaiwanensis (フアリアンケラトプス・ウカイワネンシス)で、頭部骨のほとんどに、織目構造の装飾(textured ornamentation)があることから、属名の意味は、"装飾的な顔"です。

 PLOS Paleoで、Andrew Farke は、いぼいぼ顔(warty face)と紹介しています。もちろん、骨の表面の模様であって、実際の顔ではありませんね。

 全長は1メートルほど、基盤的なケラトプシアだけに、2足歩行だったようです。

 図は、今回示されている分岐図(Fenglu Han et al.,2015)。系統的には、基盤的ケラトプシアの位置づけで、チャオヤンゴサウリダエ(Chaoyangsauridae、科)の系統です。

 チャオヤンゴサウリダエの中で、フアリアンケラトプスは、基盤的なケラトプシアであるインロング(Yinlong downsi ) 、チャオヤングサウルス(Chaoyangsaurus youngi)、シュアンフアケラトプス(Xuanhuaceratops niei )の3種と多系統をなしています。

 また、このチャオヤンゴサウリダエは、プシッタコサウルス属とは姉妹群をなすという新しい仮説を提唱しています 。


Hualianceratops wucaiwanensis.jpg


 今回の結果は、ネオケラトプシアが基盤的な位置で、幾つかの系統に分岐したとされ、下図に示すように、その分岐は、約1億6000万年前の、ジュラ紀後期になる前に始まったとされています。

 プシッタコサウルスやネオケラトプシアの出現が白亜紀前期なことから、ジュラ紀後期前に分岐してから、約1億2500万年前の白亜紀前期まで、化石が見つかっていない長い空白期間が存在します。

 下図で、灰色の線がその系統で、ゴースト系統(ghost lineage)とされています。

 ただ、分岐図に地質年代を当てはめたりすると、多くの場合、こういう空白期間は出てきそうですが。



Ghost lineages.jpg


 フアリアンケラトプスの記載は、主に頭部化石標本 (IVPP V18641) に基づいたもので、Shishugou Formation 上部からは、インロングに続いて、2種目の基盤的ケラトプシアです。  

 プシッタコサウルスと共通した派生的な特徴と、基盤的なケラトプシアであるインロング、チャオヤングサウルス、シュアンフアケラトプスと共通の特徴を持つとされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Fenglu Han, Catherine A. Forster, James M. Clark & Xing Xu (2015) 
  4. A New Taxon of Basal Ceratopsian from China and the Early Evolution of Ceratopsia. 
  5. PLoS ONE 10(12): e0143369 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0143369
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 ロシアにあるジュラ紀後期の地層で発見された、新種の"オルニトミモサウリア"に関する記載論文が報告されています。

 断片的な"前肢"と尾椎、角質のウロコの印象が見つかったというもの。 しかし、Theropoda によると、"前肢"とされているのは後足で、獣脚類ではなく基盤的な鳥盤類としています。

 Kulindadromeus zabaikalicus(クリンダドロメウス・ザバイカリクス) のジュニアシノニムではないかという話もあります。 

 クリンダドロメウスについては、獣脚類の原羽毛と相同か/クリンダドロメウスの羽毛状構造(2014年7月)で紹介していますが、シベリアで発見された羽毛状構造を持つ基盤的新鳥盤類(neornithischia)です。 

 2015年、いや、いままで最悪の恐竜の論文のひとつとの話もありますね。

 とりあえず、論文要旨に記載してあるのは以下のとおり。



 学名は、Lepidocheirosaurus natatilis (レピドケイロサウルス・ナタティリス)です。属名の意味は、"hand scale saurian(手にウロコのあるトカゲ)"です。

 レピドケイロサウルスは、形態的には、 Nqwebasaurus thwazi (ヌクウェバサウルス)に似ているそうです。

 ヌクウェバサウルスは、南アフリカにある白亜紀前期の地層で見つかっており、アフリカ初のオルニトミモサウリア、Nqwebasaurus thwazi(2012年6月)で紹介しています。



  1. References:
  2.  
  3. V. R. Alifanov and S. V. Saveliev (2015) 
  4. The Most Ancient Ornithomimosaur (Theropoda, Dinosauria), with Cover Imprints from the Upper Jurassic of Russia. 
  5. Paleontological Journal 49 (6): 636-650 
  6. doi:10.1134/S0031030115060039
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恐竜の連続歩行/ウルグアイ

 南米ウルグアイにあるジュラ紀後期から白亜紀前期にかけての地層(Tacuarembó Formation)で見つかった足跡化石について報告されています。

 恐竜の楽園としては、ウルグアイからの恐竜化石の紹介は、初めてですね。

 竜脚類のものとされる2つの連続歩行と、鳥脚類と小型獣脚類のものとされる4つの足跡化石が見つかっています。
 


  1. References:
  2.  
  3. Valeria Mesa & Daniel Perea (2015) 
  4. First Record of Theropod and Ornithopod Tracks and Detailed Description of Sauropod Trackways from the Tacuarembó Formation (Late Jurassic-?Early Cretaceous) of Uruguay.
  5. Ichnos 22(2): 109-121 
  6. DOI:10.1080/10420940.2015.1030075
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 ユタ州にあるジュラ紀後期のモリソン層といえば、多くの恐竜の連続歩行が見つかっていることで有名です。

 そのユタ州では、2016年3月に、世界で初めて、恐竜の足跡化石に特化した博物館(MOAB GIANTS)がオープンします。

 今回、その一部(Salt Wash Member)を再調査したところ、今までヨーロッパでしか見つかっていない大型獣脚類の足跡化石が見つかリ、報告されています。Nationalgeographicが紹介しています。


 Hispanosauropus (ヒスパノサウロプス)と命名されている足跡化石です。

 Megalosauripus とは異なり、足跡の主はアロサウリロイデア(上科)ではないかとされていますが、スピノサウロイデア(トルボサウリダエ)やケラトサウロイデアの可能性も捨てきれないようです。

 北米やイベリア半島の両方で、アロサウルス属やトルボサウルス属、ケラトサウルス属の大型獣脚類が見つかっていることから、それらの足跡化石ではないかとされています。

 このあたりでは、ヒスパノサウロプスと、それと似たような足跡化石がありふれていることから、モリソン層形成の初期に、大型獣脚類相のターンオーバー(タクソンの入れ替わり)があったのではないかとされています。





  1. References:
  2.  
  3. John R. Fostera, 2015 
  4. Theropod Dinosaur Ichnogenus Hispanosauropus Identified from the Morrison Formation (Upper Jurassic), Western North America 
  5. Ichnos, 22(3-4) 
  6. DOI:10.1080/10420940.2015.1059335
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 ステゴサウルスはよく知られた恐竜にもかかわらず、産出する化石がバラバラだったり、関節していても部分的だったりと、保存状態のよい標本は稀なのです。

 今回、ワイオミング州のモリソン層で発見された保存状態のいいステゴサウルス(Stegosaurus stenops )の頭部より後ろの骨格について再記載されています。なお、頭部については別論文で報告されるようです。  

 全ての骨格要素と、新たに70以上の特徴が示されています。 1877年にステゴサウルスが初めて記載されてから1世紀以上になるのですが、詳細な記載は、初めてとされています。

 図は、骨格復元モデル(Susannah Catherine Rose Maidment,et al., 2015)。骨盤の上には、1枚だけ、大きなプレート(Plate 13)がありますね。

 前部が欠けているのですが、高さ(背腹方向の最大長)は、785mmとされています。その前後より、25センチほど長いプレートです。

 今までの復元に比べて、首が長いような気もしますね。ノドの部分を保護する皮骨もありません。


Stegosaurus stenops.jpg



 2003年に発見された標本(NHMUK PV R36730)で、完全に成熟していない個体とされています。  

 愛称はソフィーですが、性別は不明です。
 
 成熟した雌にしかない骨髄骨(medullary bone)が見られないことから、オスか妊娠していないメスとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Susannah Catherine Rose Maidment, Charlotte Brassey & Paul Michael Barrett (2015) 
  4. The Postcranial Skeleton of an Exceptionally Complete Individual of the Plated Dinosaur Stegosaurus stenops (Dinosauria: Thyreophora) from the Upper Jurassic Morrison Formation of Wyoming, U.S.A. 
  5. PLoS ONE 10(10): e0138352. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0138352
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 恐竜はどんな色をしていたのか、古色(palaeo-colours)は再現できるのか、これは最も興味のあるテーマの一つです。

 初めての恐竜の全身の体色の再現としては、初の体全体の色の再現(2010年2月)で、Anchiornis huxleyi (アンキオルニス・ハックスレイ)の全身の羽毛の色について紹介しています。

 メラニンを作り出すメラノソーム化石の分布パターンから推定したものです。なお、アンキオルニスは、始祖鳥より古い時代の羽毛恐竜で、パラベス(Paraves)の系統ですが鳥類ではありません。

 一方、メラノソームとする化石は、細菌由来だとする説もあります。このあたり、メラノソームか微生物か/羽毛化石の微小体(2014年3月)で紹介しています。

 そもそも、メラニンやメラノソームは総称であり、いったい何が見つかっているのか、色素(有機物)や微小器官(タンパク質)そのものなのか、その痕跡(化石)なのか、はっきりしておくことが必要です。

 今回、アンキオルニスの新しい標本の羽毛化石から、確実なメラニン(ユーメラニン)そのものと、メラノソーム(ユーメラノソーム)の印象化石が見つかったとする報告があります。

 ほぼ細胞レベルでのイメージニングと化学分析であり、羽毛化石に、メラノソーム(ユーメラノソーム)とその中にあるメラニン(ユーメラニン)が保存されている確実な証拠だとされています。

 図は、ユーメラニンの赤外吸収スペクトルの比較(Lindgren, J. et al., 2015)。

 トサカ(forecrown)の羽毛のユーメラニンは、天然のユーメラニンに類似しており、色素の有機構造自体が残されていたことになります。 ただし、ポリマーなのか、吸収スペクトルはブロードで、細かい吸収からなる特徴がはっきり出ているわけではありませんね。

 もっとも、爬虫類と恐竜の皮膚の色(2014年1月)で紹介しているように、たとえ色素が残っていたとしても、実際の体色は複数の色素の組み合わせによって微妙に変化します。なので、最終的な体の色は、まだまだアートの世界ですね。

 今回見つかったのは、ユーメラニンとそれを作り出すユーメラノソームなので、アンキオルニスは黒褐色系の色を呈していたようですね。
 なお、鳥類からのユーメラニンは、甘粛鳥化石から、ユーメラニンそのものの証拠(2011年10月)で紹介しています。



IR_Anchiornis.jpg

 羽毛の色には、メラニンやカロチノイドなどが関与します。  

 メラニンは、動植物の体内で生成される色素(化学物質)の一種です。

 メラニンには、主に、黒褐色系のユーメラニン(eumelanin、真性メラニン)と、橙赤色系のフェオメラニン(pheomelanin、亜メラニン)があり、それぞれのメラニンを作り出す細胞内器官であるメラノソームは、ユーメラノソーム(eumelanosome)、フェオメラノソーム(pheomelanosome)です。  

 今回は、遼寧省にあるジュラ紀中期から後期にかけての地層(Tiaojishan Formation)で発見された新しい標本(YFGP-T5199)に残された14枚の羽毛化石を調べたもの。  

 電顕や飛行時間型質量分析(TOF-SIM)、顕微赤外分光などによる解析を行っています。  

 その結果、メラニン色素の一種で、黒色系のユーメラニン(真性メラニン)を見出し、そのサイズや形状、分布などは、細菌細胞とは異なり、微生物の分裂を示す連続的な鎖状態を示していないとされています。  

 また、ユーメラノソームは、棒状の微小体の印象型として残り、こちらは、ユーメララノソームそのものではなくて、残遺物化石(remnant)です。  

 さらに、羽毛ケラチンに類似した繊維状構造も観察されています。  ケラチンのタンパク質成分は検出されていませんが、ユーメラニンと、ミネラルの置換によるリン酸カルシウムからなる繊維状の微細組織が見出されています。  

 なお、今回のメラノソームは、細長い形状が特徴的とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Lindgren, J. et al., 2015 
  4. Molecular composition and ultrastructure of Jurassic paravian feathers. 
  5. Sci. Rep. 5, 13520; 
  6. doi: 10.1038/srep13520
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 ジュラシック・ワールドでは、ほんの一瞬ですが、歯をむきだしにした翼竜が登場しますね。

 ディモルフォドンだそうで、魚食性とされる翼竜が、あんなに凶暴だったのかと不思議ですが、まあ、娯楽映画ですから、そのほうが迫力があるのでしょう。

 今回、ディモルフォドンに近い、保存状態が良いランフォリンクス・ムエンステリ(Rhamphorhynchus muensteri)の標本(TMP 2008.41.001)について報告されています。

 3次元的に保存され、軟組織化石又はその印象化石、胃の内容物である脊椎動物化石、翼竜としては初めてのコプロライト(糞石)と思われる化石が残っています。

 論文のタイトルは、軟組織ですが、軟組織そのもの(タンパク質等)ではなくて、化石化した軟組織です。

 翼竜の軟組織化石が残るのは珍しく、飛膜や食事内容など、いくつかの翼竜に関する仮説を裏付ける情報を提供しています。

 下図は、その頭部(David Hone et al., 2015)。上顎には12本、下顎には、10本の歯があり、これは通常より多いそうです。口を閉じると、歯が口からはみ出すタイプですね。スケールバーは50mmです。
 




Rhamphorhynchus muensteri.jpg


 そもそも、ランフォリンクス・ムエンステリといえば、1831年に記載された比較的小型の翼竜で、古くから知られ、100以上もの標本が知られています。  

 Rhamphorhynchus(Wikipedia)で、その生態などについても、いろいろと報告されています。Wikipediaでも、日本語のランフォリンクスは貧弱ですね。

 
 今回の標本が発見されたのは、ドイツ、ゾルンフォーフェン。ここは、始祖鳥化石で知られているように、保存状態のいい化石を産出することで有名です。

 ゾルンホーフェン化石図譜 (2)(2007年7月)で紹介していますが、美しい翼竜化石も多数見つかっており、その一部は、pterosaurier で見られます。

 標本は、1965年に、シェルンフェルド(Schernfeld)砕石場で発見され、2008年にカナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館が購入したもの。 骨の状態などから、成体に近いとされています。



Rhamph_DB.jpg


 上は、ランフォリンクスの復元イラスト、Rhamphorhynchus(Wikipedia)から。この系統は、グライダーのように、アスペクト比(縦横比)の大きい細長い皮膜と尾膜(tail vane)が特徴です。

 今回の標本からは、飛膜は、主膜である側膜(brachiopatagium)や尾膜など、大部分が保存されています。膜そのものというより、繊維の印象が残され、実際よりは縮んでいるようです。  

 腿間膜(uropatagium)で繊維の痕跡も確認されています。腿間膜は後ろ足の間にある膜で、翼竜の皮膜パターン(2011年3月)を参考に。  

 胃の内容物から、魚を食べていたことははっきりとしていますが、他の水生動物の化石も見つかっていることから、単に魚だけを食べていたというわけではないようです。   

 



  1. References:
  2.  
  3. David Hone, Donald M. Henderson, François Therrien & Michael B. Habib (2015) 
  4. A specimen of Rhamphorhynchus with soft tissue preservation, stomach contents and a putative coprolite. 
  5. PeerJ 3:e1191 
  6. doi: https://dx.doi.org/10.7717/peerj.1191

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 中国、四川省にあるジュラ紀前期の地層(Ziliujing Formation)で発見された、基盤的な竜脚形類のものとされる足跡化石が新種記載されています。

 竜脚形類と竜脚類との区別がつくのかな、と思われがちですが、識別されています。

 むしろ、両者の特徴を併せ持っているのが特徴です。骨格化石が見つかっていることもあり、竜脚形類の足跡化石とされています。

 連続歩行で、Liujianpus shunan と命名されています。

 ジュラ紀初期の基盤的竜脚形類の足跡化石、オトゾウム(Otozoum)属や、竜脚類の足跡化石、ブロントポドス(Brontopodus)属に関連したユニークな特徴の組み合わせを持っているとのことです。

 巨大動物の足跡化石/モロッコ(2015年1月)では、"Otozoum"を"巨大動物"と訳したのですが、基盤的竜脚形類のようです。 そのような組み合わせですが、足跡の主は、竜脚形類とされています。

 このあたり、地理的および時系列的に近い地域から、竜脚形類の骨格化石が見つかっていることからもサポートされています。



  1. References:
  2.  
  3. Lida Xing, Martin G. Lockley, Jianping Zhang, Hendrik Klein, Daqing Li, Tetsuto Miyashita, Zhongdong Li & Susanna B. Kümmell (2015) A new sauropodomorph ichnogenus from the Lower Jurassic of Sichuan, China fills a gap in the track record. Historical Biology (advance online publication) DOI:10.1080/08912963.2015.1052427
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 ツリアサウリア(Turiasauria)は、真竜脚類のクレードで、ジュラ紀中期から白亜紀前期( バトニアン からアプティアン早期)までと、比較的長い期間分布してました。

 代表種は、Turiasaurus riodevensis の頭部構造と系統関係(2012年3月)で紹介していますが、ヨーロッパ最大級とされる竜脚類です。

 幾つかの種は、ハート型の歯を持っているとのことで、このあたり、Science の論文(PDF)に映像があります。
 
 今回、ポルトガルにあるジュラ紀後期の地層で見つかった、これらの仲間のものとされる歯の化石について報告されています。

 43の歯の化石から、3つの形態型が示され、歯の型状に変化が観察されるのは、他の竜脚類で歯列にそって、へら状/スプーン状と、その形態的に変化があることと一致するとされています。


 



  1. References:
  2.  
  3. Pedro Mocho, Rafael Royo-Torres, Elisabete Malafaia, Fernando Escaso, Bruno Silva & Francisco Ortega (2015) 
  4. Turiasauria-like teeth from the Upper Jurassic of the Lusitanian Basin, Portugal. 
  5. Historical Biology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/08912963.2015.1049948
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 竜脚類は、どこの大陸でも同じような種類がいたのかと思えば、そうではないようですね。

 特に、系統によっては、珍しいクレードもあるようです。今回、ジュラ紀後期の南米からは初めてとされるディプロドシナエ(Diplodocinae、ディプロドクス亜科)について報告されています。

 ディプロドコイデア(ディプロドシナエ)といえば、ジュラ紀後期を代表する竜脚類のひとつ。北米では一般的だったこの仲間、南米ではこれまで見つかっていなかったのですね。

 チリにあるジュラ紀後期(ティトニアン後期)の地層(Toqui Formation)で発見された竜脚類化石で、植物食の基盤的テタヌラエ・チレサウルス/チリ(2015年4月)と同じ地層で、パタゴニア地方です。

 断片的な化石ですが、ティタノサウルス形類、ディプロドコイデア(ディプロドシナエ)、そして不確定なグループの少なくとも3つの系統を示し、竜脚類は意外と多様だったと考えられてといます。





  1. References:
  2.  
  3. Leonardo Salgado, Fernando E. Novas, Manuel Suarez, Rita de la Cruz, Marcelo Isasi, David Rubilar-Rogers & Alexander Vargas (2015) 
  4. Upper Jurassic sauropods in the Chilean Patagonia. 
  5. Ameghiniana (advance online publication) 
  6. doi:10.5710/AMGH.07.05.2015.2883
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 ロックレイが、ダイナソーリッジで発見された恐竜足跡化石についてレビューしています。

 コロラド州にあるジュラ紀後期のモリソン層にあり、1877年より知られた世界的に有名な足跡化石産地です。

 ステゴサウルスやアパトサウルス、ディプロドクスのものとされる足跡化石が見つかっていますが、詳細な報告はほとんど無いそうです。

 今回、64箇所ある他のモリソン層の足跡化石と比較しています。



  1. References:
  2.  
  3. Martin G. Lockley, Richard T. McCrea & Lisa G. Buckley (2015) 
  4. A review of dinosaur track occurrences from the Morrison Formation in the type area around Dinosaur Ridge 
  5. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.palaeo.2015.05.018
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 獣脚類といえば、なんでもかんでも「ティラノサウルスの親類」とするマスコミも困ったものですが、古生物の世界でも、古くに報告された種名は、安易に多用されてきました。

 例えば、鳥脚類といえばイグアノドン・・・などもそうですね。翼竜では、ジュラ紀の小型種、Rhamphorhynchus(ランフォリンクス)です。

 1847年に報告された翼竜としては史上2番めに古い属なこともあり、いくつかの断片的な化石がこの属とされ、ゴミ箱とされてきた歴史があります。

 その後のレビューにより、ランフォリンクスは、ドイツ南部にあるジュラ紀後期(キンメリッジアンからテイトニアン)の翼竜に限定される単系統とされています。

 今回、英国にあるジュラ紀の地層(Kimmeridge Clay Formation)で発見された完全な右翼化石について報告されています。

 ドイツ以外では初めてのランフォリンクス属の標本で、指骨1と2の比に特徴があることから、ランフォリンクス属の新種ではないかとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Michael O'Sullivan & David M. Martill (2015) 
  4. Evidence for the presence of Rhamphorhynchus (Pterosauria: Rhamphorhynchinae) in the Kimmeridge Clay of the UK. 
  5. Proceedings of the Geologists' Association (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.pgeola.2015.03.003
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 必ずしも「獣脚類=肉食」ではなくて、植物食も珍しくはありません。そもそもクレード名は単なる記号に過ぎず、「獣」や「哺乳」は、その特徴を示すわけではありません。

 植物食の獣脚類としては、オルニトミモサウリア、テリジノサウリア、オヴィラプトロサウリアが知られています。いずれも白亜紀で、植物食は複数の系統で独立して進化したようです。

 今回、チリ南部にあるジュラ紀後期(Tithonian、約1億4500万年前)の地層(Toqui Formation)で発見された植物食の獣脚類が記載されています。

 基盤的テタヌラエ(tetanurae、テタヌラ類)で、学名は、Chilesaurus diegosuarezi(チレサウルス・ディエゴスアレチ)です。
 属名はチリに、種小名は化石を発見した当時7歳の少年にちなんでいます。

 図は時間を加味した系統関係(Fernando E. Novas et al., 2015)。チレサウルスは中央です。植物食の系統は、緑で示されています。

 従来の植物食獣脚類は、鳥類に近い系統でしたが、今回は、より基盤的な位置で、植物食という特徴は、はかなり以前でも獲得されていたようです。

 なお、恐竜と鳥の指の問題を解くケラトサウリア(2009年6月)で、植物食の獣脚類、リムサウルス(Limusaurus inextricabilis)を紹介していますが、今回の図には含まれていません。ジュラ紀後期のケラトサウリアで、クチバシがあります。


 
  Chilesaurus.jpg
 チレサウルスは、チリで発見されたジュラ紀の恐竜としては、初めての完全な化石とされています。  成長段階の異なる複数の標本が見つかっており、成体の推定体長は、3メートルほどとされています。  

 モザイク的に複数の系統の特徴を合わせ持ち、平たい葉のような歯の形状から、完全に植物食だったと考えられています。


 


  1. References:
  2.  
  3. Fernando E. Novas, Leonardo Salgado, Manuel Suárez, Federico L. Agnolín, Martín D. Ezcurra, Nicolás R. Chimento, Rita de la Cruz, Marcelo P. Isasi, Alexander O. Vargas & David Rubilar-Rogers (2015) 
  4. An enigmatic plant-eating theropod from the Late Jurassic period of Chile. 
  5. Nature (advance online publication) 
  6. doi:10.1038/nature14307
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 現生の哺乳類や鳥類など、オスとメスで外観が異なる性的二型はよく見られる現象です。

 今回、モンタナにあるジュラ紀後期のモリソン層で見つかったステゴサウルス属、Stegosaurus mjosi の背中にあるプレートで、性的二型の決定的な証拠を確認したとする報告がありまます。

 今回のポイントは、性に関係ない個体差や種内変化、成長に伴う個体発生的な変化ではないことを、どう否定したのかという点と、プレート以外に違いのない標本のオスとメスをどうやって区別したのかという点です。

 ただし、Science には、十分に成熟していない標本などと、問題点を指摘するコメントもあります。

 復元イラストに示すように、オスのプレートは丸く、大きな表面積で目立とうとし、メスのプレートは背が高く尖っています(Evan Thomas Saitta, 2015)

 ステゴサウルスの復元でよく見かける尖ったプレートは、この種のメスの形状に似ていますね。 

 ディスプレイ指向のプレート形態から、オスとオスが競争したというより、メスガオスを選んだのではないかとされています。

 交尾の姿勢は不明ですが、オスのことを考えると、メスのプレートは尖っていない方がいいと思いますね。




Stegosaurus mjosi.jpg


 今回の標本では、大腿骨や脛骨に、産卵時にカルシウムの貯蔵組織となる髄骨は見つかっておらず、また、腹腔内に卵が見つかっているわけでもありません。  

 では、どうやって、標本のオスとメスを区別したのか。それは、現生の牛類(bovid)の角からの推定です。  

 幅広く楕円形で、他方より45%表面積が大きいプレートは、その成長や維持に、より大きなエネルギーを使うとされ、エネルギー的な観点から、こちらのプレートをオスのものとしています。

 一方、幅が狭くて背が高いプレートは、メスのものとされています。 

 また、性的二型以外の可能性については、次のような点から否定されています。



  異なる種:異なる種が共存したニッチ分割(niche partitioning)の証拠が無いため、異なる種である可能性は無い。    

  1. 個体発生的な違い:組織学的には、十分に成長した個体であり、成長に伴う個体発生的な違いではない。また、同一個体では、プレートは、1つの型のみで、混在することもない。  

  2. 性に関係ない変化:性に関係ない変化は、中間形態を示すのですが、今回、中間形態が無い。  

  3. タフォノミー:少なくとも5個体が同一層準で見つかり、水で流されたり、スカベンジャーによって運ばれたのではない。このことから、オスとメスが共存し、社会性があったのではないかと、考えられています。
 


 


  1. References:
  2.  
  3. Evan Thomas Saitta (2015) 
  4. Evidence for Sexual Dimorphism in the Plated Dinosaur Stegosaurus mjosi (Ornithischia, Stegosauria) from the Morrison Formation (Upper Jurassic) of Western USA. 
  5. PLoS ONE 10(4): e0123503. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0123503
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カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

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