白亜紀後期の最新ニュース

リライノサウルスの体軸骨格

 リライノサウルス(Lirainosaurus astibiae )といえば、華奢で小型のティタノサウルス類で、スペイン北部にある白亜紀後期の地層で発見され、1999年に記載されています。

 昨年5月には、幼体と成体で異なる歯の摩耗面/リライノサウルスで、歯の化石からわかる食性変化について紹介しています。

 今回、新しい標本を含め、すべての脊椎骨をレビューした論文が報告されています。図とその説明は無料で見られます。


 特に前脊椎関節突起(prezygapophyses)と骨幹(diapophyses)で、興味深い変化が見られるそうです。

 それらの体軸の特徴の組み合わせは、リライノサウルスが、サルタサウリナエ(Saltasaurinae)に近い派生したリソストロティアン(lithostrotian)であることを示すとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Verónica Díez Díaz, Xabier Pereda Suberbiola & José Luis Sanz (2013) 
  4. The axial skeleton of the titanosaur Lirainosaurus astibiae (Dinosauria: Sauropoda) from the latest Cretaceous of Spain.
  5. Cretaceous Research (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2013.03.002



安定同位体から古環境の推定

 歯の化石に含まれる安定同位体の分析により、当時の気温などの古環境がわかります。

 今回、スペインにある白亜紀後期の地層で発見されたクロコダイル、獣脚類、竜脚類の歯の化石について解析し、白亜紀後期のイベリア半島の古気候や古環境について考察した論文が報告されています。

 エナメル質や象牙質におけるリン酸塩中の酸素安定同位体比(δ18OPO4)の違いなどを調べたもの。

 例えば、クロコダイル類と恐竜の酸素安定同位体比(δ18OH2O値)から計算された平均気温は、化石が見つかった2つの地層水準で増加傾向を示しているとしています。


 また、竜脚類の平均炭素安定同位体比(δ13C値)は、−11.1 ± 0.2‰とされています。 光合成による同位体分別で13Cの割合が減るのですが、この値は、C3型植物の予測範囲内としています。



  1. References:
  2.  
  3. Laura Domingo, Fernando Barroso-Barcenilla and Oscar Cambra-Moo (2013) 
  4. Paleoenvironmental reconstruction of the "Lo Hueco" fossil site (Upper Cretaceous, Cuenca, Spain): preliminary stable isotope analyses on crocodilians and dinosaurs. 
  5. Palaios 28(3): 195-202 
  6. doi: 10.2110/palo.2012.p12-097r



 カナダのアルバータ州にある白亜紀後期(約8500万年前)の地層で発見された新種のパキケファロサウルス類(Pachycephalosauridae)が記載されています。AFPBB などが紹介しています。

 パキケファロサウルス類の系統関係を再構築した結果、その多様性はかなり過小評価されているとしています。

 これは、大型恐竜に比べて、小型の恐竜化石は残りにくいという保存上のバイアスがあるため、以前から考えられてるよりも多様な小型恐竜が存在したと考えらるためです。

 中でも、パキケファロサウルス類の多様性は、他の小型恐竜よりもかなり大きかったと考えられています。

 
 今回の新種は、北米大陸最古のパキケファロサウルス類ではないかとされ、体長1.8メートルと比較的小型です。    

 学名は、Acrotholus audeti で、属名は、ギリシャ語で「高いドーム」を意味しています。


 

  1. References:
  2.  
  3. David C. Evans, Ryan K. Schott, Derek W. Larson, Caleb M. Brown & Michael J. Ryan (2013) 
  4. The oldest North American pachycephalosaurid and the hidden diversity of small-bodied ornithischian dinosaurs. 
  5. Nature Communications 4 : Article number: 1828
  6. doi:10.1038/ncomms2749



 ユタ州南部にある白亜紀後期の地層(Kaiparowits Formation )で発見された翼竜の指骨化石が報告されています。全文が読めます。
 翼の先端にあたる第4指の4番目の指骨で、長さは60mm。薄くて、中空です。

 プテロダクチルス類のものとされ、この地層からは初めてのクレードとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Andrew A. Farke & Chiara A. Wilridge (2013) 
  4. A Possible Pterosaur Wing Phalanx from the Kaiparowits Formation (Late Campanian) of Southern Utah, USA . 
  5. PalArch's Journal of Vertebrate Palaeontology 10(2), 1-6.(pdf)



 モロッコにある白亜紀後期(セノマニアン)のケムケム単層(Kem Kem Beds)といえば、スピノサウルスが見つかっていることで有名です。

 ここは、植物食恐竜よりも獣脚類が過剰であり、奇妙な生態系とされています。 今回、このアンバランスな食物網について考察した論文が報告されています。

 その理由として、当時の古環境が原因とされています。 つまり、三角州などのデルタ環境で、魚などの水生生物が豊富であり、これが、スピノサウルスなどの獣脚類のエサになったとされています。
 

 従来から、獣脚類が多いアンバランスな比率を説明するため、いくつかの仮説が提案されています。  

 この論文では、新しいフィールドデータに基づいて、特に、植物食と肉食恐竜の比率に焦点をあてて、これらの仮説を検証しています。  
 その結果、系統だっていない化石収集や層序的なバイアスは関係なく、古環境の影響が大きいと考えられています。  

 実際、デルタという古環境は、安定して植物が生えるには不利で、水生生物に有利だったとされています。  

 当時の環境は、水生または半水生食物網の基本的な水準を形成し、直接、獣脚類や特にスピノサウルスというトップにいる捕食者を養ったとされています。  



  1. References:
  2.  
  3. Läng Emilie, Boudad Larbi, Maio Laszlo, Samankassou Elias, Tabouelle Jérôme, Tong Haiyan & Cavin Lionel (2013)
  4. Unbalanced food web in a Late Cretaceous dinosaur assemblage. 
  5. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology (advance online publication) 
  6. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.palaeo.2013.04.011



 最近は、大型翼竜は内陸部にいて、飛ぶというより歩いていたなどの報告があります。

 今回、アズダルコ類の大型翼竜、Azhdarcho lancicollis の首の骨格を再構築し、そのライフスタイルについて考察した論文が報告されています。
 
 その、食べ物を採る戦略は、コウノトリというより、ペリカンに似ていたとされています。さて、どんな方法だったのでしょうか。


 ウズペキスタンにある白亜紀後期の地層で発見された頚椎化石を、コンピューターを使い3次元的に復元したもの。

 その結果、アズダルコ類は、中立姿勢では、首は真っ直ぐではなく、S字型とされています。 そして、食餌戦略は、おそらくペリカンに似ていたとされています。

 獲物を探すときには、大きな内陸部や沿岸海洋水域の水面を飛行し、広く開けた口から魚を取り込んだのです。

 一方、コウノトリのように川などを歩いて獲物を探した可能性は低いとされています。これは、動作が機敏ではなく、陸上の捕食者に捕まりやすかったためのようです。

 

  1. References:
  2.  
  3. A. O. Averianov (2013) 
  4. Reconstruction of the neck of Azhdarcho lancicollis and lifestyle of azhdarchids (Pterosauria, Azhdarchidae). 
  5. Paleontological Journal 47 (2): 203-209 
  6. DOI: 10.1134/S0031030113020020



 オヴィラプトロサウリア(Oviraptorosauria)といえば、大きなクチバシのある獣脚類で、白亜紀後期にかけて、様々に多様化していました。

 今回、その仲間であるカエナグナシダエ(Caenagnathidae、カエナグナサシド類)について、ユタ州で発見された新種が報告されています。

 発見された化石や系統関係は、Bite the Stuff で紹介されています。

 Leptorhynchos を新属として提唱していますが、植物に同じ属名があるそうです。動物名と植物名は、競合しないので、問題はありません。このような例、他にはGastoniaもそうです。

 また、系統関係について再評価し、カエナグナシダエとオヴィラプトリダエ(Oviraptoridae)を、単系統の姉妹タクサとして回復しています。

 さらに、カエナグナシダエが、白亜紀後期に北米大陸で幅広く分布し、多様化した2つの理由(ニッチ分割と高い固有性)に言及されています。


 カエナグナシダエは、白亜紀後期のアジアや北米大陸では一般的ですが、米国最南部では見つかっていなかったそうです。  

 カナダにあるカンパニアン後期の地層からは、3属3種のカエナグナサシド類が報告されているそうです。 そのひとつ、Leptorhynchos を新属として提唱しています。

 かつて Ornithomimus elegans とされていた Leptorhynchos elegans は、小型で、短く深い下顎骨と、先端が上向きのくちばしが特徴とされています。  

 ユタ州からのカエナグナシダエは、 Hagryphus giganteus. の1種が知られています。Aguja Formationからは、Chirostenotes sp. と Leptorhynchos gaddisi (新種)が見つかっています。   

 カエナグナシダエは、白亜紀後期に北米大陸で幅広く分布し多様化したとされ、その多様性は、次の二つの方法で維持されたと考えられています。  

 ひとつは、ダーウィンのフィンチの例に類似した方法で、ボディサイズとクチバシの形状の多様性が、ニッチを分割することで維持されたとしています。  

 第二に、多様性は、異なる生息地に異なる種がいたという、高い固有性によって維持されたとされています。


  1. References:
  2.  
  3. Nicholas R. Longrich, Ken Barnes , Scott Clark , and Larry Millar (2013) 
  4. Caenagnathidae from the Upper Campanian Aguja Formation of West Texas, and a Revision of the Caenagnathinae. 
  5. Bulletin of the Peabody Museum of Natural History 54(1):23-49 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.3374/014.054.0102



 北米大陸の白亜紀後期(カンパニアン後期から白亜紀末)には、さまざまな角竜がいました。しかし、より早期タイプの角竜はあまり知られていないそうです。

 今回、最古のカスモサウリネ(chasmosaurine)とされる新種が報告されています。

 眼の後にあるツノは適度に細長く、前外側に傾斜し、涙滴状の断面を持つ、ということですが、図がないと、特徴がわかりにくいですね。

 ジュディス川層(カンパニアン後期)で発見されたので、Judiceratops tigris という学名です。  このカスモサウルス類は、以前の角竜には見られない特徴の組み合わせを持つとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Nicholas R. Longrich (2013) 
  4. Judiceratops tigris, a New Horned Dinosaur from the Middle Campanian Judith River Formation of Montana. 
  5. Bulletin of the Peabody Museum of Natural History 54(1):51-65. 2013 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.3374/014.054.0103



 フランス南部からスペイン北部にある白亜紀後期の地層で発見された竜脚類の歯の化石について報告されています。

 ティタノサウルス類と思われる脱落歯で、多様な形態であることから、様々な種がいたと考えられています。昨年6月に、白亜紀後期の南欧における竜脚類の放散として紹介しました。

 白亜紀後期、今のイベリア半島北東部から南フランスあたりには、イベロ-アルモリカン島(Ibero-Armorican Island)があったとされています。

 先の報告では、この島では、白亜紀末の最後にかけて、竜脚類の多様性は減少したとしましたが、ここでは、4つの形態の異なるタイプが記載されています。一方、幼体の歯は円筒形で似ていたとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Verónica Díez Díaz, Thierry Tortosa & Jean Le Loeuff (2013) 
  4. Sauropod diversity in the Late Cretaceous of southwestern Europe: The lessons of odontology. 
  5. Annales de Paléontologie (advance online publication) 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.annpal.2012.12.002



 マダガスカル最北部にある白亜紀後期(約9000万年前)の地層で発見された新種のアベリサウルス類が記載されています。 論文は、全文が読めます。また、phys.org が紹介しています。

 学名は、Dahalokely tokana です。属名は、マダガスカルの言葉で、"小さな無法者"という意味で、他の多くのアベリサウルス類に比較して、全長は大きくても4メートルあまりと、小型だからのようです。

 マダガスカルのアベリサウルス類といえば、マジュンガサウルスが有名ですが、これは白亜紀後期(約7000万年前)です。

 実は、マダガスカルでは、1億6500万年から7000万年前までの間の恐竜化石は見つかっておらず、今回の化石は、このギャップを埋める化石です。


 また、インドとマダガスカルは、1億年前までには完全に分離していたとされています。今回の発見は、インドとマダガスカルが別々に存在した時代としては、初めての恐竜化石とされています。  

 ゴンドワナ大陸から渡った恐竜の独自進化の様子が伺えそうですが、見つかっているのは、脊椎や肋骨など部分的な化石で、さらなる発見が必要とされています。  

 
 


  1. References:
  2.  
  3. Andrew A. Farke & Joseph J. W. Sertich (2013) 
  4. An abelisauroid theropod dinosaur from the Turonian of Madagascar. 
  5. PLOS ONE 8(4). 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0062047



カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

2013年5月

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