Maastrichtianの最新ニュース

 白亜紀末の鳥類以外の大量絶滅については、恐竜絶滅論争に決着?(2010年3月)で紹介したように、国際研究チームが、巨大隕石衝突とすることで一致はしたのですが、いまだにその原因についてはいろいろな仮説がくすぶっています。

 そのひとつが、インドにあるデカン高原での大規模な火山活動です。

 今回、海洋生態系の解析から、白亜紀末の大量絶滅において、デカン高原の火山活動の影響は、巨大隕石衝突に比べてわずかとする論文が報告されています。

 深海の炭酸塩データを調べたもの。  海洋生態系は、大気中の二酸化炭素濃度(分圧)を調節するのに重要な役割を果たしており、大きなイベントで海洋系が酸性に傾くと、炭酸塩が溶解するというわけです。

 その結果、白亜紀後期のデカン高原の火山活動は、地球化学モデルによって予測されるよりも大きく長期間の一過性の深海炭酸塩の溶解を促したこが見出されています。

 デカン高原の火山活動は海洋の酸性化を招いたのですが、大量絶滅以前に、深海の炭酸塩よって中和され、火山活動の影響は、巨大隕石衝突の影響に比べてわずかとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Michael J. Henehan, Pincelli M. Hull, Donald E. Penman, James W. B. Rae & Daniela N. Schmidt (2016) 
  4. Biogeochemical significance of pelagic ecosystem function: an end-Cretaceous case study. 
  5. Philosophical Transactions of the Royal Society B 371 20150510 
  6. DOI: 10.1098/rstb.2015.0510
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 アフリカにある白亜紀後期の地層からは、多様なモササウルス化石が産出します。

 ニジェールにあるマーストリヒチアンの地層(Farin-Doutchi Formation )からは、Pluridens walkeri(プルリデンス・ワルケリ)が記載されています。

 一方、この参照標本が、カンパニアンの地層から発見されていました。

 しかし、この標本は、極端に長くて真っ直ぐなアゴなど、プルリデンス・ワルケリに見られる多くの派生的な特徴がありません。

 このことから、プルリデンス属の新種とされ、P. calabaria と命名されています。

 今回の結果から、プルリデンス属は、ハリサウリナエ(Halisaurinae、ハリサウルス亜科)の中でもかなり多様性のある仲間だったとされています。




  1. References:
  2.  
  3. Nicholas R. Longrich (2016) 
  4. A new species of Pluridens (Mosasauridae: Halisaurinae) from the upper Campanian of Southern Nigeria. 
  5. Cretaceous Research (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2016.03.013
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 再評価により、1885年に記載された、Hainosaurus bernardi は、Dollo, 1885, to Tylosaurus Marshとする論文が報告されています。

 ベルギーにある白亜紀後期(マーストリヒチアン)の地層で発見されたモササウルスです。

 ハイノサウルスは、ティロサウルスのジュニアシノニムになります。

 つまり、ティロサウルス属は、北大西洋環状盆地(North Atlantic Circle Basin)で、マーストリヒチアンからチューロニアンと、以前考えられていたよりも、地理的時間的に広く分布していたことになるとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Paulina Jimenez-Huidobro & Michael W. Caldwell (2016) 
  4. Reassessment and reassignment of the early Maastrichtian mosasaur Hainosaurus bernardi Dollo, 1885, to Tylosaurus Marsh, 1872. 
  5. Journal of Vertebrate Paleontology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/02724634.2016.1096275
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 ヨーロッパで、白亜紀後期のマーストリヒチアンの大型鳥脚類の足跡化石は、スペイン、ポーランド、ルーマニアから報告されています。

 今回、スペインで発見された白亜紀末(マーストリヒチアン)の足跡化石が報告されています。主な足跡化石は、竜脚類と大型鳥脚類とされています。

 白亜紀-暁新世(K / PG)境界のわずか数メートル下の地層からも見つかっており、この足跡は、三本指で、獣脚類と、鳥脚類(HadrosauropodusAmblydactylus)と考えられています。




  1. References:
  2.  
  3. Cayetano Herrero, Emilio Herrero, Javier Martín-Chivelet, Félix Pérez-Lorente, (2016) [2015]
  4. Contribution to knowledge of the last dinosaur footprints in Europe. Persistence of ornithopods in the upper Maastrichtian of SE Spain 
  5.   Cretaceous Research, 57, p. 490-507
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.05.011
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 小惑星衝突がデカン高原の火山活動を刺激/白亜紀末のワンツーパンチ(2015年10月)で紹介しているように、白亜紀末の大量絶滅は、小惑星衝突とインドのデカン高原の火山活動が原因とする説が提唱されています。

 今回、デカン高原の火山活動の影響は、それほど厳しくはなかったとする論文が報告されています。リーズ大が紹介しています。

 火山活動で排出される二酸化硫黄の総量と、それによって誘発される環境への影響を定量化するため、地球規模のエアロゾル・モデルを使用して解析したもの。

 その結果、地球の気温は4-5℃程度低下したに過ぎず、50年以内には元に戻ったとしています。

 また、酸性雨の影響も地域選択的だったとしています。



  1. References:
  2.  
  3. Anja Schmidt, Richard A. Skeffington, Thorvaldur Thordarson, Stephen Self, Piers M. Forster, Alexandru Rap, Andy Ridgwell, David Fowler, Marjorie Wilson, Graham W. Mann, Paul B. Wignall & Kenneth S. Carslaw (2015) 
  4. Selective environmental stress from sulphur emitted by continental flood basalt eruptions 
  5. Nature Geoscience (advance online publication) 
  6. doi:10.1038/ngeo2588
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 白亜紀後期(カンパニアン-マーストリヒチアン)、北半球の大型獣脚類といえば、ティラノサウリダエ(科)でした。

 その骨格化石は豊富に見つかっていますが、足跡が残されるような環境を好まなかったのか、足跡化石は限定的です。

 群れて歩いた/初めてのティラノサウリダエの連続歩行跡(2014年7月)では、カナダにある白亜紀後期の地層で発見されたティラノサウリダエ(科)としては初めての連続歩行跡を紹介しました。

 ここで推定される歩行速度は、時速、6.40 km から8.50 km とされていました。

 今回、ワイオミングにある白亜紀後期(マーストリヒチアン)の地層(Lance Formation)で発見されたティラノサウリダエの連続歩行跡について報告され、その歩行速度は、時速4.5-8kmとされています。 phys.orgが紹介しています。

 以前は、ティラノサウリダエの歩行速度は、他の大型獣脚類よりかなり遅かったと推測されていたそうですが、今回の結果から、歩くのが遅いわけではないとされています。

 砂岩の表面に連続した3つの足跡が残されており、サイズなどから、足跡の主は、T.rex の亜成体かナノティラヌスとされています。    


 


  1. References:
  2.  
  3. Sean D. Smith, W. Scott Persons IV & Lida Xing (2016) 
  4. A tyrannosaur trackway at Glenrock, Lance Formation (Maastrichtian), Wyoming. 
  5. Cretaceous Research 61: 1-4 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.12.020
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 5m超では3種めの大型ドロマエオ、ダコタラプトル(2015年11月)で、、ユタ州にある白亜紀後期(マーストリヒチアン)のヘル・クリーク層から発見されたドロマエオサウリダエ(科)、Dakotaraptor steini (ダコタラプトル・ステイニ)を紹介しました。
 
 今回、ダコタサウルスのホロタイプは、異なった種が混ざったキメラとする論文が報告されています。

 なお、PrePrints(レビュー前の原稿)で、修正の可能性もあります。

 記載論文で叉骨とされた標本は、ホロタイプも含め3つあるのですが、それらは、スツポン科(trionychidae)のカメの内腹甲(entoplastron、腹側の甲羅)骨というのです。

 こういう間違いは過去にもあって、例えば、ズニケラトプスの 鱗状骨、実は、ノスロニクスの坐骨だったという話(Wikipedia)もあります。
 



  1. References:
  2.  
  3. Victoria M. Arbour, Lindsay E. Zanno, Derek W. Larson, David C. Evans & Hans-Dieter Sues (2015) 
  4. The furculae of the dromaeosaurid dinosaur Dakotaraptor steini are trionychid turtle entoplastra. 
  5. PeerJ PrePrints 3:e1957 
  6. doi: https://doi.org/10.7287/peerj.preprints.1570v1
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 北海道むかわ町にある白亜紀後期(約7200万年前)の地層で発見されたモササウルスが新種記載されています。

 論文はオープンアクセスで、プレスリリースでわかりやすく紹介されています。

 ハリサウリナエ(Halisaurinae、亜科)のPhosphorosaurus 属の新種とされ、P. ponpetelegans (フォスフォロサウルス・ポンペテレガンス)と命名されています。

 日本で4番目の新種のモササウルスとなります。  モササウルスとしては初めて、立体視ができる両眼視の構造が確認されています。
 立体視は、獲物を狙うのに有利なのですが、今回の新種は比較的小型で、遊泳能力も高くなく、別の目的があったようです。

 両眼視は、単眼視に比べ、光の受容体が多く暗視に適した構造であることから、その目的は、夜行性だったのではないかと考えられています。 大型モササウルスが活動していない夜に行動したというわけです。

 夜行性については、中生代海生爬虫類として、初めて示唆されたグループとされています。

 暗視に適した構造というのは、現生のヘビなどからの類推ですが、夜だけではなく、昼でも暗い深い海で役に立った可能性もありますね。


 


  1. References:
  2.  
  3. Takuya Konishi, Michael W. Caldwell, Tomohiro Nishimura, Kazuhiko Sakurai & Kyo Tanoue, 2015 
  4. A new halisaurine mosasaur (Squamata: Halisaurinae) from Japan: the first record in the western Pacific realm and the first documented insights into binocular vision in mosasaurs insights into binocular vision in mosasaurs 
  5. Journal of Systematic Palaeontology, Published online: 07 Dec 2015
  6. DOI:10.1080/14772019.2015.1113447 
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 白亜紀後期、今のイベリア半島北東部から南フランスあたりには、かつての西欧諸島のひとつ、イベロ-アルモリカン島(Ibero-Armorican Island)があったとされています。

 ヨーロッパにおけるマーストリヒチアンのハドロサウロイデア(上科)のかなりの部分は、このあたりに由来するのですが、完全な標本がないこともあり、研究は進んでいないようです。

 一方、歯骨の方は、標本数も多く、保存状態もいいことから、今回、ハドロサウロイデアの多様性の指標として、歯骨形態の有用性を評価した論文が報告されています。

 その結果、3つの異なる歯骨形態型が認められたとしています。2つの異なるハドロサウロイデアとより派生的なタイプです。

 形態型のひとつには、比較的小型の個体があり、島で小型化した種ではないかとされています。  

 また、マーストリヒチアン後期、イベロ-アルモリカン島には、ハドロサウロイデアとランベオサウリナエ(亜科)が共存していたと考えられています。



  1. References:
  2.  
  3. Alejandro Blanco, Albert Prieto-Márquez & Soledad De Esteban-Trivigno (2015) 
  4. Diversity of hadrosauroid dinosaurs from the Late Cretaceous Ibero-Armorican Island (European Archipelago) assessed from dentary morphology. 
  5. Cretaceous Research 56: 447-457 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.04.001
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 白亜紀末、当時のララミディア(北米西部)のマーストリヒチアンの陸上堆積物からは、多様性に富んだ恐竜化石が産出します。

 しかし、一部の地域で大量に収集される一方、緯度によってはムラもあるようです。

 今回、アルバータ州にあるマーストリヒチアンの地層(Scollard Formation)で発見されたパキケファロサウリダエの化石が報告されています。

 初めての歯以外の頭部化石とされていますが、この地層から「初めて」のようです。

 風化していますが、ドーム型の頭頂の特徴から、パキケファロサウリーニ(Pachycephalosaurini、族)とされ、おそらく、パキケファロサウルスではないかとされています。

 この標本から、ララミディアにおいては、マーストリヒチアン後期の恐竜コミュニティは、一般的に、離散していない動物相からなる普遍的な種だったとされています。




  1. References:
  2.  
  3. David C. Evans, Matthew J. Vavrek & Hans C. E. Larsson (2015) 
  4. Pachycephalosaurid (Dinosauria: Ornithischia) cranial remains from the latest Cretaceous (Maastrichtian) Scollard Formation of Alberta, Canada. 
  5. Palaeobiodiversity and Palaeoenvironments (advance online publication) 
  6. DOI: 10.1007/s12549-015-0188-x
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 "ラプトル"の名で知られる、ほとんどのドロマエオサウリダエ(Dromaeosauridae、科)は、比較的小型から中型の獣脚類です。

 デイノニコサウリア(Deinonychosauria)の系統であり、鳥類へと進化したアヴィアラエ(Avialae)とは、既にジュラ紀後期に分岐している(分岐図 )のですが、小型化と羽毛は、この系統でも空へとチャレンジしていたようように思えます。

 一方、小数ですが、先祖返りしたような大型種も知られています。「大型」の基準があいまいですが、論文では、4種とあります。推定全長を5メートル超に絞ると、2種ですね。

 今回、ユタ州にある白亜紀後期(マーストリヒチアン)のヘル・クリーク層から、推定全長5.5メートルほどの大型種が発見・記載され、Dakotaraptor steini (ダコタラプトル・ステイニ)と命名されています。

 ヘルクリーク層には、小型のマニラプトラと大型のティラノサウリダエがいたわけですが、ダコタラプトルは、そのギャップを埋めるボディサイズです。

 系統的には、ヘル・クリーク層でもっとありふれたドロマエオサウリダエ、(Dromaeosaurus albertensis)の姉妹群とされ、両者からなる群がユタラプトル(Utahraptor ostrommaysorum )の姉妹群の位置づけです。

 ユタラプトルは、ユタ州にある白亜紀前期(バレミアン、約1億2500万年前)の地層(Cedar Mountain Formation)で発見されており、系統的には近いのですが、時代はずいぶん違います。

 尺骨には、大型種としては初めての羽軸突起(quill knob)があり、前肢に長い羽毛があった証拠とされています。

 しかし、飛べそうにはない大型種であり、ディスプレイか、二次的に飛ばなくなった羽根の名残りとも考えられます。

 また、大腿骨が脛骨より短めで、そのプロポーションから、走るスピードは速く、大きなカギツメなどとあいまって、手ごわいプレデターだったようです。

 図は、ホロタイプ(PBMNH.P.10.113.T)からの復元骨格。右上は見つかっている部分で、その他は、他の近縁種からの推定です。

Dakotaraptor steini.jpg

 論文はカンザス大が発行するオンライン専用のオープンアクセスの雑誌です。  

 論文で示されている4種の大型ドロマエオサウリダエは以下のとおり。推定全長はWikipedia などから。全長1.5メートルのブイトレラプトルは大型といえるのかどうか、微妙です。


  1. Buitreraptor gonzalezorum (ブイトレラプトル、南米、白亜紀後期、全長1.5メートル)
  2. Deinonychus antirrhopus (デイノニクス、北米、白亜紀前期、推定全長3.4メートル)
  3. Achillobator giganticus (アキロバトル、モンゴル、白亜紀後期、全長5から6メートル)
  4. Utahraptor ostrommaysorum (ユタラプトル、北米、白亜紀前期、全長7メートル)
 
 なお、ユタラプトルの種小名、記載論文ではostrommaysi でしたが、複数形に改められています。  

 図は、ドロマエオサウリダエの分岐図(Robert A. DePalma et al., 2015)。5種の大型種は赤線で示しています。 


Dakotaraptor steini-2.jpg

 今回の標本は、2005年に四肢や尾の一部が発見されたもの。歯などは別の場所から見つかっています。同時に、サウロルニトレステス(Saurornitholestes)やアケロラプトル(Acheroraptor)といった他のドロマエオサウレダエの標本も見つかっています。

 尺骨には、大型種としては初めての羽軸突起があります。羽軸突起は、腰にコブのあるカルカロドントサウルス類(2010年9月)で紹介していますが、飛ぶことができる現生鳥類にみられ、次列風切羽が、靭帯により骨に固定されていた時の小さな突起です。  

 大型のドロマエオサウリダエでも、ユタラプトルは大腿骨:脛骨比が1:1で、中足骨は短く、がっしりした骨格あり、獲物を追いかけるプレデターとしての能力は劣っていたようです。  

 一方、ダコタサウルスの大腿骨は脛骨より17%短く、小型種に比べて相対的に中足骨は長めです。よりスピードが出せそうなプロポーションだったわけですね。


 


  1. References:
  2. Robert A. DePalma, David A. Burnham, Larry D. Martin†,Peter L. Larson and Robert T. Bakker (2015) 
  3. The first giant raptor (Theropoda: Dromaeosauridae) from the Hell Creek Formation. 
  4. Paleontological Contributions 14 (16 pp.) PDF 
  5. URI: http://hdl.handle.net/1808/18764
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白亜紀末の極地方の生態系

 現生の草食動物は、異なった植物を食べることで、同じ地域でも棲み分けし、多様な種類が共存しています。

 しかし、捕食性の肉食動物は比較的同じ種類が分布しています。白亜紀末(マーストリヒチアン後期)の極地方においても、似たような状況が見られたようです。

 今回、アラスカ北部にあるプリンスクリーク層( Prince Creek Formation)における恐竜の生息環境について考察した論文が報告されています。 

 ここは世界で最も豊富に極地方の恐竜化石が残るところとされています。


 ほとんどハドロサウリアであるエドモントサウルス属からなるボーンベッドは、湿潤な低地デルタ平野相から見つかっています。  

 そして、ケラトプシアのパキリノサウルス(Pachyrhinosaurus perotorum )がほとんどのボーンベッドは、高地海岸平野相から見つかっています。  

 これらの分布などから、エドモントサウルスは、低地の三角州環境を好み、パキリノサウルスは、より高地の環境を好んだと考えられています。  

 極地方の地上生態系では顕著な季節性がみられるのですが、この分布は、この季節性に生理的に適応した結果とされています。  
 
 一方、大型植物食恐竜とは対照的に、ティラノサウリダエ(科)の Nanuqsaurus hoglundi (ナヌクサウルス・ホグルンディ)は、どこにでも分布していたようです。  

 ナヌクサウルスについては、ナヌクサウルス/アラスカから小さなティラノサウルス類(2014年3月)で紹介しています。推定全長は約7メートルと、比較的小型です。



  1. References:
  2.  
  3. Anthony R. Fiorillo, Paul J. McCarthy & Peter P. Flaig (2015) 
  4. A Multi-disciplinary Perspective on Habitat Preferences among Dinosaurs in a Cretaceous Arctic Greenhouse World, North Slope, Alaska (Prince Creek Formation: Upper Maastrichtian). 
  5. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.palaeo.2015.07.024
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 恐竜化石が発見されている最も高緯度な場所は、北緯82-85度。そこでは、冬に太陽が昇らない期間が120日にもなるそうです。

 北極圏にも恐竜がいたことは知られていますが、当時はどのような環境だったのか、定量的な話は多くありません。

 北緯82度以北では恐竜の卵化石は見つかっておらず、渡りをしなかったとすれば、産卵や子育てはどうしていたのか、また、小動物なら穴を掘って越冬できそうですが、より大きな恐竜には越冬のための避難所は問題です。

 今回、白亜紀後期の北極圏の環境と、北緯76度で見つかっている卵化石から、北極圏での恐竜の産卵や子育てについて考察した論文が報告されています。


 木の年輪や葉の化石から、当時の気温や日照時間、植物が茂っていた期間などを推定したもの。  当時の北極圏の年間平均気温は、6-7℃で、暖かい季節の平均は、14.5 ± 3.1 ℃、冬の平均は -2 ± 3.9 ℃とされています。  

 夏の気温は頻繁に+ 10℃を下回り、冬の気温は短期間ですが、-10℃と低かったとされています。  

 春に植物が芽吹くのは、2月終わりから3月初めで、10月初めには落葉し、恐竜たちが新鮮な植物をエサとできる期間は、半年だったようです。  

 渡りをせずに、年間をとおして棲むには、卵を産み子育てする環境が必要ですが、北緯82度以北では恐竜の卵化石は発見されていません。  

 6度南(ということは、北緯76度)にあるロシア北東部の白亜紀後期(マーストリヒチアン初期)の地層(Kakanaut Formation)から、見つかっています。  

 ここでは、冬の暗闇は45日とより短く、気温は高めで(年平均 10℃、夏の平均は 19℃で、冬平均は + 3℃)、10℃以上の気温となる生育期は6.3ヶ月で新鮮な食べ物が利用可能とされています。  

 冬が来る前のすばやいインキュベーションと孵化といった戦略が示唆されています。



  1. References:
  2.  
  3. Alexei B. Herman, Robert A. Spicer & Teresa E.V. Spicer (2015) 
  4. Environmental Constraints on Terrestrial Vertebrate Behaviour and Reproduction in the High Arctic of the Late Cretaceous. 
  5. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology (advance online publication) 
  6. doi:10.1016/j.palaeo.2015.09.041
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 白亜紀末の大量絶滅の原因については、恐竜絶滅論争に決着?(2010年3月)で紹介したように、国際研究チームが、巨大隕石衝突とすることで一致したのですが、その後、異論も出ています。 
 
 もう一つの有力な説として、インドのデカン高原の火山活動説がくすぶり続けたりしているのですが、今回、これら2つの説(小惑星衝突とデカン高原の火山活動)は密接に関連しているとする論文が報告されています。

 原因は、ワンツーパンチ?/白亜紀末の大量絶滅(2006年10月)でも、"press/pulse theory(プレス・パルス説)"という複合説として、似たような説を紹介しています。

 当時と状況が違うのは、今までで最も高精度な 40Ar/39Ar 年代測定により、デカン高原の噴火時期がより正確になったことでしょう。

 デカントラップ全体体積の70%程が噴出した大噴火は、小惑星衝突の5万年以内に起こったとされています。最大とはいえ、5万年とは、ずいぶん長いようですが、その分、その間に回復しつつあった環境に、ダメージを与えたのでしょう。

 衝撃によって誘発された地震エネルギーが、 地下のマグマ溜まりを刺激したようです。  

 そして、海洋生態系の回復は、火山活動が衰えるまで抑制され、陸や海の生態系が回復するまで、50万年もかかったとされています。

 


  1. References:
  2.  
  3. Paul R. Renne, Courtney J. Sprain, Mark A. Richards, Stephen Self, Loÿc Vanderkluysen, and Kanchan Pande (2015) 
  4. State shift in Deccan volcanism at the Cretaceous-Paleogene boundary, possibly induced by impact. 
  5. Science 350 (6256): 76-78 
  6. DOI: 10.1126/science.aac7549
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 南極大陸の恐竜化石産地としては、ジェイムズ・ロス島の恐竜化石/南極(2013年9月)でレビューを紹介している ジェイムズ・ロス島が有名です。白亜紀後期の海洋堆積層です。

 今回、白亜紀後期(マーストリヒチアン、約7000万年前)の地層(Snow Hill Island Formation の López de Bertodano Formation)で発見されたイグアノドンティアが記載されています。

 学名は、Morrosaurus antarcticus(モロサウルス・アンタルクチクス)で、属名は、化石発見地(El Morro)にちなんでいます。

  系統的には、南半球だけの鳥脚類からなる単系統のクレードとされ、白亜紀後期、パタゴニアや南極、オーストラリアは、同じ陸上動物相だったと考えられています。

 この系統には、新種の鳥脚類トリニサウラ/南極(2013年1月)で紹介しているTrinisaura(トリニサウラ)や、アルゼンチン産のGasparinisauraAnabisetiaNotohypsilophodonTalenkauenMacrogryphosaurusを含みます。

 このグループの仲間のいくつかは、中足骨IVが狭くて、細くて骨が収束した足を持つなどの特徴から、特殊化した走行モードに適応していたとされています。





  1. References:
  2.  
  3. Sebastián Rozadilla, Federico L. Agnolin, Fernando E. Novas, Alexis M. Aranciaga Rolando, Matías J. Motta, Juan M. Lirio & Marcelo P. Isasi (2016) [2015] 
  4. A new ornithopod (Dinosauria, Ornithischia) from the Upper Cretaceous of Antarctica and its palaeobiogeographical implications. 
  5. Cretaceous Research 57: 311-324 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.09.009
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 真冬には一日中太陽が昇らず、逆に、真夏には太陽が沈まない北極圏からでも、恐竜化石の発見は珍しくはありません。

 アラスカ北部、最も高緯度の恐竜化石産地/アラスカ(2015年1月)で紹介しているプリンス・クリーク層(Prince Creek Formation)からは、これまでに、13種類以上の恐竜化石が見つかっており、そのうち、後に示すように、3つのタクソンが新種として記載されています。 

 マーストリヒチアン(約6900万年前)の地層で、極地方としては世界で最も多数の化石を産出する場所です。

 そこでは、エドモントサウルス属(Edmontosaurus sp.)の幼体が多数見つかっており、渡りをしなかったエドモントサウルス(2013年9月)で紹介しているように、極寒の冬でも渡りをしなかったようです。

 今回、そのプリンス・クリーク層で発見されたハドロサウリダエ(科)のエドモントサウリニ (亜科)の新種が記載されています。YouTube で発掘の様子ななどが紹介されています。

 4種目となる恐竜の学名は、Ugrunaaluk kuukpikensis で、発音は、"oo-GREW-nah-luk"で、日本語では、ウーグルナールク・クークピケンシスとします。

 体長は9メートルほど、近縁とされるエドモントサウルスとは異なり、眼窩後部ポケットを欠く比較的狭い後眼窩骨の頬骨突起を持つといった特徴があります。

 アラスカという極寒の環境で暮らしていたからでしょうか、同じララミディアでも、地域性があったようです。


 アラスカからの新種は、2006年に記載されたパキケファロサウリダエの Alaskacephale gangloffi(アラスカケファレ・ガングロフィ)と、セントロサウリネ(centrosaurine)の Pachyrhinosaurus perotorum (パキリノサウルス・ペロトラム、2012)、ティラノサウリネの anuqsaurus hoglundi (ナヌクサウルス・ホグルンディ、2014)です。  

 今回の新種の属名は、アラスカの原住民のイヌピアック(Iñupiaq)語で、"ancient grazer(太古のグレイザー)"の意味。同じ植物食でも、グレイザー(粗食選択)はブラウザー(良質選択)と異なり、食べられるものを無差別に刈り取って食べるタイプです。  

 骨格的に未成熟な標本からの記載ですが、他のハドロサウリダエの成長パターンを考慮して、解析されています。  

 系統解析からは、既に報告されているエドモントサウルス属の、 Edmontosaurus annectens (エドモントサウルス・アネクテンス)と E. regalis (エドモントサウルス・レガリス)からなるクレードの姉妹群とされています。    

 ウーグルナールクは、他のエドモントサウルスに見られる幼体の特徴は示さないとされています。 しかし、詳しくは、 E. annectensE. regalis の幼体など、さらなる標本の発見が必要とされています。



  1. References:
  2.  
  3. Hirotsugu Mori, Patrick S. Druckenmiller, and Gregory M. Erickson (2015) 
  4. A new Arctic hadrosaurid from the Prince Creek Formation (lower Maastrichtian) of northern Alaska 
  5. Acta Palaeontologica Polonica (in press) 
  6. doi:http://dx.doi.org/10.4202/app.00152.2015
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 ティタノサウリアの竜脚類は、白亜紀後期のヨーロッパにおける主な恐竜の一つです。

 南西ヨーロッパにあったイベロ-アルモリカン(Ibero-Armorican)地域では、カンパニアン後期からマーストリヒチアン初期にかけては豊富でしたが、マーストリヒチアン後期には、明らかに多様性や量が減ってきたとされています。

 今回、ヨーロッパで最も新しい時代の竜脚類となる、マーストリヒチアン最後期の地層で発見されたティタノサウリア化石が報告されています。

 見つかっているのは、頚椎後部の右側後部だけで、比較的高齢だったとされています。

 卵殻や足跡化石も合わせ、南西ヨーロッパでは、白亜紀の最後期まで、ティタノサウリアが生き延びていたとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Albert G. Sellés, Josep Marmi, Sergio Llácer & Alejandro Blanco (2015) 
  4. The youngest sauropod evidence in Europe. 
  5. Historical Biology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/08912963.2015.1059834
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 パキケファロサウリダエ(科)といえば、白亜紀後期マーストリヒチアンに生息していた恐竜ですが、マーストリヒチアンも後期になると、比較的まれなようです。

 今回、大量絶滅の30万年以内の地層で発見されたパキケファロサウリダエが報告されています。

 カナダ中西部、サスカチュワン州にあるフレンチマン層で、ほぼ完全な左眼窩後部が見つかったもの。

 スファエロソルス(Sphaerotholus) で、Sphaerotholus buchholtzae の類似種とされています。同一種とするには疑問があるのですが、形態的に極めてよく似ているようです。

 フレンチマン層からは初めてで、パキケファロサウリダエの棲息範囲を北方に拡大するとしています。

 恐竜たちは、あちこち移動していたのか、白亜紀末の北米大陸では、環境間で種の類似性(ベータ多様性)が低かったとされていますが、その仮説と一致するような発見です。

 なお、Sphaerotholus は、スファエロトルスともスファエロソラスとも呼ばれています。カナダのパキケファロサウルス類(2011年8月)で、系統関係を紹介していますが、派生的なタクソンです。

 
 北部で見つかったことから、マーストリヒチアン後期、北米大陸における低いベータ多様性仮説と一致するとされています。  

 ベータ多様性とは、一般的な多様性(アルファ多様性)と異なり、複数の環境間の多様性のことです。  ベータ多様性が低かったということは、環境間の種の類似性が低くかったということで、環境間で種の入れ替わりが大きかったようです。



  1. References:
  2.  
  3. Jordan C. Mallon, David C. Evans, Tim T. Tokaryk, Margaret L. Currie 
  4. First pachycephalosaurid (Dinosauria: Ornithischia) from the Frenchman Formation (upper Maastrichtian) of Saskatchewan, Canada. 
  5. Cretaceous Research 56: 426-431 
  6. doi:10.1016/j.cretres.2015.06.005
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 白亜紀もカンパニアンに入ると、角竜(Ceratopsidae、ケラトプス科)の系統は、2つの系統に分岐します。

 図のように、カスモサウリナエ(カスモサウルス亜科)とセントロサウリナエ(セントロサウルス亜科)です(Caleb M. Brown & Donald M. Henderson, 2015 )

 トリケラトプスに代表されるように、カスモサウリナエの頭部のフリルは、セントロサウリナエに比べて、シンプルです。

 今回、カナダ・アルバータ州にある白亜紀後期(マーストリヒチアン、約6800万年前)の地層( St. Mary River Formation)で発見された新種のカスモサウリナエが記載されています。 

 ほとんど完全で、3次元的に保存された頭部に基づくもので、Regaliceratops peterhewsi (レガリケラトプス・ペテレウシ)と命名されています。

 最も驚くべきことは、カスモサウリナエのトリケラトプシーニ(Triceratopsini)の系統ながら、頭部の飾りが派手なこと。

 この点は、レガリケラトプスが見つかった年代には既に絶滅しているセントロサウリナエの系統に類似しています。

 カスモサウリナエ(特にマーストリヒチアンの型)の頭部の形態がセントロサウリナエに類似しているのは、収斂進化だったとされています。  

 恐竜の系統では初めてとなる、頭部のツノ様ディスプレイ構造での収斂進化とされています。現生や絶滅哺乳類では見られているそうです。  

 初めての収斂進化とのことですが、すでに、カスモサウリナエの基盤的な位置では、頭部に多数のツノがあるコスモケラトプス(Kosmoceratops richardsoni )なども見つかっています。



Regaliceratops peterhewsi.jpg

  1. References:
  2.  
  3. Caleb M. Brown & Donald M. Henderson (2015) 
  4. A New Horned Dinosaur Reveals Convergent Evolution in Cranial Ornamentation in Ceratopsidae. 
  5. Current Biology (advance online publication) 全文(pdf ) 
  6. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2015.04.041
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 白亜紀後期の地層で、小型から中型の翼竜が少ないのは、進化のトレンドを示すとされてきました。

 今回、ルーマニアのハテグ島にある白亜紀後期(マーストリヒチアン)の地層で発見された、中型の翼竜の頚椎について報告されています。

 がっしりとした第四頚椎で、アズダルキダエ(Azhdarchidae)の系統の新種のようですが、命名されていません。

 ヨーロッパ初のタラソドロミナエ新種翼竜(2014年7月)で紹介しているように、ハテグ島動物相には、より小型の翼竜は実際に存在しており、小型種は化石として保存されにくく標本が少ないため、過小評価されているのだとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Mátyás Vremir, Mark Witton, Darren Naish, Gareth Dyke, Stephen L. Brusatte, Mark Norell, and Radu Totoianu (2015) 
  4. A Medium-Sized Robust-Necked Azhdarchid Pterosaur (Pterodactyloidea: Azhdarchidae) from the Maastrichtian of Pui (Hateg Basin, Transylvania, Romania). 
  5. American Museum Novitates 3827: 1-16 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.1206/3827.1
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