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白亜紀前期の水生被子植物

 スペインの白亜紀前期(バレミアン、1億2500万-1億3000万年前)の石灰岩の中で見つかった水生被子植物化石が報告されています。

 インディアナ大などでは「最初の花」と紹介されていますが、最初ではありませんね。論文の要旨にも「最初」とか「最古」の表現はないのですが。

 今のところ、最古の花とされているのは、ジュラ紀の完璧な花/遼寧省(2015年3月)で紹介したジュラ紀のEuanthus panii (エウアンサス・パニイ)でしょう。

 こちらは、遼寧省にあるジュラ紀中期から後期(1億6700万年から1億6200万年前)の地層で発見されたモクレンのような花びらのある小さな花の化石です。

 また、最古のほぼ完全な被子植物化石発見/遼寧省(2002年5月)で紹介したように、白亜紀前期の花びらのない水生被子植物、Archaefructus sinensis (アルカエフルクトゥス・リャオニンゲンシス)が報告されています。

 今回の化石は、ピレネー山脈で100年以上前に発見された石灰岩の中から見つかった化石で、Montsechia vidali (モントセキア・ビダリ)と命名されています。系統的には、沈水性の水草であるマツモ類(Ceratophyllum)の姉妹群とされています。

 アルカエフルクトゥスやモントセキアといった白亜紀前期の水生被子植物が、各地で見つかることから、被子植物の進化の非常に早い段階で、水生被子植物は一般的だったようです。  

 また、これらが、初期の被子植物の系統の多様化に大きな役割を果たしていたとされています。



  1. References:
  2.  
  3. Bernard Gomez, Véronique Daviero-Gomez, Clément Coiffard, Carles Martín-Closas and David L. Dilcher, 2015 
  4. Montsechia, an ancient aquatic angiosperm 
  5. PNAS August 17, 2015 
  6. 10.1073/pnas.1509241112
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 ヒマワリやタンポポ、ヒナギクなど、キク科(Asteraceae)の植物は、およそ23,000種もあって、南極大陸以外の世界中で咲いています。  
 この花に深く依存しているミツバチやハチドリなどの多様性や進化に影響力があるだけでなく、陸上生態系にも重要な役割を果たしています。

 今回、南極半島にある白亜紀後期(7600万から6600万年前)の地層で見つかったキク科植物の花粉について報告されています。

 花粉は、Tubulifloridites lillei と命名され、キク科植物の花粉としては、従来より2000万年古く恐竜時代にさかのぼり、最古とされています。

 また、今回の化石を含めて更正しながら、分子系統的に解析し、キク科の植物の起源は、南極大陸が分離する前の、少なくとも8000万年前のゴンドワナ大陸とされています。

 花自体は見つかっていませんが、Discovery Newsなどは、ヒナギクと紹介しています。

 恐竜やアンモナイト化石なども一緒に見つかっており、当時は比較的温暖だったゴンドワナ大陸の一部で、恐竜たちが、キク科の花に囲まれていたシーンがあったのでしょうね。


 


  1. References:
  2.  
  3. Viviana D. Barreda, Luis Palazzesi, Maria C. Tellería, Eduardo B. Olivero, J. Ian Raine and 6. Félix Forest, 2015 
  4. Early evolution of the angiosperm clade Asteraceae in the Cretaceous of Antarctica 
  5. PNAS August 10, 2015 
  6. doi: 10.1073/pnas.1423653112
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ジュラ紀の完璧な花/遼寧省

 おしべやめしべに花びら、白亜紀より前の完全な花を探すことは、長い間の夢でした。

 今回、遼寧省にあるジュラ紀中期から後期(1億6700万年から1億6200万年前)の地層(Jiulongshan Formation)で発見された花の化石が記載されています。

 属名が、ラテン語で真の花を意味する、Euanthus panii (エウアンサス・パニイ)と命名されています。種小名は、標本提供者にちなんだもの。

 図は、その復元スケッチです(Zhong-Jian Liu & Xin Wang, 2015)。現生のモクレンの花に似ていますが、長さは12ミリほどと小さい花です。

 がく片や花びらだけでなく、四分胞子嚢からなる約(やく)をもつおしべ、包まれた胚珠のあるめしべと、現生の被子植物にみられる完璧な花の組織を持っています。

 今回の発見は、典型的な被子植物の花がジュラ紀には既に存在したことを示すわけで、被子植物の歴史は想定されていたより長くなり、花の進化に新たな一石を投じています。



Euanthus panii.jpg

 花や、花粉の入った約をもつおしべ、胚珠のあるめしべは、他の種子植物から被子植物を区別する3大特徴です。  

 理論的には、被子植物の花は、祖先の裸子植物から進化したと考えられています。  

 しかし、被子植物の起源は三畳紀中期か(2013年10月)で紹介しているように、三畳紀の被子植物のような花粉や、ジュラ紀の被子植物化石が報告されてはいますが、白亜紀より前の典型的な花の確たる証拠はありませんでした。    

 したがって、白亜紀より前の完全な花を探すことは、長い間の夢だったのです。  

 今回の発見は、典型的な被子植物の花がジュラ紀には既に存在したことを示すわけで、被子植物の歴史は想定されていたより長く、花の進化に新たな一石を投じています。  

 なお、葉が見つかっていないため、真性双子葉植物なのかは不明です。




  1. References:
  2.  
  3. Zhong-Jian Liu & Xin Wang (2015) 
  4. A perfect flower from the Jurassic of China. 
  5. Historical Biology (advance online publication) 
  6. DOI:10.1080/08912963.2015.1020423
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 既に被子植物は進化していたはずの白亜期末(約6600万年前)の北米大陸、背の高い木は針葉樹が多くて、被子植物は草本性だったようです。

 花粉化石を調べることで、当時の植物などの古環境を推定できますが、今回、3次元的に保存され、軟組織も残されたEdmontosaurus annectens (エドモントサウルス・アンネクテンス)の標本を調べた論文が報告されています。

 
 ヘル・クリーク層からの岩石で、保存状態の良い花粉化石群集は、シダ類とコケ類の胞子が多く、少なめながら、裸子植物と被子植物花粉も見出されているそうです。  

 ハドロサウルス類(Hadrosauridae)が棲息していた6600万年前は、松杉類などで支配された針葉樹で覆われ、水生のコケ類やシダ類、草本性の被子植物が茂っていたとされています。  

 これらから、当時は、暖かく湿った気候だったとされています。

 


  1. References:
  2.  
  3. Vivi Vajda, Tyler R. Lyson, Antoine Bercovici, Jessamy H. Doman & Dean A. Pearson (2013) 
  4. A snapshot into the terrestrial ecosystem of an exceptionally well-preserved dinosaur (Hadrosauridae) from the Upper Cretaceous of North Dakota, USA. 
  5. Cretaceous Research 46: 114-122 
  6. doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.cretres.2013.08.010
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花粉管を伸ばす1億年前の花

 琥珀の中から、約1億年前の、新種の被子植物の花が見つかり、報告されています。オープンアクセスです。

 花といっても、直径は0.8ミリと小さく、花びらは残されていません。 

 琥珀という樹脂の中で保存されただけに、花粉から伸び柱頭を達した花粉管も観察されるそうです。

 これは、白亜紀の花からは初めてとされ、現在の被子植物の種子を形成するシステムは、1億年前には、既にできあがっていたと考えられています。


 ミャンマーにある白亜紀中頃(約1億年前)の琥珀鉱山で発見され、Micropetasos burmensis と命名されています。  

 枝先に、3-7つの花がつき、子房があり、5つの広がった花被(perianth)が残されていますが、花びら(花弁)は残されていません。花被は、がくと花弁のことなので、結局、残っているのは、がくだけです。   

 系統的には、真性双子葉植物クレードの Pentapetalae の初期の仲間とされています。


 


  1. References:
  2.  
  3. George O. Poinar, Jr. et al., 2013 
  4. MICROPETASOS, A NEW GENUS OF ANGIOSPERMS FROM MID-CRETACEOUS BURMESE AMBER 
  5. J. Bot. Res. Inst. Texas 7(2): 745 - 750. (pdf)
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 白亜紀前期の北米大陸、咲いてた花をひとつ描くとすれば、現生のケマンソウのような花でしょうか。

 バージニア州で発見された北米最古の真正双子葉植物化石が報告されています。メリーランド大が紹介しています。

 白亜紀前期(1億2500万年-1億1500万年前)の地層から数十年前に発見されていた葉の化石で、残念ながら花の化石は見つかっていません。

 キンポウゲ類(ranunculalea)の系統で、発見場所のポトマック川にちなんで、Potomacapnos apeleutheron と命名されています。  

 形態やサイズから、草本性とされ、その葉は、現生のケシ目ケマンソウ科(Fumarioideae)に非常によく似ているそうです。  

 1億2500万年前の真正双子葉類、小さな花も(2011年4月)で紹介しましたが、真正双子葉類の共有派生形質は、三溝型花粉 (Tricolpate pollen)を持つことです。 しかし、今回の化石からは見つかっていないそうです。    

 

  1. References:
  2.  
  3. Jud NA, Hickey LJ. , 2013 
  4. Potomacapnos apeleutheron gen. et sp. nov., a new Early Cretaceous angiosperm from the Potomac Group and its implications for the evolution of eudicot leaf architecture. 
  5. American J. Botany, Published online before print 28 November (PDF) 
  6. doi: 10.3732/ajb.1300250
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 白亜期中頃に爆発的に進化したとされる被子植物、それは受粉昆虫の進化をもたらし、哺乳類の多様性の増加に拍車をかけたと考えられていました。

 しかし、そうではなく、逆に、哺乳類の多様性は減少したとする論文が報告されています。インディアナ大が紹介しています。

 哺乳類全体の数は増えたのかもしれないのですが、被子植物が進化する間、 増えたのは、小さな昆虫を好む三錐歯類( triconodonts)だけ。その多様性は減っていったというのです。

 
 論文では、初期哺乳類の歯とアゴの2つについて、形態や機能の解析を行っています。  その結果、白亜期中期の間、臼歯の多様性、つまり種の多様性は減少したとされています。  

 具体的には、三錐歯類( triconodonts)が増加する一方で、シンメトロドント類(symmetrodonts)やドコドント類(docodonts)、ユーパントテリアン類(eupantotherians)は、減少していったとされています。  

 三錐歯類は、小型で、小さな昆虫を好んでいたようです。  やがて、白亜紀後期晩期になると、植物食の仲間が進化するようになります。



  1. References:
  2.  
  3. David M. Grossnickle and P. David Polly (2013) 
  4. Mammal disparity decreases during the Cretaceous angiosperm radiation. 
  5. Proceeding of the Royal Society B 280 (1) 1771 20132110 
  6. doi: 10.1098/rspb.2013.2110
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 花を咲かせる種子植物(顕花植物)の一大グループ、被子植物が出現したのは、ジュラ紀(1億4000万年前)と考えられています。

 しかし、今回、これを1億年もさかのぼる三畳紀中期の花粉化石が報告されています。 フリーアクセスです。  

 ミツバチの登場まで1億年ほどかかるので、受粉していたのは、コガネムシ類ではないかと、チューリッヒ大が紹介しています。

 以前から三畳紀の中頃の被子植物の花粉化石は見つかっています。 

 起源が三畳紀とすれば、裸子植物より繁殖に有利な点が多いとされる被子植物、爆発的に進化する白亜期中頃まで、なぜもたもたしていたのでしょうか。


 種子植物(顕花植物)のうち、種になる胚珠が子房におおわれているのが被子植物で、胚珠がむき出しなのが裸子植物です。  

 今でこそ、陸上植物種の9割が被子植物と言われていますが、中生代は、裸子植物が優勢でした。 

  今回報告されているのは、スイスにある三畳紀中期(2億4720万年前-2億4200万年前、アニシアン)の地層の掘削コアから発見された花粉化石で、被子植物の花粉に必要な全ての特徴を備えているそうです。  

 しかし、中性代前半の連続的な化石記録が乏しいことなどから、被子植物のような(angiosperm-like)花粉とされ、被子植物のステムグループに近いと考えられています。  6つの異なるタイプの花粉があり、多様化が進んでいたと考えられています。



  1. References:
  2.  
  3. Peter A. Hochuli and Susanne Feist-Burkhardt (2013). 
  4. Angiosperm-like pollen and Afropollis from the Middle Triassic (Anisian) of the Germanic Basin (Northern Switzerland).
  5. Frontiers in Plant Science. (advance online publication 
  6. DOI: 10.3389/fpls.2013.0034
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 白亜期末のパタゴニアにおける植物のターンオーバーに関する論文が報告されています。 

 花粉化石の分析によるもので、 白亜期末のK/Pg境界前後で、すべての植物のグループで、その多様性や量が著しく低下したとされています。

 しかし、絶滅したものは少なく、北半球と南半球の違いは、隕石衝突箇所からの距離ではないかとされています。

 

  1. References:
  2.  
  3. Viviana D. Barreda, Nestor R. Cúneo, Peter Wilf, Ellen D. Currano, Roberto A. Scasso & Henk Brinkhuis (2012) 
  4. Cretaceous/Paleogene Floral Turnover in Patagonia: Drop in Diversity, Low Extinction, and a Classopollis Spike. 
  5. PLoS ONE 7(12): e52455. 
  6. doi:10.1371/journal.pone.0052455
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白亜紀の被子植物の進化

 ヨーロッパにおける白亜紀の被子植物の進化のシナリオについて考察した論文が報告されています。ScienceDaily が紹介しています。

 バレミアン(約1億3000万年前)からカンパニアン(約8400万年前)の大型植物化石群集を調べたもの。 最初は、淡水湖がらみの湿地から、3段階で繁殖していったとされています。

 また、昆虫との共進化は、被子植物にとって有利で、花粉や蜜で誘いながら、多様な香りや鮮やかな色を進化させていったようです。

 これは、昆虫をエサとした小型獣脚類が樹上へと登り、羽根や飛行能力を進化させたことと関係しているかもしれません。

 

  1. References:
  2.  
  3. C. Coiffard, B. Gomez, V. Daviero-Gomez, D. L. Dilcher. (2012) 
  4. Rise to dominance of angiosperm pioneers in European Cretaceous environments. 
  5. PNAS December 4, 2012
  6. DOI: 10.1073/pnas.1218633110
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 恐竜と共によく描かれる植物のひとつがソテツ(Cycads)です。ジュラ紀から白亜紀にかけて多様化し、"生きた化石"とされています。

 しかし、現生のソテツは比較的新しい系統であることがわかったと、Sciense に報告されています。Discover Magazine が紹介しています。 

 

 199の原生種から、 PHYP と呼ばれる遺伝子を解析したもの。その結果、300種ほどある現生種は、中新世後期に近縁種から分岐し、爆発的に適応放散したとされています。

 その時代は、およそ1200万年前よりは新しいとされています。その頃に、地球規模での同時的再多様化(synchronous global rediversification)が起きたようです。

 

 恐竜が現生種をかじったことはなく、恐竜が現在のソテツの多様性を生み出したというわけでは無かったのです。

 

  1. References:
  2.  
  3. Nagalingum, Marshall, Quental, Rai, Little & Mathews. 2011.
  4. Recent Synchronous Radiation of a Living Fossil.
  5. Science, Published Online October 20 2011
  6. http://dx.doi.org/10.1126/science.1209926
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恐竜時代の小さな花

 およそ8400万年前の小さな花、New Scientist が紹介しています。

 スウェーデンで発見されたもので、長さ3ミリほど。白亜紀後期の泥の中に埋まっている花の構造をX線で解析しています。

 未知種のようで、先月末に、オーストラリアで開催された International Botanical Congress 2011(IBC、国際植物会議)で報告されました。

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  ICBN (国際植物命名規約)では、2012年1月から、電子出版での新種記載を認めるそうです。残念ながら、 ICZN(国際動物命名規約)はまだです。

 Please welcome the ICBN to the 21st Century(Svpow)で紹介されています。

 従来は、新種記載は紙の印刷物を出版することでのみ認められていました。ですから、オンライン版で公表された学名は、正式には無効でした。

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 中国遼寧省にある白亜紀前期の義県累層から、 真正双子葉類 (eudicots)の化石が発見され報告されています。

 従来考えられていた時期より1500万年ほど早く、1億2500万年前には、既に花をつける被子植物の爆発的放散が始まっていたとされています。インディアナ大プレスリリースが伝えています。

 

  1990年代からの分子系統解析で、従来の双子葉類は側系統とされ、被子植物(angiosperm)は、5つの主な系統に大別されています。

 それは、初期の分岐したセンリョウ類(Chloranthaceae)とマツモ類(Ceratophyllum)、そしてモクレン類(magnoliids), 単子葉類 (monocots)、真正双子葉類 (eudicots)です。

 また、真正双子葉類 は、基盤的真正双子葉類 とコア真正双子葉類 (core eudicots)からなります。今日の被子植物の大部分(約75%)は真正双子葉類です。

 真正双子葉類の共有派生形質は、三溝型花粉 (Tricolpate pollen)を持つことで、コア真正双子葉類は花の構成が5の倍数であることです。

 

  Leefructus  mirus  (Courtesy of Indiana University)

Leefructus_mirus.jpg 

 今回新たに発見された植物化石は、系統的には、基盤的な真正双子葉類のキンポウゲ科(Ranunculaceae)に属しています。

 学名は、Leefructus mirus と命名されれています。中国名「李氏果」からわかるように、"Lee" は化石を寄贈した Li Shiming にちなみ、"fructus" は"実をつける"の意味。また、種小名は、ラテン語の"mira(美しい)"から。

 年代的には、1億2260万年前-1億2580万年前とされ、基盤的な真正双子葉類は、バレミアン最晩期からアプチアン最初期までに広がっていたとされています。

 日本の白亜紀前期の復元イラストには、モクレンに似た植物がよく描かれています。今回の地層は時代的に似ていますから、日本の恐竜時代の復元図にも、化石証拠のあるこの植物が描かれることでしょう。

 

 上の映像は、Leefructus mirus 。出典は、Indiana University

 葉の周囲が黒く縁取りされているためか、リトグラフの芸術作品のような美しさですね。

 右下のスケールは1センチで、化石全体の高さは約16センチ。1本の茎から全部で5枚の葉が伸びています。葉は3枚に分岐し、葉脈もあります。また、花びらが5枚ある小さなカップ状の花もついています。

 

 

  1. References
  2. Ge Sun, David L. Dilcher, Hongshan Wang & Zhiduan Chen, 2011
  3. A eudicot from the Early Cretaceous of China
  4. Nature, 471, p.625-628, 2011
  5. doi:10.1038/nature09811
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 中国遼寧省、義県層で、被子植物とされるほぼ完全な形の化石が発見され、吉林大やフロリダ大などの研究チームが Science (5月3日号)に報告しています。フロリダ自然史博物館に、論文全文(pdf)があります。

 今回の化石は、根、葉、茎と生殖器官が残り、98年に同じ Science に記載された Archaefructus liaoningensis の未熟な果実などよりも完全な化石です。年代は少なくとも1億2460万年前とされています。  

 これは、"中国の古代の果物"を意味する Archaefructus sinensis と命名された新種の化石で、アルカエフルクトゥス(Archaefructaceae)という新しい科を提案しています。  

 花びらは見つかっていませんが、小さな実の心皮の中に種子が発見されたことから、被子植物とされています。種子の元になる胚珠が裸子植物のようにむき出しにはなっていなかったのです。  

 また、茎は細く、下にある葉が分岐し、水生植物の祖先とみられています。同時に9匹の魚の化石も見つかっていることも水生植物を裏付けています。

 スイレンの仲間に比較的近く、花粉を虫や風で運んでもらうために、花は水面上で咲いたとされています。 


  ■裸子植物と被子植物  

 種子で増える種子植物は、裸子植物と被子植物に分類されます。  

 裸子植物や被子植物の"子"とは種子のことです。胚珠の中に卵細胞をつつむ胚のうがあって、受精すると種子になります。  

 被子植物は、種子を作る胚珠がめしべの子房内にあって被われているから"被子"というわけです。

 一方、裸子植物ではめしべは子房をつくらず、胚珠はその名の通りむきだし(裸)になっています。  

 もっともそれは日本語の由来で、分岐分析からは、被子植物は、めしべを構成し胚珠を包み込む心皮や重複受精(参考参照)などの共通派生形質(特徴)で裸子植物とは区別されます。

 アルカエフルクトゥス科は、現生の被子植物群の姉妹群で、絶滅した種類に位置付けされています。   

  ────┬─ 前裸子植物     
      │      
      └─ 種子植物 ─ 裸子植物          
           │           
           └─ 被子植物 



 ■被子植物の起源  

 現生の植物相の90%以上は被子植物で、23.5万種にもなるそうです。被子植物は、かつて、複数の裸子植物から分岐した多系統と考えられていましたが、現在は分子系統的な研究から単系統とする見方が支持されています。  

 被子植物は、裸子植物が起源であることがほぼ確実なのですが、その起源はほとんどわかっていないそうです。裸子植物から分岐した年代についてはいくつかの説があります。  

 化石証拠からは、2億3000万年前の被子植物の花粉化石が発見されており、最古の果実は、先のアルカエフルクトゥス(Archaefructus liaoningensis)の化石です。  

 また、DNA解析による分子系統的研究から、およそ3億年前の三畳紀中期には既に出現していたとされています。これだと恐竜の出現よりも早いのですね。   


 ■被子植物の多様化    

 ほとんど風だのみで大量の花粉を作る必要がある裸子植物と違って、種子植物は花をつけることで、虫を味方にし、より少ない花粉で効率的に受粉できるのです。スギも被子植物なら大量の花粉をばらまくことも無く、花粉症も減ることでしょう。  

 また、裸子植物は受粉から受精が完了するまでずいぶん時間がかかります。現生のイチョウの場合、春に受粉した後、秋までに精子ができ、受精し実を結びます。なんと、受粉から半年もかかってようやく受精するのです。一方、被子植物の受精は早く、遅くても24時間以内に完了します。  

 このように繁殖力が旺盛な被子植物は、白亜紀中期にはいって爆発的に多様化し、その勢力を拡大していったのです。  これら植物の変化は、これらをエサとする植物食恐竜などにも少なからぬ影響をおよぼしたことでしょう。

 当時は"草"は無かったので、"草食"恐竜は誤りで、正しくは"植物食"恐竜だといわれたものですが、案外、"草"を主食にしていた恐竜がいたのかもしれませんね。 



  参考  
 
 種子植物/学研学習事典データベース  
 胚珠や重複受精などの用語解説や図解があります。    

 多様性の植物学〈2〉植物の系統/東京大学出版会/2000年2月発売  
 形態形成と進化、化石と植物の系統などについてそれぞれの研究者が執筆。  

 植物の多様性と系統/裳華房/1997年10月発売  
 化石植物を含めた各植物群の綱レベルでの図版解説など。
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カテゴリーの系統関係は、概要です。詳しくは、脊椎動物の系統関係をどうぞ
 

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