注目の最近のトピックス

日本の新種恐竜
 現在の日本で発見・記載された新種の恐竜です。ただし、鳥類は除いています。

  Fukuivenator paradoxus の記載で、2016年2月現在、有効種は、体化石で7種、足跡化石で1種、卵化石で1種です。

 なお、今後の新種記載により、追加される予定です。


  1. 更新記録:
  2016.2.24 福井のマニラプトラ、Fukuivenator paradoxus を追加
  2015.6.30 丹波の卵化石、Nipponoolithus ramosus を追加。 

  1. 備考:
  2.  
  3. 発見された地層や系統関係などは、基本的に記載時の内容に従い、一部新しい情報を追加しています。 
  4. カタカナ名は、学名をローマ字読みしたものです。 
  5. 発見場所が現在の日本ではない場合、学名が疑問名の場合などは、その他として紹介しています。


■体骨格 

□手取層(福井県、石川県)

  1. Fukuiraptor kitadaniensis, Azuma & Currie, 2000
  2. フクイラプトル・キタダニエンシス、手取層(福井県勝山市)、白亜紀前期、アロサウロイデア(Allosauroidea)として記載されました(5)。 コエルロサウリア(Coelurosauria)とする論文もあります。 

  3. Fukuisaurus tetoriensis, Kobayashi & Azuma, 2003
  4. フクイサウルス・テトリエンシス、手取層(福井県勝山市)、白亜紀前期、イグアノドンティア(Iguanodontia)として記載されました(6)。最近では、その系統内の基盤的なハドロサウルス形類(Hadrosauriformes)とされています(10)。 

  5. Albalophosaurus yamaguchiorum, Ohashi & Barrett, 2009
  6. アルパロフォサウルス・ヤマグチオルム、手取層(石川県白山市)、白亜紀前期、鳥脚類で、所属不明の角脚類(Cerapoda)とされています(7)。 

  7. Fukuititan nipponensis, Azuma & Shibata, 2010
  8. フクイティタン・ニッポネンシス、手取層(福井県勝山市)、白亜紀前期、ティタノサウルス形類(Titanosauriformes)(8)。 

  9. Koshisaurus katsuyama, Shibata, Azuma, 2015
  10. コシサウルス。カツヤマ、手取層(福井県勝山市)、白亜紀前期、イグアノドンティアの基盤的ハドロサウロイデア(Hadrosauroidea) で、フクイサウルスより派生的とされています(10)。

  11. Fukuivenator paradoxus 
  12. Yoichi Azuma, Xing Xu, Masateru Shibata, Soichiro Kawabe, Kazunori Miyata & Takuya Imai (2016)
  13. フクイベナートル・パラドククサス、手取層(福井県勝山市)、白亜紀前期、基盤的なマニラプトラとされています(12)。


□丹波層群(兵庫県)

  1. Tambatitanis amicitiae, Saegusa & Ikeda , 2014 
  2. タンバティタニス・アミキティアエ、篠山層群(兵庫県丹波市)、白亜紀前期、ティタノサウルス形類です(9)。


■足跡化石

□神通層群(富山県) 

  1. Toyamasaurips masuiae, Masaki Matsukawa, Toshikazu Hamuro, Teruo Mizukami, Shoji Fujii, 1997
  2. トヤマサウリプス・マスイアエ、神通層群(富山県大山町・現在の富山市)、白亜紀前期、足跡化石ですが、日本で初めてとなる恐竜の学名です(4)。 
  3. 記載論文では手取層とされていました。その後、富山と岐阜県境に分布する、今まで手取層群とされてきた陸成層に、新たに神通層群が提唱され、この化石産地は、神通層群猪谷層とされています。
 

■卵化石

□丹波層群(兵庫県)

  1. Nipponoolithus ramosus,Kohei Tanaka, Darla K. Zelenitsky, Haruo Saegusa, Tadahiro Ikeda, Christopher L. DeBuhr, François Therrien, 2015
  2. ニッポノウーリサス・ラモーサス、獣脚類の卵化石で、恐竜の卵化石としては世界最小クラスとされています(11)。


■その他


  1. Nipponosaurus sachalinensis, Takumi Nagao , 1936
  2. ニッポノサウルス・サハリネンシス、樺太、白亜紀後期、ハドロサウロイデア、当時は日本の領土でしたが、現在はロシアの樺太からの発見です(1)。 

  3. Wakinosaurus satoi,Yoshihiko Okazaki, 1992
  4. ワキノサウルス・サトイ、福岡県宮田町、関門層群・脇野亜層群、白亜紀前期、獣脚類。福岡で発見され記載されました(2)。不完全な歯1本からの記載なこともあり、疑問名とされています(3)。





  1. References:
  2.  
  3. (1)Takumi Nagao , 1936 
  4. Nipponosaurus sachalinensis: A new genus and species of trachodont dinosaur from Japanese Saghalien 
  5. Journal of Faculty of Science of Hokkaido Imperial University, Series 4 3:185-220. (pdf) 

  6. (2)Yoshihiko Okazaki, 1992 
  7. A new genus and species of carnivorous dinosaur from the Lower Cretaceous Kwanmon Group, northern Kyushu. 
  8. Bulletin of the Kitakyushu Museum of Natural History 11:87-90 (pdf) 

  9. (3)David B. Weishampel, Peter Dodson, Halszka Osmólska 
  10. The dinosauria (Second Edition), 2007 p.78

  11. (4)Masaki Matsukawa, Toshikazu Hamuro, Teruo Mizukami, Shoji Fujii, 1996 
  12. First trackway evidence of gregarious dinosaurs from the Lower Cretaceous Tetori Group of eastern Toyama prefecture, central Japan 
  13. Cretaceous Research, 18(4), p.603-619 
  14. doi:10.1006/cres.1997.0075 

  15. (5)Yoichi Azuma and Philip J. Currie, 2000 
  16. A new carnosaur (Dinosauria: Theropoda) from the Lower Cretaceous of Japan 
  17. Can. J. Earth Sci. 37: 1735-1753 
  18. doi: 10.1139/e00-064 

  19. (6)Yoshitsugu Kobayashi & Yoichi Azuma, 2003 
  20. A new iguanodontian (Dinosauria; Ornithopoda), form the lower Cretaceous Kitadani Formation of Fukui Prefecture, Japan".  Journal of Vertebrate Paleontology 23(1): 166-175 
  21. doi: 10.1671/0272-4634(2003)23[166:ANIDOF]2.0.CO;2 

  22. (7)Tomoyuki Ohashi and Paul M. Barrett, 2009 
  23. A New Ornithischian Dinosaur from the Lower Cretaceous Kuwajima Formation of Japan 
  24. Journal of Vertebrate Paleontology 29(3):748-757 
  25. doi:10.1671/039.029.0306 

  26. (8) Yoichi AZUMA, Masateru SHIBATA, 2009 
  27. Fukuititan nipponensis, A New Titanosauriform Sauropod from the Early Cretaceous Tetori Group of Fukui Prefecture, Japan 
  28. Acta Geologica Sinica,84(3), p.454-462 

  29. (9) Haruo Saegusa & Tadahiro Ikeda , 2014 
  30. A new titanosauriform sauropod (Dinosauria: Saurischia) from the Lower Cretaceous of Hyogo, Japan 
  31. Zootaxa 3848, (1): 1-66 (pdf) 
  32. Doi:10.11646/zootaxa.3848.1.1 

  33. (10) Masateru Shibata, Yoichi Azuma, 2015 
  34. New basal hadrosauroid (Dinosauria: Ornithopoda) from the Lower Cretaceous Kitadani Formation, Fukui, central Japan
  35. Zootaxa, 3914(4) 
  36. Doi:10.11646/zootaxa.3914.4.3 

  37. (11) Kohei Tanaka, Darla K. Zelenitsky, Haruo Saegusa, Tadahiro Ikeda, Christopher L. DeBuhr, François Therrien, 2015 
  38. Dinosaur eggshell assemblage from Japan reveals unknown diversity of small theropods 
  39. Cretaceous Research, Available online 29 June 2015 
  40. doi:10.1016/j.cretres.2015.06.002

  41. (12) Yoichi Azuma, Xing Xu, Masateru Shibata, Soichiro Kawabe, Kazunori
    Miyata & Takuya Imai , 2016
    A bizarre theropod from the Early Cretaceous of Japan highlighting
    mosaic evolution among coelurosaurians.
    Scientific Reports 6, Article number: 20478 , 2016
    doi:10.1038/srep20478





2015年 2月 11日(水)
トリケラトプスは残る/恐竜の学名

 トリケラトプスという学名が消えて、トロサウルスになるのではないかとの話題がぶり返しているようです。

 昨年話題なりましたが、トロサウルスは、成長したトリケラトプスという論文が誤解されているようです。

 同一種とすれば、トリケラトプスの学名の方が記載が早く、先取権というルールにより、トリケラトプスが有効名です。

 

 

Triceratops_skulls.jpg

 上は、いずれもトリケラトプスの頭部(John B. Scannella et al., 2011)。左は、亜成体で、右が、かつてトロサウルスとされていた成熟した成体。

 フリルや角の角度などが異なりますが、成長段階の違いとされています。なお、その後、別種とする論文も報告されています。

 参考:トロサウルスは成長したトリケラトプス

 

 今回、恐竜の名前(学名)は、どのようなルール(規約)によってつけられるのか、まとめてみました。

 命名の早い者勝ち(先取権)に加え、2000年に発効した新しいルールでは、先取権の逆転強権発動という条項が加わりました。

 先取権が杓子定規に適用されるわけではありません。今回の場合、たとえトリケラトプスが遅い記載であっても、その学名は残されたことでしょう。

 命名規約の目的は、学名の安定性であり、最終的に、長年慣れ親しんできた有名な学名は残されるようになっています。

 

国際動物命名規約

 動物の学名についてのルール(規約)は、国際動物命名規約(International Code of Zoological Nomenclature)です。最新版は第4版(2000年1月1日発効)です。

 動物命名法国際審議会(ICZN)が作成し(著者)、国際生物化学連合(IUBS)により採択されています。

 強制力のある条項と、強制力のない助言的な勧告からなります。

 例えば、タイプ標本はそれなりの研究機関に供託するべき、とか、新しいタクソンの判決文を国際的に広く使用されている言語(英語とは書かれていない)で公表するべき、などというのは勧告です。学名としての適格要件を満たせば、日本語の記載でも適格名です。

 

 規約(英文)は、The Code online(ICZN)で公開されています。用語集(Glossary)もあります。日本語版は、日本分類学会連合から入手できます。

 条1.に定義があります。動物命名法は、現生と絶滅動物の分類学的単位(タクソン)に対して適用する学名の体系(システム)で、系統関係に関するルールではありません。

 

異名と先取権  

 よく問題になるのが、1つのタクソンに複数の学名がつけられる異名(synonym、同物異名とも)と、先取権(priority)です。

 

 条23.に、先取権の定義があります。

  23.1 先取権の原理の声明  あるタクソンの有効名は、そのタクソンに適用される最も古い適格名である。

 

 同じ動物に異なる名前がつけられた場合、公表日が早い名前を、古参異名(senior synonym)と言い、先取権があります。 一方、後からつけられた(公表日が遅い)名前は、新参異名(junior synonym)と 言います。

 プロントサウルス(Brontosaurus)とアパトサウルス(Apatosaurus)の例が有名です。1879年に記載されたブロントサウルスですが、後に両者は同一種とわかりました。

 よって、1877年に記載されたアパトサウルスの学名が有効名(valid name)で、ブロントサウルスは無効名(invalid name)となっていました。

 なお、2015年4月、ブロントサウルス属は、アパトサウルス属とは異なっており、ブロントサウルスは有効属とする論文が報告されています(参考1)。

 

 下のイラストは、マーシュが、1899年に描いたというブロントサウルスです。出典は、Wikipedia。古くから竜脚類の代名詞だったブロントサウルスの名前は、今でもレトロな商品に登場します。

 

Brontosaurus_skeleton_1880s.jpg 今回のトリケラトプスとトロサウルスの場合、それぞれの記載年が、1889年と1891年ですから、同一種とすると、トリケラトプスのほうが早い古参異名で、トリケラトプスの学名が有効名になります。

 

ティラノサウルスはなぜ改名されないのか/優先権の逆転    

 Manospondylus gigas(マノスポンディルス)は、1892年、コープにより命名された恐竜です。2000年に同じ場所から、この恐竜の残りの部分と思われる化石が新たに見つかり、Tyrannosaurs rex T.rex )と同一種であることが判明しました。

  T.rex は、1905年にヘンリー・オズボーンによって記載されたことからすれば、先取権により、Manospondylus gigas に改名されるはずです。

 では、 T.rex はなぜ改名されなかったのでしょうか。

  

 実は、先の 23.1 先取権の原理の声明 には続きがあり、適用除外が示されています。具体的には、

 23.9 の優先権の逆転で、

 

 23.9.1. 次の条件が両方とも当てはまる場合は、慣用法を維持しなければならない。すなわち、

  23.9.1.1. 古参異名または古参同名の方が、1899年よりも後に有効名として使用されていないこと。かつ、

  23.9.1.2. 新参異名または新参同名のほうが、特定タクソンに対する推定有効名として、直近50年の間で10年間を下らない期間中に少なくとも10人の著者によって公表された少なくとも25編の著作物上で使用されていること。

 

 つまり、多くの著作物に使用されている T.rex の学名は、1899年以降使われていない Manospondylus gigas になることはないというわけです。

 この場合、Manospondylus gigas は、遺失名nomen oblitum)となります。学名としての要件を満たす適格名ですが、優先権を失い有効名ではありません。一方、優先権を持つ若い方の T.rex という学名は、擁護名nomen protectum)と呼ばれます。

 新しい命名規約は、 T.rex の学名を維持するために改定された感じのする改訂ですね。

 

強権発動

 さらに、条.81 に、強権発動 という条項があります。

 規約を適用すれば混乱が生じる場合、動物命名法国際審議会(ICZN)は規約の適用を緩和する強権を発動でき、本来なら無効名な学名を保全名(conserved name)として、有効名として認めることができるのです。

 有名な恐竜は特別扱いされるのか・・・と皮肉る声が聞こえてきそうですが、命名規約の本来の目的が、学名の安定であり、無用な混乱をさけるため、当然の措置なのでしょう。

 

 なお、ICZN の Palaeontology & Biostratigraphy で、T.rex が残り、ブロントサウルスが改名されたことについて簡単に触れられています。

 かつてのブロントサウルスの場合、名前を変えてもそんなに大騒ぎにならないと考えられたようです。



修正

 ブロントサウルスは有効属になった点を追加 (2015.4.10)



  1. 参考
  2.  
  3. 1) Tschopp E, Mateus O, Benson RBJ. (2015) 
  4. A specimen-level phylogenetic analysis and taxonomic revision of Diplodocidae (Dinosauria, Sauropoda) 
  5. PeerJ 3:e857 
  6. https://dx.doi.org/10.7717/peerj.857
2011年 9月 18日(日)
中生代に"日本"は無かった?

  「おらが町に恐竜がいた」とか「日本の恐竜にも多様性があった」などといわれますが、中生代に"日本"はあったのでしょうか。

 日本列島の誕生は約7億年前。原日本は、当時の南中国地塊の周辺にあった島孤に起源があるとされています。

 しかし、日本列島は、太平洋に浮かぶ独立した島々として進化してきたわけではありません。長い間、アジア大陸の一部(東縁)であり、2000万年ほど前に日本海が生まれ、アジア大陸から独立したに過ぎません。

 現在の日本となる部分は、中生代当時は大陸の様々な位置に散らばっており、一部は堆積中で、一部はまだ海の底。中生代に"日本"は無かった、というのが実感です。

 つまり、"都道府県"どころか"日本"の範囲が不明確なわけで、「恐竜がいたアジア大陸の一部が、たまたまおらが町になった」だけで、多様性があったのは東アジアの恐竜でしょう。

  

 さて、恐竜のいた時代、アジア大陸の東の縁(ふち)はどんな様子だったのでしょう。日本列島の発達のイメージを簡単にまとめてみました。 

 最も新しい情報としては、地学雑誌の最新号[120(1)]で解説されています。特集号:日本列島形成史と次世代パラダイム(Part III)です。

 最近の研究成果により、アジア大陸の東縁は、海側へと一方的に広がり続けたとする単純なシナリオではないことがわかってきているそうです。

 なお、地学雑誌の記事は、一定期間たつと全文が読めるようです。たとえば、日本列島形成史と次世代パラダイムの Part II は公開されています。

 

基本用語

 基本的な用語を整理しておきましょう。

 

  • 海洋プレートの沈み込み:海洋プレートが大陸の縁に沈み込むことで、海溝ができ、火山活動が活発になり、付加体が生じます。 
  • 火山フロント(Volcanic front):海洋プレートの沈み込みに伴うマグマ活動により、火山活動が活発な場所です。火山活動は、海溝に沿ってほぼ平行に活発になるため、火山フロントも海岸線に平行になります。海洋プレートの沈み込みに伴うマグマ活動については、プルームテクトニクス理論(1)の図をどうぞ。
  • 付加体(Accretionaty complex):付加体とは、海洋プレートの沈み込みにより、その上にある堆積物がはぎ取られ、陸側に付加したものです。付加体により、大陸の縁は海側へと広がっていきます。
  • 構造浸食(Tectonic Erosion):プレートの沈み込みによる孤地殻が減少する現象。
  • バソリス(batholith):バソリスとは、地下で固まったマグマの塊が地上に露出した深成岩体のこと。花崗岩バソリスなどがあります。 

 

 

日本列島の発達のステージ

 日本列島の構造の発達史は、以下の3つのステージに分けられています。

 

 1)約7億年前 - 約5億2000万年前:受動的大陸縁のステージ

 2)約5億2000万年前 - 約2000万年前:活動的大陸縁のステージ

 3)約2000万年前以降:島孤のステージ

  

  

約7億年前:日本の誕生

 約7億年前、超大陸ロディニア(Rodinia)が分裂して、南中国地塊(South China)が分離します。

 原日本(Proto-Japan)の主体は、この南中国地塊の周辺にあった海洋の島孤に起源があるとされています。

 その後、約2億年ほどは、大陸周辺に位置します。やがて、海洋プレートの影響を大きく受ける活動的なステージに入ります。

 

約5億2000万年前以降:肥大と縮小の繰り返し

 この時期、大陸縁の造山帯として発達しました。海洋プレートの沈み込みに伴うマグマ活動により、火山フロント(Volcanic front)直下で、火山活動による若い大陸地殻が形成されます。

 また、大陸縁辺部では、大規模な浸食と、海溝での大規模な付加体の形成により、海側へ広がっていきます。

 最近の研究により、アジア大陸の東縁が常に地殻が増えて海側へと広がり続けてきたという単純なシナリオではなかったとされています。

 形成された地殻が浸食・削減され、マントルへと移送されたことが少なくとも数回起き、肥大と縮小を繰り返し複雑な歴史を持っているとされています。

 南中国沖にあった原日本は、南中国地塊の移動に伴い、移動します。肥大と縮小を繰り返し、古生代前半(シルル紀)には、いったん島孤を形成したのですが、石炭紀-ペルム紀になると、大陸の一部になります。

 

ジュラ紀後期(約1億5000万年前)

Japan_150Ma.jpg 

 約2億1000万年前までに、北部にあった古アジア海は、ほぼ完全に閉塞します。

 東アジア大陸の衝突や合体はほぼ完了し、大陸東縁の形がほぼ定まったとされています。

  図は当時の東アジア東縁の古地理図。磯﨑ら(2011)を参考に、イメージ化しています。

  図で、海洋プレートであるイザナギプレートは、矢印の大陸方向に進み、大陸の縁で沈み込みます。

 そして、大陸の東縁では、イザナギプレートの上にある堆積物がはぎ取られ、陸側に付加して大規模な付加体(黄色の部分)が形成されます。

 つまり、この時期、大陸は海に向かって広がっていきました。

  白亜紀前期(約1億3000万年前)に、イザナギプレートは北東方向に斜めに沈み込み、横ずれ運動が引き起こされます。

 これが、現在の中央構造体などの断層の原型となったとされています。

 

白亜紀中頃(約1億年前)

 ジュラ紀中期から後期にかけて活発だった付加体の成長は白亜紀前期まで継続したとされています。

Japan_100Ma.jpg しかし、白亜紀中頃(約1億年前)になると、大規模な構造浸食が起きます。

 その結果、白亜紀より前に形成された付加体や、三畳紀-ジュラ紀の花崗岩バソリス(batholith)が大量に消えてしまいます。

  右図では、上の図にあった黄色の陸部分が消えてしまい破線で示されています。付加体に堆積した化石も、マントルの中へと沈み込んでしまいました。

  そして、将来の日本列島の母体となる部分は、図で赤い範囲の大陸の縁、日本孤(Japan arc) です。ジュラ紀中期の古地理図では、内陸部分になります。

 その後も、付加と構造浸食は繰り返されます。

 現在よりも低緯度(南)に位置し、豊浦層群(下部ジュラ系)や領石層(最下部白亜系)などが堆積しました。

 なお、手取層群は、かなり北方の北中国地塊内部で堆積したとされています。

 日本で見つかる恐竜化石は、東アジアの東縁の一部に棲んでいた恐竜にすぎません。

 

 

約2000万年前以降:日本海の誕生

 約2000万年前にアジア大陸東縁が局所的にリフティング(隆起)され、背孤海盆(日本海)が拡大します。

 その結果、日本はアジア大陸から分離し、陸孤から島孤へと姿を変えたとされています。このあたりでようやく、日本の輪郭がはっきりしてくるのです。

 そして、大陸の様々な位置にあった部分と、海洋堆積物からなる付加体の寄せ集めで、現在の日本列島ができあがります。

 

そして2億5000万年後:超大陸アメイジアの誕生

 現在のプレート活動がこのまま継続すると、約5000万年後にはオーストラリア大陸が、そして、2億5000万年後には北米大陸がアジア東縁に衝突するとされています。

 超大陸、アメイジア(Amasia)が誕生するのです。Amasia とは、America +Asia の造語です。

 

         

  1. References:
  2. 磯﨑行雄・丸山茂徳・中間隆晃・山本伸次・柳井修一
  3. 活動的大陸縁の肥大と縮小の歴史--日本列島形成史アップデイト--
  4. 地学雑誌,120(1), p.65-99, 2011
  5.    
  6. Pacific-type orogeny revisited: Miyashiro-type orogeny proposed
  7. Shigenori Maruyama
  8. Island Arc, 6(1), p.91-120, 1997
  9. DOI: 10.1111/j.1440-1738.1997.tb00042.x
  10.  
  11. 日本列島の自然史 (国立科学博物館叢書)(東海大学出版会)

 

2011年 5月 5日(木)
プルームテクトニクス理論(3) 海洋無酸素事変 

 さて、プルームテクトニクス理論の最終回です。地球内部のマントルの動きが、地球環境にどんな影響を及ぼしてきたのでしょうか。

 そのひとつが、およそ1億年前に起きた地球規模の海洋無酸素事変とされています。 

 

生態系や生物進化への影響  

 マントル活動の活性化により、火山活動が活発になり、二酸化炭素も増加し、気温 の上昇につながります。気温の上昇により海洋植物プランクトンが増え、深海では酸素が乏しくなります。また、海水の逆流は、海水準の低下と陸地の増加をもたらしま す。 

 このように、プルームをはじめとするマントルの活発な動きは、生態系や生物の進化に大きな影響を及ぼしてきたのです。

 世界各地にある約1億年前の地層から、黒色頁岩が見つかっています。それは、植物プランクトンなどが酸化されずに堆積した岩石です。

 これは、当時、地球規模の海洋無酸素事変が起きたことを物語っています。その原因として、地球内部の大変動が、表面にも影響したためではないか考えられています。

 

海洋無酸素事変

 大量絶滅に関しては、巨大隕石衝突という地球外の影響と、火山活動の活発化という地球内部の影響の2つに大別されます。 地球規模の火山活動の活発化には、地球内部の影響がかかわっています。

そして、約1億年前の海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events)については、以下のように考えられています。

  1. マントルの巨大上昇流・ホットプルームが地表付近まで上昇した
  2. その結果、海面付近でマグマ活動が活発になった
  3. マグマ活動で、二酸化炭素などの大量の温暖化ガスが放出され、温暖化が進んだ    
  4. 温暖化で、極地方の冷たくて重い水が沈み込むという深層循環が停止した
  5. 表面の酸素が深層へ供給されなくなり、酸素供給が途絶えた

 

 以下は現代の海流大循環を示す図。出典はWikipedia。赤色が表層で青色が深層。北極地方にある、deep water formation と書かれた部分で海流が沈み込んでいます。

 決して速い流れではなく、およそ2000年かけて地球を1周するそうです。

 

800px-Thermohaline_Circulation_2.pngのサムネール画像

 

地球磁場の向きが変わる理由

 マントルの対流は、地球磁場を生み出しています。磁場は、太陽風などから地球を守っているのです。

 1億年前には、4000万年間も磁場が変わっていなかったそうですが、現在の地球では、数十万年単位で磁場(N極とS極)が変わります。

  それは、なぜか。冷たいプレートが落ちた影響が、熱伝導でコアに伝わるのに1億年もかかり、今になって現れているというのです。

   

地球もやがて火星のように・・

 水深8800メートル・・火星もかつては大量の水に被われていたのです。

  しかし、 およそ41億年前、プレート運動によって、海水がマントルの深部に移動し、およそ 40億年前に内部の冷却でプレート運動が停止し、現在も内部に水が閉じ組められたままになっているとされています。

 1回目に図示した地球内部にあるマントル遷移層には、地表にある全ての海水を取り込めるそうです。およそ10億年後には、地球もやがて火星のように不毛の地になるとという説もあります。

 やがて水にあふれた地球が火星のようになるとすると、地球上の生命にとって、温 暖化とか隕石衝突よりも深刻な問題です。

 ただ、話のスケールが大きすぎて、どうも ピンとこないのか、あまり話題になりませんね。

 

参考

 

 

 

2011年 4月 10日(日)
プルームテクトニクス理論(2) マントルの大規模な対流
 2回目の今回は、プルームテクトニクス理論の説明です。

 かつてはプレートテクトニクスといって地球表面にある厚さ100km程度のプレートの動きを考えていましたが、プルームテクトニクス(plume tectonics)では、2900kmに及ぶマントル全体の動きを扱います。

 

プルームテクトニクス理論

 プルームテクトニクスは、1994年、東工大理学部丸山茂徳教 授が提唱した理論です。プレートテクトニクス理論では説明できなかったプレート運動など、地球表層で起こる現象の原動力を説明するものとされています。  

 プルーム(plume)とは、そのマントル深部からの上昇流または下降流の塊のこと。プルームの語源は、"上昇する煙"という意味だそうです。以前は"プリューム"と言われていたそうですが、最近では、より原音に近いプルー ムに統一されています。  

 プルームテクトニクス理論は、低温のプルーム(コールドスーパブルーム)の下降が引きがねとなって、マントルの対流が活発になり、別の場所で、高温プルーム(スーパープルーム)の大規模な上昇流が起き、大陸の移動や浮き沈みが生じるという理論です。

 

 

Earth_2011.jpg

マントル対流  

 上の図は、地球内部のマントル対流シミュレーション。「Blue Earth」のイラストを一部改変しています。地球シミュレーターにより3次元的に再現されたものの2次元断面です。

  46億年前に生まれた地球ですが、冷えて固まっているのは、ほんの表面だけ。内部はまだまだ熱く流動的なのですね。

 図で、特に赤いのが、マントルの巨大な上昇流、ホットプルーム(Hot Plume)で、ブルーが巨大下降流のコールドプルーム(Cold Plume)。

 青いプレート(Plate)は、660Km付近に沈み込み滞留しているプレート。これがマントルの底へと落下すると、ホットプルームが生まれます。

 沈み込んだホットプレートやマントルより重い岩石層である反大陸(anti-continent)に含まれる重い物質に軽い元素が加わることで、ホットプルームの浮力が生まれるのではないかと考えられています。このような現象は、2億年周期でおこるそうです。

 

原動力は水

 さて、下部マントルの中でダイナミツクに上下するプルーム。これを動かす原動力は水と考えられています。 水がマントルを活性化するのです。

 プレートの沈み込みで、大量の海水がマントルに入り、含水鉱物としてマントルの深部に運びます。マントルに少しでも水分が存在すると、融点や粘性がが著しく低下 し、マントルの運動は非常に活発になるのです。

 そして、マントルに大量の水がたまると、活動が劇的に活発になり、大規模な上昇流や爆発的な火山活動が生じ、スーパープルームの誕生となります。

 この水の動きが、過去の大陸の動きだけでなく、未来の運命をにぎっているのです。

 

大陸の集合と離散

  プルームの動きで、大陸の集合や離散も説明できます。 例えば、5-6億年前には、アフリカコールドスーパープルームの沈降によって周囲 の大陸が集合し、ゴンドワナ準超大陸が誕生し、3-4億年前にはローラシア大陸がく っつき、超大陸パンゲアが生まれたのです。

  しかし、2億5000万年前に生じたマントルの上昇流(アフリカスーパープルーム) によって分裂が始まったのです。

 

全ての大陸はアジアに集まっている

 現在、東アジア直下にあり下降中のコールドスーパープルームがブラックホールのように周りのプレートを引き寄せている結果、全ての大陸はアジアに向かって移動しているそうです。

  およそ5000万年前に、インド亜大陸がアジア大陸に付加したこともこのプレート運動です。 そして、5000万年後にはオーストラリア大陸が付加し、2億5000万年後には、北米や南米大陸も加わり、アジアを中心とした超大陸が出きると考えられています。

 

参考

 

 

 

 

2011年 4月 7日(木)
プルームテクトニクス理論(1)  プレートテクトニクスの限界

 地震発生のメカニズムで、大陸プレートの話が出てきます。しかし、それは地球のほんの表面の話。最近では、地球内部にあるマントルの動きが、地球表面に大きな影響を及ぼすことがわかってきています。

photo_blue_earth.jpg 例えば、海洋研究開発機構が発行する雑誌、「Blue Earth」の最新号(110号)の特集、「地球内部ダイナミクスと環境大変動」では、約1億年前に起きた「海洋無酸素事変」が、マントルの影響によるものではないかと紹介されています。  

 なお、112号では、巨大地震のメカニズムを紹介するそうです。

 

 海洋研究開発機構では、地球内部ダイナミクス領域(IFREE)を中心に、海底地震計や地震波トモグラフィー、スパコン「地球シミュレーター」によるシミュレーションなどを行っています。

 地球内部の解明が少しずつ進んでいるのですね。

  

大陸は動いている

  日本にも恐竜がいた、と言われますが、太古の時代には日本列島自体は存在せず、 恐竜がいた所がたまたま日本になっただけの話ですね。

 私たちが普段住んでいる大地が常に動いているなんてなかなか理解しがたい話ですが、近年では衛星やGPSで精密な測定が可能になり、実際に大陸が動いているのは、"動かしがたい"事実なのです。

  北米や南米大陸、オーストラリア大陸が少しづつ日本付近に向かって移動しており、2億5000万年後にはアジアを中心とした超大陸ができるそうです。

  スケールの大きい話ですが、大陸の移動や集合離散は、陸上動物である恐竜をはじめとする生態系や生物の進化に大きな影響を及ぼします。

 

大陸移動とプレートテクトニクス理論

 大陸移動説の提唱者として、ドイツのウェーゲナー(Alfred L. Wegener)が知られていますが、実際は、以前より大陸は移動しているという考えがありました。

 16世紀、ヨーロッパ人たちの航海により、しだいに大陸の地形が明らかになり、地図に表されることで、大西洋を隔てたアフリカ大陸の西側と、南アメリカ大陸の東側 の海岸線が似ていることがわかってきました。地図を見てもわかるように、非常に良く似た海岸線をしています。

 やがて、それらは本来1つであった大陸が分裂してできたもので、大陸は移動するという考えが生まれました。

 そして、20世紀初め、ドイツの気象学者ウェーゲナーが最も熱心に大陸移動説を提唱しました。

 1915年、彼はその著「大陸と海洋の起源」の中で、アフリカ大陸と南アメリカ大陸はかつてパンゲアという1つの大陸だったと著したのです。

 しかし、彼は地質学者ではなく、実際の証拠も乏しかったため、最初は受け入れら れなかったそうです。 その後、地層や化石の分布などで大陸の移動が実証され、マントル上に浮かぶ地殻の板(プレート)が漂う動きから大陸の動きを説明するプレートテクトニクス理論が進展しました。

 

プレートは厚さ100km程度

 さて、地球を桃の実にたとえると、果肉にあたる地球のマントルの厚さは2900キロメートル程と いわれ、地下700Kmを境に、上部マントルと下部マントルにわけられます。

 プレートテクトニクスで説明されるのは地球の表面の出来事、つまり、厚さ100km程度のプレートの動きと、せいぜい下部マントルまでの700Kmであり、地球の半径6400Kmの10分の1程度の表層です。体積にすれば、わずか 3%程度のことなのです。

 ちなみにその温度は、地球内部は中心で6000℃、外殻表層(2900Km)で4000℃、上 部と下部マントルの境界で1600℃といわれています。

 

地球だけにある大陸地殻

 下は、プレートの模式図。「Blue Earth」の110号を元に作成しています。

 そもそも、陸のへこんだ部分が海というわけではなく、大陸プレートと海洋プレートを構成する岩石や厚みが異なり、海と陸のプレートは別ものなのです。 

 

 

plate.jpg

 

 大陸地殻は、厚さ30-50kmで、平均した化学組成は軽い安山岩です。海洋地殻は、厚さ5-7kmと薄く、玄武岩などの重い岩石で出来ています。太陽系の天体で、大陸地殻が見つかっているのは地球だけでそうです。

 海洋プレートは、表面を移動する間に冷えて重くなり、沈みこみます。プレート中に水が流入し、その水の影響でマントルが溶けやすくなり、マグマが出来、これが地表に上昇して火山になります。また、マグマの上昇は、大陸と、重い反大陸を生み出します。 

 また、水の一部は地表に戻されますが、一部はマントル遷移層まで流入し、マントルの粘性を下げて対流に影響を与えます。

 

プレートテクトニクス理論の限界

 そのプレートテクトニクス理論ですが、以下の問題点があると指摘されています。

 

  • プレートを動かす原動力が何か不明   

  プレートが動くのはマントルの大規模な対流によるが、 その原動力はいったい何か?    

  • 数億年にわたる長周期の大陸の変動を説明できない

   なぜ、大陸が周期的に集合や離散を繰り返すのか?  

 

  これに答えるには、地球深部でのマントルのダイナミックな動きを説明する必要が あります。

 それがプルームテクトニクス(plume tectonics)理論で、1994年、東工大理学部丸山茂徳教授が提唱した理論です。

 そもそも、プルームとはなんなのでしょう。それらは次回説明します。

 

 

plate.jpg

 

 今回のシリーズは、かつてメルマガで紹介した内容に加筆しています。日本産のためか、 プルームテクトニクス理論は欧米での評価が低かったそうです。

 実は、今回の雑誌でも、プルームなどは出てきますが、プルームテクトニクスという言葉はありません。新しい学問分野なのでしょうけど、学術用語が評価され、定着するには時間がかかるようです。

 

 

 

参考

41XMKFK2G9L__SL500_AA300_.jpg 

 

 

 

 

 

 

2011年 4月 4日(月)
恐竜とワインの話

 フランスでは、"ワイン畑の恐竜"という意味の学名を持つ恐竜も発見、記載されており、その恐竜をモチーフにしたワインも発売されています。このワイン、日本では入手できませんでしたが、2007年あたりから可能になっています。

 2010年、六本木で開催された恐竜展では、恐竜ワインも販売されていました。

 恐竜とワインの話については、これまで何回か書いてきました。今回は、それらをちょっとまとめています。


16世紀のサラマンダー

 2004年2月にメルマガで紹介した時点では、恐竜をデザインしたエチケット(ラベル)のワインはありませんでした。

 似たようなデザインとして、16世紀の国王・フランソワ1世の紋章であるサラマンドル(火をふくトカゲ)をモチーフにしたワインがありました。

 サラマンダーとはサンショウウオのことです。初めてイグアノドンの化石が発見されたのが1825年、恐竜(Dinosauria)という言葉が登場したのが1842年ですから、これ以前のかなり前から、竜脚類のような姿を描いていたとは驚きです。

  

恐竜ワインの条件

  もっとも、恐竜のイラストがあれば恐竜ワイン、というのはちっょと安直です。少なくとも次の条件を満たすワインが本当の恐竜ワインといえるでしょう。

 しかし、恐竜化石が出てくる地層といっても、その上にある新しい土壌で栽培されているのが普通です。少しでも深く根を張って、恐竜時代のミネラルなどを直接吸収してほしいですね。

 

  • 恐竜化石を産出する地層で育ったブドウから醸造
  • 恐竜をモチーフにしたエチケット

 

 

ジュラ紀の地層からのフランスワイン

 ご存知のように、ワインはビールなどと違って大きな会社が大量生産しているわけではありません。比較的小規模なワイン生産地が多数存在するのです。畑もその場所によってできたワインの味が違うそうです。

 ワインの名前もいろいろと多く、しかもやたら長くて覚えにくいのも、このあたりに原因があるのです。 

wine_fr.jpg 世界中にワイン産地は数多くありますが、なんといっても本場はフランス。

 スイスとの間にはジュラ紀の名前の由来になったジュラ山脈があり、その近くにはジュラ地方というワイン産地があります(右図)。

 ジュラ地方とパリの間にあるシャブリやブルゴーニュ地方には、キンメリッジと呼ばれるジュラ紀の石灰質土壌は有名なワイン産地です。
 
 シャブリ(白ワイン)と生牡蠣の組み合わせは有名ですが、およそ2億年前の牡蠣の殻でできた石灰岩のミネラルが、味わい深いワインを創り出しているのだとか。

 もっとも、この地層は海生層なので、厳密には恐竜が棲んでいた地層ではありませんね。


 

"ワイン畑の恐竜"

 さらに南下し、南仏のオード(Aude)地方のカルカソンヌなどでは、恐竜の卵化石がたくさん出てくるブドウ畑があり、この成分がワインに独特の風味を与えているのだそうです。
 
 そこにある白亜紀後期(7200万年前)の地層から発見されたティタノサウルス類、アンペロサウルス(Ampelosaurus atacis)が、1995年に記載されています。


 アンペロサウルスとは、 ラテン語で"vineyard lizard(ワイン畑の恐竜)"の意味で、タイプ標本が発見された"ブランケット・ド・リムー(Blanquette de Limoux)"というブドウ畑にちなんで命名されたものです。
 
 イギリスのチャンネル4のBigMonstarで、葡萄畑やそこでの発掘の様子が見られます。2001年には完全に関節した骨格が発見されたそうです。
 
  

2007年、ダイナソーワイン登場

 そして、2007年になって、そのアンペロサウルスが描かれたダイナソーワインが日本でも入手できるようになりました。恐竜ファンなら既にたしなまれたことでしょう。

 次の写真は、ブログで紹介したそのワインです。たしか、5本オーダーしました。 白はあまり飲まないので、なんとも評価できませんが、まあまあのテイストです。

 ソムリエ風にいえば、"輝くような黄金色で、桃やレモン、トーストした香りが調和した、優雅なサンザシとアカシアのようなアロマ・・・"、だそうで。いつものことですが、抽象的でわかりにくい表現です。

 

  商品名は、テロワール・デ・ダイナソー "アンペロサウルス" シャルドネ [2006]  です。(楽天にリンクしています。価格が安い順に表示されていますが、品切れの場合もあります。)

 

Dino_wine.jpg 

  次はそのエチケット(ラベル)の拡大。Ampelosaurus(アンペロサウルス)の文字は、ティタノサウルス類、Ampelosaurus atacis のこと。属名は、ラテン語で"vineyard lizard(ワイン畑の恐竜)"の意味です。

 フランス語ですが、7000万年前とか、体長20メートル、ブドウ畑のある南仏のオード(Aude)地方のことが書いてあるようです。

 

Dino_wine2.jpg 

2010年、恐竜展で販売

 昨年夏に開催された「地球最古の恐竜展」では、恐竜ワインが販売されました。私はチラッとのぞいただけですが、アルゼンチン産の赤と白です。ただ、恐竜展限定だったようで、いつでも入手できるワインではありません。

 このワインについては、ワイナリー建設中に恐竜の化石が発掘されたといった話があります。

 ネウケン州のワインを伝える i-WineReview に似たような話があります。こちらは、ワイナリー建設中に、アエオロサウルス(Aeolosaurus) の化石が発見されたとあります。白亜紀後期のティタノサウルス類です。
 

 

pteranodon_skull.gif

 

 

  そろそろ暖かくなり、ワイン畑では消毒や木の選定が始まる頃。切られたブドウの樹からは、根が吸い上げた水が溢れ出すそうです。"ブドウの涙"と呼ばれ、ブドウ畑が春を告げる1シーンです。
 
 これからも、恐竜ワインの新作、特に"赤"が出てこないか楽しみにしています。もっとも、「神の雫」からの受け売りによれば、ワインは料理との"マリアージュ"が大切なんだそうで、それにあう料理も必要でしょうけど。

 

 

 


 

413B930N4SL__SL500_AA300_.jpg

References:

 

Ampelosaurus-Expedition(発掘の様子など)

フランスワイン産地

地図で見る世界のワイン(産調出版)

ワインの時間(世界文化社):自らブドウ畑を持つ玉村豊男さんの本


 

2011年 3月 6日(日)
恐竜は「恐ろしい竜」ではない

恐竜(Dinosauria)は、「恐ろしい竜」ではありません。本来は、「ものすごく大きなトカゲ」の意味です。


「恐ろしいトカゲ」は誤訳
 「Dinosauria」はオーウェンが最初 に定義した言葉ですが、間違って訳されていたのです。 この話は、1997年に出版された「The Complete Dinosaur」の前書き、 Dinosaurs:The Terrestrial Superlative (恐竜:地上最高のもの)で紹介さ れています。

 リチャード・オーウェンは、1842年4月にロンドンで発行された「イギリスの化 石爬虫類に関するレポート」の脚注で、ギリシア語の"deinos sauros"の意味で、 "Dinosauria" なる言葉を定義しました。


 それ以来、"terrible lizard"(恐ろしいトカゲ)の意味と解釈されてきまし たが、実はこれは間違い。

 "deinos"という言葉は、形容詞では確かに"terrible、恐ろしい"と言う意味ですが、オーウェンは最上級の形で用いたとされ、現在では、"fearfully great, a lizard"(ものすごく大きいトカゲ)とされています。これは当時のギリシャ語-英語辞書を調べるとわかるとのことです。  

 

 The Complete Dinosaurでは、次のように書かれています。

 Dinosaurs are not lizards, nor are they terrible.  They are, instead, the world's most famous "living" superlative!
 恐竜はトカゲではなく、恐ろしくもない。 世界で最も有名な"命を持った"最高の生物なのである。  

 
 "dinosaur"の日本語訳は「恐竜」ではなくて「至高竜」とでも訳すべきだったのかもしれませんね。  

 

参考

  1. The Complete Dinosaur(Indiana Univ Press,1997)
  2. 恐竜大百科事典(朝倉書店、2001)
2011年 1月 19日(水)
恐竜とは?/恐竜の定義

 恐竜とは、「トリケラトプスと現生鳥類の最も新しい共通の祖先から派生する全ての子孫」と定義されます。

 Dinosauria is all descendants of the most recent common ancestor of Triceratops and modern birds.

 

■説明

  1. これ以外に科学的な定義はありません。
  2. 恐竜を科学的に研究している古生物学(古脊椎動物学)での、恐竜(Dinosauria)というクレード(単系統のグループ)の、分岐学(cladistics)的手法による定義です。
  3. 分岐学では、上記のようにクレードの相互関係で定義します。"直立歩行する爬虫類"などは恐竜の一部の「説明」であって「定義」ではありません。なお、"直立歩行"は、恐竜の祖先にあたる動物群が既に獲得していました。
  4. また、"トリケラトプス"と"現生鳥類"という実際に観察可能な生物群で定義しています。
     "・・な爬虫類"と、言葉で定義すると、では、"爬虫類"とは何なのかと延々と続くことになります。"爬虫類"はヒトが考えた概念であって、実在しません。"中生代に栄えた"とか、ヒトを基準にした"大きい"という表現もあいまいです。
  5. 「Dinosauria」は1842年に、大英自然史博物館(当時)の初代館長だったリチャード・オーウェンが提唱しましたが、1993年に、Padian と Mayにより分岐学的に再定義されています。


 

cladgram_dino.jpg 図で示すと以下のような関係になります。
 分岐学による定義は、タクソンの集合包含関係(上)を示しています。 
 
 この関係を図で示すと、中央の分岐図(クラドグラム)になります。分岐図は、集合包含関係を示しているだけで、祖先子孫関係や時間の概念はありません。
 
 なぜなら、解析に使用しているのは派生形質(進化した解剖学的特徴)だけであって、祖先子孫関係や時間はデータに含まれていないのです。分岐図の線の長さや角度にも意味はありません。
 
 分岐図では、分岐点が恐竜というタクソンを表わします。

 1番下の子孫?祖先関係を示す系統図がわかりやすいですね。分岐図の情報に、祖先子孫関係を加えたもので、線はその関係を表わしています。
 トリケラトプスと現生鳥類の「もっとも新しい共通の祖先」とは、分岐点に位置するという仮想の生物群になります。そのから派生する全ての子孫が恐竜ということになります。
 
 化石が見つかった年代を考慮し、時間の概念を加えた系統図もあります。線の下ほど古い時代というわけです。
 分岐図に、化石が発見された地層の年代など、別の情報を追加した系統図は、わかりやすいのですが、科学的裏づけが低下します。くれぐれも、分岐図と系統図を混同しないように注意してください。

 以上からもわかるように、鳥類は恐竜そのものです。



■参考

  1. The FORMAL Definition of Dinosauria/恐竜の公式な定義
    メリーランド大内のトーマス・ホルツ博士の講座テキストの一部です。
  2. What is a dinosaur?/恐竜とはなんだ?
    英国のMike Taylorさんによる "The Dinosaur FAQ"の一部です。

2011年 1月 16日(日)
基本的なことや興味深い話題を紹介しています。

アーカイブ